9-4 本屋へ行こう。
ルークは魔導士協会を出ると、そのまま本屋に向かって歩き出していた。
やがて、いつもの本屋に到着する。
ドアを開けて中に入ると、ちょうどユーディスが現れたところだった。
「おや、ルークではないか。
ほう、それは魔導衣ではないか。
ということは、魔導士になれたようだね。」
「はい、この前、火系統の魔導士になれました。
今日は、水系統の上級魔法の試験を受けてきました。」
その言葉に、ユーディスは驚き、笑みを浮かべる。
「そうか、それはおめでとう。
ということは、今日お求めの品は、風系統といったところかな?」
「ありがとうございます。
はい、その通りです。」
ユーディスは笑みを浮かべると、一冊の本をすぐそばの本棚から取り出す。
「これが、お望みの風系統の上級魔術書だ。
金貨50枚だ。」
ルークは、袋から金貨50枚を取り出して、支払う。
「確かにちょうどだ。」
ユーディスは金貨を受け取ると、ルークに本を渡す。
「ありがとうございます。」
ルークは本を袋の中にしまい込む。
「さて、次の本も用意せねばなるまい。
ところで、実地試験でどこまで使ったのかね?」
「えっと、5つの魔法全てを使いました。」
それを聞いて、ユーディスは目を丸くする。
「事実かね?
審査官たちは驚いていなかったかね?」
「びっくりしてました。
その、驚かせすぎて、なんか悪い事をした気分になってしまいました。」
それを聞いて、ユーディスは笑みを浮かべる。
「そうか。
もし、次の風系統の試験を受ける際、私も誘ってくれないか?」
「えっ?」
ルークは驚く。
「私も長年魔導士をしているが、四つ目と五つ目の魔法は扱えない。
一度目にしてみたいのだ、究極に近い魔法の様を。」
それは、ユーディスの願いであった。
ユーディスはかつて、上級魔法の理解に時間を費やしていたことがある。
だが、四つ目と五つ目の魔法だけは理解できず、魔法の発動もできなかった。
結果、途中で挫折したのだ。
だからこそ、見てみたかったのだ。
究極ともよばれる魔法の凄まじさを。
「わかりました。
僕も扱えるかわかりませんが、使えるようになったら試験で披露します。
その時は、ユーディスさんもお呼びしますね。」
「あぁ、ありがとう、ルーク。」
ルークは一礼すると、店を出ていくのだった。
ユーディスはその背中を見て、呟く。
「・・・生きているうちに見れる日が来るかもしれないとはな。
人生とはわからないものだ。」
ユーディスは思わず、小さく笑うのであった。