1-10 イノシシ襲来!?
森に入ってからも、ルークは若者たちに色々質問をした。
森の中での行動の心得とか、獲物を見つけた場合の行動なんかだ。
色々教わり、学習していく。
そうすることで、ルーク自身の経験に変わっていくのだ。
やがて、鹿を見つけた。
全員が弓を構え、鹿を狙い撃つ!
ストンと一本の矢が鹿の頭部に直撃する。
それは、ルークの矢だった。
鹿は、一発で仕留められたのだった。
「いや、凄いな。
まさかルークの矢が頭部に命中するなんて。」
「そうだね、僕もびっくりしているよ。」
ルークは嬉しそうだった。
実は、ルークの筋力が強かったのが要因だった。
今のルークの体は強靭そのものだ。
矢を引き絞り、しっかりと狙いを付けた瞬間、まっすぐに矢が飛んだのだ。
膂力が高いせいだろう、かなり勢いのある矢が、鹿の頭部に命中したのだ。
ルークはそのことに気が付いていなかった。
自分が仕留めた事がとても嬉しかったのだ。
それで、すっかり自分の体のことを忘れていたのだった。
ルークらは、仕留めた鹿の後脚に紐を括り付け、引きずる形で村に戻るのであった。
「村長、鹿を仕留めた。」
村長のルドマンは、ルークを含めた若者4人に鹿を見せられ、喜んだ。
「おおっ、よくやった。
でかいな。
皆で肉を分けるといい。」
「実は、肉の切分けとかわかんないだ。
村長、教えてくれよ。」
「おお、いいぞ。
ナイフ持ってくる、そこに吊るしておいてくれ。」
村長が指さしたところに、鹿を吊るす紐と場所があった。
ルークも含め若者たちは、鹿を吊るすと、村長を待つ。
「今日は肉だな。
ルーク、おまえも久しぶりじゃないか?」
「うん、肉はだいぶ食べてないから。」
ルークはあまり肉を食べたことがない。
というのも、家にこもっていることが多いため、固いパンと野菜を煮込んだ物ばかりなのだ。
だから、肉を食べるのは本当に久しぶりだったのだ。
村長がナイフを持って戻ってくると、吊るされた鹿をさばいていく。
ルークはその様子をじっと見て、覚えていた。
村長の手さばきは非常に慣れたものだ。
まるで紙をナイフで斬り裂くように、繊細な手順で綺麗に斬るのだ。
無駄が少ない斬り方だった。
内臓が取り出され、やがて肉が切り分けられる。
ルドマンの奥さんも姿を現し、肉の切り分けの手伝いを始める。
若者たちも、ルドマンより切り分けられた肉を手にしていた。
「ルーク、お前はもっと食わないとダメだ。
やせっぽちなんだ、これだけ持ってけ。」
多めの肉を渡されたのだ。
「村長、この鹿仕留めたの、ルークなんだ。
肉、多めに渡してやってくれよ。」
若者の発言に、ルドマンが驚く。
「なに、ホントか!?
ルーク、おまえもやるもんだな。」
そう言って、二カッと笑う。
「あ、うん、ありがとう。」
その後、更に多めの肉を渡されることになるのだった。
肉を持ち帰ろうとしたルークは、叫び声に振り向いた。
「村長、大変だ、イノシシたちが出やがった!!」
「なんだと!?」
ルドマンが慌てて驚く。
村人が1人、走って村長の元に来ると、若者たちを見回す。
「おまえたち、弓矢もってるな?
頼む、イノシシを仕留めてくれ!!」
ところが、若者たちは困った表情をする。
「いや、イノシシって、皮膚が固いだろ。
矢が通らないんだよ。
あいつらは突進するし、突進食らって骨折ったヤツだっているんだし」
「そんなことを言ってる場合か!!
畑が荒らされているんだぞ!!」
その言葉に、若者たちは困り果てる。
「とにかく、行くぞ。
おまえたちもついて来い!!」
ルドマンの言葉に、ルークも含め皆ついていくことになるのだった。