1-12 イノシシ討伐後。
「な、何が起きたんだ!?」
ルドマンは固まっていた。
今、何を見ていたのか、理解できなかった。
ルークが、イノシシの首を撥ねたのが見えたのだ。
あのひ弱のルークがだ。
信じられなかった。
いや、だが、目の前で起きたのだ、信じずにはいられなかった。
そのルークは、イノシシの首を確認するや、他のイノシシに対し、睨みを利かせていた。
オスのイノシシが死んだことを悟ったのか、メスと子供のイノシシたちは、畑より静かに逃げ出したのだった。
「いや、よくやった!!
ルーク、おまえは大したもんだ!!」
ルドマンにバンバン背中を叩かれ、ルークはむせた。
「いや、無我夢中だったんだよ。
だから、斬ったことをよく覚えていなくて・・・」
剣には、べったりとイノシシの血がこびりついていた。
「それにしても、いつの間に剣を持っていたんだ?
・・・まぁ、いいか。
今日は宴会にしよう。
イノシシ肉で宴会だ!!」
ルドマンは細かいことは気にしない性格だ。
だから、皆で宴会することになったのだった。
その日の夜。
ルークは村の英雄としてもてはやされることになった。
肝心のルークは、もてはやされたことなどないから、どうしたらいいものか困っていた。
とりあえず、おいしい肉が食べられることに満足していた。
イノシシ肉なんて滅多に口にはできない。
鹿肉より硬いが、味はいいのだ。
ステーキ状に切られた肉を焼いて、ルークに渡されていたのだ。
ルークはがっつくように食べた。
「おいしいです。
こんなおいしい肉は初めてです。」
ルークは嬉しかった。
村人のために、初めて役に立ったのだ。
こんなことは滅多にないのだ。
だから、この嬉しさをかみしめるのだった。
深夜。
ようやく家に帰り着いた。
さすがにお酒は飲めないので、早々に退散してきたのだ。
未だ宴会は続いている。
あれは間違いなく、朝まで続くだろう。
ランプに火を灯すと、早速持ち帰った鹿肉を塩漬け用の甕に放り込む。
こうしておかないと腐るからだ。
それから、日誌に本日の記録を記載する。
弓矢の使い方を覚えたことは大きかった。
鹿を初めて仕留める事もできた。
偶然だが、大きなイノシシも仕留めた。
自信がついたのだ。
こんなに、自分に自信がついたのは、初めてかもしれない。
とにかく嬉しいことだらけであった。
さて、明日は何を検証しようか。
ルークはそんなことを考えながら、睡眠をとるのだった。