1-11 VSイノシシ
ルークたちが現場に着いた時、イノシシの群れはまだいた。
5~6匹がいる。
1匹はオスのようだ、非常に大きな体だ。
3匹がメスで、体が小さめだ。
残りは子供のようだ、かなり小さい。
こういった群れで来た場合、オスを仕留めれば、他は逃げ出す。
だが、そのオスが最も強いのだ。
皮膚は固く、矢が通りにくい。
脳天に一撃与えない限り、倒すことは難しい。
皮膚に当たっても弾かれるか、刺さっても効果が無いかのどちらかだ。
イノシシたちは、こちらに気が付いているようだ。
警戒しているものの、逃げる素振りはない。
堂々と、畑の作物を食べていたのだ。
この村周辺のイノシシは非常に強く、人間を恐れないのだ。
だから度々現れて、畑の被害に遭うのだ。
村人がなんとか追い払おうとするのだが、オスのイノシシに突進されては敵わない。
イノシシのせいで、毎年けが人が出るくらいなのだ。
特にイノシシの牙には気を付けないといけない。
突進され、あれに刺されでもしたら、死ぬ可能性が高いからだ。
「どうしますか?」
ルークがルドマンに問う。
「様子見が一番なんだが、逃げる様子はないな。
おまえたち、弓矢で射掛けろ!!」
ルドマンの言葉に、若者たちはひるむ。
「無茶ですって!
突進されたら、たまったもんじゃないし。」
「臆病者が!
俺に貸せ!!」
ルドマンが若者から、弓矢を奪い取るや、矢を放つ。
しかし、矢は届かず、途中で落下する。
「あの大きなイノシシを狙えばいいんですね?」
ルークは、弓を構え、矢をつがえる。
「待て、ルーク。
危険だ!!」
若者がそう声をかけるも、ルークは矢を放つ。
矢はまっすぐに飛び、オスのイノシシの目に刺さったのだ!!
悲鳴ともなんとも言えない声で、オスのイノシシが叫び出す!!
そして、ルークを視認するや、突っ込んできたのだ!
「まずい、突っ込んできた!!
逃げろ、ルーク!!」
だが、ルークは逃げなかった。
ルークの心情は、気持ち悪いくらい冷静になっていた。
恐怖を感じなかったのだ。
ルークは再び、一本の矢をつがえ、構える。
そして、放つ!!
次はイノシシの前足に刺さったのだ。
それでもイノシシの突進が止まらない!!
「ルーク、逃げろ!!」
ルドマンが叫ぶ。
村人たちは、すでに逃げている。
だが、ルークは何故か逃げなかった。
勝てる予感がしたのだ。
ルークは弓矢を捨てると、剣を構える態勢をとる。
無論、その手に剣はない。
だが、次の瞬間、剣が出現したのだ!
そう、ルークが生成したのだ!
「いっくぞぉぉぉっ!!!」
ルークはイノシシに向かって駆けだしていた!
イノシシとルークが交差した瞬間、「ザクリッ」と鈍い音が響く!
その途端、イノシシの首が中空を舞ったのだ!!
ルークが下から上へと剣を振るい、イノシシの首を撥ねたのだ!
頭部の無くなったイノシシの体は、そのまま走り抜け、途中で地面に衝突して止まるのだった。