表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創造系魔法使いのスローライフ!?  作者: 稀硫紫稀
第9章 侯爵様の息子を助けることになりました。
105/526

9-7 魔導士対決に参加しました。

翌日。

ルークはウェイツと共に馬車に乗り込み、都市グルードから離れた荒野へと移動した。

都市内部や市街地で、魔法勝負を行うわけにはいかない。

よって、人が全くいない、荒野で勝負することになったのだ。

念のため、周囲に被害が発生しないための措置である。

馬車が到着した際、既に到着している馬車があった。

どうやら、対戦相手の馬車のようだ。

ルークとウェイツは馬車から降りると、その馬車に近づく。

向こうは既に馬車を降りて待っていたようだ。

近づいて来ることに気が付いたのか、こちらに振り向く。


「やぁ、アーカイア。

 お待たせしたかな?」


アーカイアと呼ばれた青年は笑っている。


「やぁ、ウェイツ。

 だいぶやつれているようだが、大丈夫かい?

 君の専属の魔導士に逃げられたと聞いていたけど、

 ようやく魔導士を見つけたようだね。」


完全にからかっていた。


「あぁ、見つけたとも。

 それで、勝負を始めるかい?」


「あぁ、そうしよう。

 どうせ、僕の魔導士が強いんだ。

 すぐに決着がつくさ。」


アーカイアは余裕の表情だった。

アーカイアの隣には、魔導衣を纏った青年の男性が控えていた。


「彼の名は、ヒューゼだ。

 風系統の魔導士として、非常に優秀な方だ。」


ヒューゼは軽く頭を下げる。


「そうか、“風のヒューゼ”、聞いたことがある。

 こちらの魔導士も優秀なんだぜ、アーカイア。

 彼は、火と水の二系統の魔導士だ。

 名はルークという。」


ルークは紹介され、頭を下げる。


「二系統?

 そんなわけないじゃん。

 それに若すぎる。

 どうせ、中級止まりなんだろ?」


アーカイアは明らかに、ルークを見下していた。

そして、ウェイツが変な魔導士を連れて来たのだと判断したのだ。


「試してみればわかる。

 僕から言えるのはそれだけだ。」


ウェイツは得意げに笑うことはなかった。

いつものウェイツならば、得意げに笑っていただろう。

だが、反省してから心を入れ替えたのだ。

だから、ルークを信じることにしたのだ。

そして、父が嘘をつかないことも知っていたのだ。

だからこその言葉であった。


「ま、いいか。

 じゃ、はじめちゃってくれ。」


アーカイアの言葉に、ヒューゼが動き出す。


「ルーク殿、頼む。」


ルークはうなずくと、ヒューゼに続き、動く。

2人は、アーカイアとウェイツからだいぶ離れた位置まで移動するのだった。



「二系統扱えるだと?

 アーカイア様のおっしゃるとおり、中級止まりなのであろう、小僧。

 今なら引き返せる。

 不戦敗したらどうだ。」


歩行中に、ヒューゼが話しかける。

自分が勝つと信じているのだろう、調子に乗っているようだ。

だが、ルークは気にしない。


「試してみればわかりますよ。

 一応、僕も魔導士ですから。」


「ふっ、その魔導衣も借り物なのだろう?

 化けの皮をはがしてくれる!」


そして、両者は立ち止まる。

互いに対峙すると、ヒューゼは杖を構える。

ルークは特に構えることはない。

ちなみに、魔導士は杖を持つ者と持たない者の両者が存在する。

杖は魔力の安定化を図るための重要なアイテムであった。

そのため、魔法使いのほとんどは、杖を持っていた。

ところが、杖が無くても、十分な魔力制御を行って見せる者もいたのだ。

それが、ルークだ。

ルークは、杖に頼るつもりは全くなかった。

逆に、剣士である以上、杖は不要なのだった。


「杖も持たないとはな。

 情けない魔導士だ。

 さっさと敗れるがいいさ!」


ヒューゼはそう言うと、魔法を唱え、解放する!


「“風切矢(ウィンド・アロー)”!!!」


複数の風の矢がルークに襲い掛かる!

だが、ルークは、矢と矢の隙間を縫うように、全て(かわ)す!


「な、なにっ!?」


さすがに、(かわ)すと予想していなかったのであろう、ヒューゼが驚く!

次はルークの番だった。

(かわ)しつつ呪文を完成させていたのだ、すぐさま解放する!


「“風爆裂(エアロ・エクスプ)波動(ロージョン)”!!!」


風の大爆裂がヒューゼを襲う!!

爆発が済んだ後、結界を張って(こら)えたヒューゼの姿があった。


「風の中級魔法だと!?

 貴様、舐めているのか!?

 私は、風使いなのだぞ!」


これは、あくまでルークの悪戯だった。

基本、風系統の魔導士に、同じ系統の魔法を唱えることはすなわち、侮辱行為であったのだ。

これは、魔導士間では常識であった。

特にルークは火と水といった、異なる系統の魔導士である。

同じ系統ならば侮辱にはならないが、異なる系統の魔導士があえて同じ系統の魔法を使ったのだ。

完全な侮辱行為である。

これで激高して、ペースを乱してくれれば、ルークにとって御の字である。


「貴様、私を馬鹿にしているのかっ!!

 許さんぞ!!」


そして、ヒューゼは大魔法の準備を開始したのだ。

間違いなく、上級魔法を使うようだ。

見事に、ルークの策にはまったのだ。

ルークはこっそりと結界術を行使し、自分の全身を薄い皮膜のようなもので、防御する。

ルークの準備はすぐに完了した。

後は、ヒューゼの魔法が完成するのを待つばかりである。


「もはや許さん。

 貴様は粉々に砕け散れ!!

 “極大風凝縮爆発波(エアリアル・ブレイク)”!!!」


途端、ルークを中心に、空気が高圧縮され、大爆発が巻き起こったのだ!!


「ふっふっふ、死んだな。

 私を馬鹿にした罰だ!」


ヒューゼは得意満面だった。

大爆発の影響で土埃が激しく舞う状況だったが、ヒューゼは勝ちを確信した。

もはや、ルークは生きていまい。

そう思い、引き上げようとした、その時だった。

突然、土埃が掃除機に回収されるように消え去ったのだ。

そして、爆発地点には、ルークが立っていたのだ!


「ふむ、空気を高圧縮し、大爆発を起こす魔法か。

 今ので一つ目を覚えたよ。

 ありがと、ヒューゼさん。」


「な、なにぃぃっ!!?」


ヒューゼは驚くより他なかった。

まさか、風系統の上級魔法を耐え抜いたこと自体、信じられなかったのだ。

ちなみにヒューゼは、ルークの結界術に気が付いていない。

ルークの結界術は、魔導士協会に張られている結界並みに固いのだ。

上級魔法でも究極レベルのものでない限り、破壊することは困難なのである。

よって、ルークはある意味、無敵だった。

そんなヒューゼが驚いている中、ルークはゆっくりと右手のひらをヒューゼに向ける。


「じゃ、お返しだ。

 初級の魔法だけど、甘く見ないことだね。

 高位の魔法はあなたにはもったいない。

 だから、これで、十分だよ。」


ルークは、魔法を解放する!!


「“火炎球(ファイアボール)”!!!」


そう、初級の魔法を使ったのだ。

ただし、規模が異なった。

極大の火球が出現し、ヒューゼに襲い掛かったのだ!

ルークが魔法力を操作し、極大の火球を創り出していたのだ!

魔法威力は、高位の魔法並みだった。

よって、結界で防ぎ切らないと、焼失するのだ!


「な、なんて大きさだ!!」


ヒューゼは慌てて結界を張るが遅かった。

大爆発が巻き起こり、やがて収まる。

そして、クレーターが出来ていた。

そのクレーターの中心には、ヒューゼが大やけどを負った状態で倒れていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ