9-9 事件解決。
ルークは、城外門を出ると、“瞬間移動”で王都に来ていた。
結果報告をするために、ミルドベルゼ子爵の屋敷に寄るのだ。
巨大な門をくぐり、ミルドベルゼ子爵の屋敷を目指す。
やがて到着すると、ドアをノックする。
すると、出てきたのは、サーシャだった。
「あら、ルーク、いらっしゃい。
レイヴン様に用事ですか?」
「はい、かたがついたので、結果のご報告に参りました。
レイヴン様はご在宅ですか?」
「えぇ、いらっしゃいますわよ。
案内しますね。」
そう言って、サーシャはレイヴンの執務室へと案内するのだった。
「さて、話を聞こうか。」
レイヴンの対面のソファに座った後、ルークは事の次第を報告することにした。
今回の事件は、侯爵の息子ウェイツが絡んでいたこと。
魔導士対決では、ヒューゼを初級魔法で倒したこと。
そして、帰りに、ヒューゼの放った暗殺者を駆逐したこと。
サーシャは、最後の暗殺の件で心配した表情をしていたが、ルークが退治したことで安心したようだ。
「見事の一言だな。
しかし、何故、初級の魔法で倒そうと思ったんだ?」
「最初は上級魔法を使おうかと思ったんですが、
殺すわけにもいかないなと思ったので。
多少痛い目を見てもらったほうがいいだろうと思い、
初級魔法にしたんです。
そうしたら、思いのほか効果があったようです。
まさか、暗殺者を仕向けてくるほど、
プライドをズタズタにしたとは思いませんでした。」
「確かにな。
ヒューゼという魔導士は、プライドが高かったんだろう。
初級魔法に敗れたことで、プライドを潰されたも同然だからな。
怒りに火をつけた結果、暗殺者か。
しかし、その暗殺者も斬り伏せられ、本人の逮捕も時間の問題か。
あっけない幕切れだな。」
レイヴンは一口紅茶をすすると、言葉を続ける。
「しかし、君は本当に強いな。
普通、上級魔法を唱えられて、ダメージを負わないなんてありえないんだぜ。
それをあっさり防ぎ切るだなんて、もはや“大魔道士”じゃないのか?」
「いえいえ、“大魔道士”ではないですよ。
実は、魔導士試験で使われている結界術を応用したんです。
あの結界術であれば、究極の魔法でない限り、防ぐことは簡単ですから。」
「ほう、今度は、結界術までマスターしていたのか。
君は本当に凄いな。
これは、ミレーナとの婚儀の話を早めに進めたほうがよさそうだな。」
婚儀という言葉に、ルークは固まる。
サーシャは楽しそうに笑うのみである。
「冗談はさておきだ。
もうすぐ夜になる。
うちに泊まっていくといい。
サーシャ、手配を頼めるか?」
「はい、お任せください。」
サーシャは喜んで、ルークを案内するのだった。