9 妻のやきもち
◆◇◆
レオーナが隣でつっぷして、はあはあ息をしている。
俺は身を起こして、レオーナの背中を撫でていた。
体感時間では2時間ほどレオーナと交わって、ようやく催淫の効果がなくなってきた。
「新たな能力【弱点攻撃】を獲得しました。閨の相手または自分に授与してください。考慮時間は3分です。時間を過ぎた場合は自分に授与されます」
女性の声が聞こえた。
物理攻撃系の能力だ。もちろんレオーナに授与する。
獲得する能力は、閨をともにする女性の属性である程度決まるんだろうな。
「なっ――【弱点攻撃】の能力授与って!?」
レオーナが跳ね起きる。
突然、女の声が聞こえて驚いたみたいだ。
「よしよし、ちゃんとレオーナに授けられて良かった」
俺はホッとしている。
レオーナと閨をともにして何の能力も授けらなかったら、タダで処女を奪ったことになる。
「【弱点攻撃】は、敵の弱点を突く確率が2倍。弱点に決まればダメージは2倍。私のクリティカルな攻撃が敵に決まりまくる」
レオーナが能力を解説してくれながら、ワナワナしている。
「そ、そうなんだ。ハズレスキルじゃないよね」
「とんでもないっ すごい能力です。新たな能力なんて血のにじむ修練をしたってなかなか得られないのに。こんな簡単に……」
「簡単なのかなぁ」
俺は首を傾げる。
レオーナが嫌がってたことをして、申し訳なさでいっぱい。
「陛下、ありがとうございました」
レオーナがうやうやしく頭を下げる。
おっぱいが露わだが、見ないようにする。
「べ、別に御礼を言われることじゃないよ。この世界で俺が唯一役に立てる方法だから」
ああ……閨をともにせずに、気前よく女性に能力を授与できたらどんなに素晴らしいことか。
「先程は陛下と床をともにすることを拒否しようとして、申し訳ございませんでした。どうか非礼をお許しください」
レオーナが一転して礼儀正しくなっている。
「ああ気にしてないよ。てか嫌がるの当たり前でしょ、ははは」
「陛下……その……」
レオーナが顔を真っ赤にして、指をモジモジする。
「ん、何?」
「よ、よろしければ、ま、また私を閨に呼んでいただけませんでしょうか」
恥ずかしさでレオーナは口を詰まらせながら話した。
「ごめんね。やっぱり一度で魔法耐性の能力を授与できなかったからね」
「あ、いえ……そうではなく……また陛下に可愛がっていただきたく……」
レオーナの声がどんどん小さくなっていくから、終わりらへんは聞こえなかった。
「う、うん。魔法耐性を獲得できるまで、レオーナは我慢するんだよね。さすがは国を守る戦士だな」
俺はレオーナが能力獲得のため頑張るのだと理解した。心意気に感心する。
「こほん、で、では、そういうことにさせていただきます。どうか私にたくさん能力を授けてください」
「でも……俺は無理だ。義務感で閨をともにしようという女性を抱けないよ」
「じゃ、じゃあまたアイリ王妃に催淫をかけてもらうってことで」
レオーナは乗り気な感じ。めっちゃ嫌がってたのに。
「ううう……しょうがないよね」
俺は頭を掻く。
「陛下は大変なのですね」
レオーナが笑顔を見せてくれる。
最初ツーンとしていたレオーナだけど、ちょっとは心が通って来た感じ。俺の苦悩を理解してくれている。
コンコン
扉がノックされる。
俺もレオーナも慌ててカバーで体を隠した。
「ど、どうぞ」
俺が声を掛けると、扉が開く。
アイリが顔を出す。
「終わったようですね」
「あ、ああ、ちゃんと能力を授けたからね」
俺はあくまで職務を遂行しただけであることを強調。
「良かったです」
アイリはニコニコして歩み寄って来る。
俺たちに何の用があるんだろう。
「な、何か」
俺にはアイリが薄気味悪い。
「次は私を可愛がっていただきますっ」
「えええっ」
俺もレオーナものけぞった。
「だってぇ私、扉に耳をくっつけてたんです。レオーナさんの嬌声を聞いてて、狂いそうになってました」
「聞かなきゃいいのに……」
「気になってしょうがなかったんです。陛下が私よりレオーナさんを好きになったらどうしようって」
「そ、それは催淫のせいだから」
掛けたのはアイリだぞ。
「わかってます。わかってますけど、せつないんです」
アイリが涙を流す。
気まずい。
浮気現場に踏み込まれたようだ。
「わ、私は退散することにします」
レオーナが慌てて裸のままベッドから出る。レオーナも居心地悪いよね。いいなあ、レオーナは逃げ出せて。
蝋燭の光で、レオーナの起伏に富んだ体が照らされる。
「やっぱり。レオーナさんに比べたら私はお子ちゃま。ぐすっ」
アイリはレオーナに視線をやって悔しがる。
「あのですねぇ……陛下の心は王妃様のものなのですが」
レオーナはビキニアーマーを身に着けながら呆れた感じで話す。
「悔しいのは私の方です。催淫を使わないと陛下は私に指一本触れませんから」
「ほっ本当なんですか」
「王妃様と陛下は催淫無しなんでしょう。仲がいいのは羨ましいですよ、はあぁ」
レオーナがアイリに向かってわざとらしくため息。レオーナが、なぜ俺たちを羨ましがるのか、よくわからない。レオーナは強くなるために閨をともにするのであって、俺はどうでもいいでしょ。
「わ、私たちは夫婦ですからっ ぐすっ」
「ふふ、泣き虫の王妃様。陛下に慰めていただいたらいいですよ」
レオーナは大剣を右肩に乗せる。カチャカチャ防具が擦り合う音を出しながら部屋から出て行った。
「陛下ぁ」
アイリが涙声でベッドに飛び乗って来る。
「あ、あのね。俺はヘトヘトでさ」
「まあそんなにレオーナさんと愛し合ったってことなんですねっ」
アイリはとても嫉妬深い。
「だから催淫のせいだってさ」
俺は苦笑するしかない。
「悔しいからもう一回です。催淫っ」
アイリが俺を指差して唱える。
ズキンと頭に痛みが走る。
「いいいっ」
「私自身には催淫はかけませんっ レオーナさんと陛下がくんずほぐれつしているのを聞いて、とってもやらしい気分になっちゃってるからっ」
アイリが覆い被さって来て、唇を押し付ける。
「ちゅ、んちゅ、先生、大好きぃ」
俺は力尽きたと思っていたのに、催淫のせいでまた体が熱くなる。
アイリと激しく求め合ってしまった。
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