10-7 帰還と大変な事態。
なんだか、大変なことになったような気がする。
王都を出た後、ルークはとぼとぼと歩いていた。
袋の中には、近衛師団の制服が入っている。
まさか、“魔法騎士”に任命されるなんて。
しかも、皇帝陛下直属の騎士だなんて。
そのうち、正式な通達が来るそうなので、それまでどうしたものかと考える。
だが、もはやどうしようもなかった。
ただ、安心したのは、自由行動が認められた件だ。
魔法の修行は続けられるのだ。
これには一安心だった。
それにしても、いきなり就職先が決まるとは思ってもみなかった。
それと、クリシュナには悪いことをした気分になっていたのだ。
「はぁ・・・」
ルークはため息を吐くほかなかった。
“瞬間移動”にて、村に戻ると、どうも様子がおかしい。
慌てている人が多いのだ。
何事だろうと思って、村の中央広場へと向かう。
「おい、ルーク、大変だ!」
エドガがルークに気付き、声をかける。
「どうしたんですか?」
「村の近くに熊が現れたそうだ。
今、皆パニックになってて。」
「熊!?」
ルークもびっくりした。
「被害は?」
「いや、まだ出てない。」
エドガの言葉を聞いて、ルークは素早く“情報収集”を行う
熊は、いた。
ただし、だいぶ村から離れている。
「エドガ、頼めるかい?
皆に、熊は村から離れているって伝えて欲しいんだ。
今、魔法で探知した結果、熊は山のほうに向かっている。」
「ホントか?
わかった、任せろ。」
これにより、パニック状態の村が平穏になるのだった。
その日の夜。
村長宅に男たちが集まっていた。
村に熊が現れることは、一大事だった。
春の熊はお腹が空いており、狂暴だ。
よって、村人多数でかかっていっても、犠牲が出る可能性があったのだ。
「提案があるんですが・・・」
ルークが挙手すると、皆が注目する。
「僕の魔法で、熊の居場所は判明しています。
またこちらに来ないとは限らないので、討伐したいと考えているんですが、
いかがでしょう?」
「熊か・・・
しかし、我らには武器がないぞ。
弓矢じゃ、熊は倒せんぞ。」
村人の一人がそう言うと、皆がうなずく。
「ルーク、勝ち目があるのか?」
ルドマンの言葉に、ルークはうなずく。
「僕が退治してきます。
今のところ、一頭のみですから、倒せるかと。」
「しかし、ルークがいかに剣の達人だからって、勝てるとは・・・」
皆、ルークの心配をしていた。
「大丈夫ですよ。
僕は強いですからね。」
ルークはそう言って、皆を安心させるのだった。
結局、ルークに任せることに決まったのだった。