27 旅に出る
3年後……
戦争特需は続いている。
ゴーレムによる鉱山の採掘と錬金術師による精錬によって、元手がほとんどかからず莫大な利益が生み出されている。
国民の女の子たちはお金をいっぱいバラ撒いてもらってウハウハだ。
ただし、鉱山はいつか枯渇する恐れがある。蓄えを食いつぶさず、国民が末永く食っていけるようにしないといけない。俺はバラ撒き政治家とは違うっていうところを見せつける決断を下した。
バラ撒きを絞って、利益の大半を投資したのだ。しかも王都に株式市場を創設。
株式市場こそは、お金を最も効率的に運用する制度。前世で、最初に株式市場を創設した小国オランダを世界最強国に急成長させたほどの威力がある。
株式市場を通じて、ハルザ同盟などの会社に投資している。結果、莫大な配当金が毎年支払われるようになったので、いつか鉱山が枯渇したとしても大丈夫である。
ノルデン王国では、ベーシックインカムが恒久的に実現。
国民に将来への不安はなくなり、希望に満ち溢れている。
上下水道の整備工事にも力を注いだ。衛生状態が劇的に改善したので、乳児死亡率も大幅に減少。これも前世のイギリスなどの歴史に学んだものだ。
とまあ、俺は前世の歴史知識を活用して、国政を頑張った。
王様支持率は100%だとか。
将来への不安がない女性たちは子供を産みたがる。俺としては大変なんだが、王国はベビーブーム真っ盛り。
毎日10人くらい俺の子が産まれている。
ほとんどの国民は働かないので、子育てに専念できる。
王都を散歩すれば、どの家からも「ほぎゃあほぎゃあ」と泣き声が聞こえて来る。
「あ、王様だわ」
赤ちゃんを抱っこした女性たちに遭遇して取り囲まれる。
「陛下の子ですよ。最高に可愛いでしょ」
色白の赤ちゃん達はみんなツヤっとして輝いて見える。
「うん、可愛いねぇ」
「ありがとうございます。こんな素晴らしい子を授けて下さって」
「いやぁ……育児を全く手伝えなくて申し訳ないんだけど」
「この子、おっぱいをいっぱい飲んでよく寝てくれるから楽ですよ」
「いい子だね」
「育児は大変だけど、それだけやってればいいもんねー」
「働かなくてもお金がいっぱいもらえるなんて、すごすぎ」
「可愛い赤ちゃんとずっと一緒にいられるなんて、ここは天国ですぅ」
別の女性たちは感嘆している。
俺は3年間頑張り続けて、妊娠を希望する女性ほぼ全員に子種を授けた。
2万人以上の次世代が生まれてくれば、王国の人口問題は解消する。
さすがに俺はもうお役御免にしてもらいたくなっている。
◆◇◆
王妃アイリも出産した。
俺は王都の病院の一室で、ベッドで寝そべるアイリの傍にいる。
赤ちゃんは子供用のベッドに置かれている。
「ほぎゃあほぎゃあ」
元気な泣き声の男の子である。
アイリは大仕事を成し遂げてぐったりしている。
「俺の子を産んでくれてありがとう」
「先生の子を産めたなんて、夢じゃないですよね」
アイリの両目から涙が流れる。
「夢みたいだよね。なかなかアイリは子宝に恵まれなかったから。でも夢じゃないよ」
俺も感動に打ち震えている。
と言っても、アイリはまだ21才だからな。他の女の子たちがどんどん妊娠していくのに比べれば遅かったというだけだ。
「王国の跡継ぎの誕生ですね」
「ああ、俺はもう仕事をやらないよ。政務は全部キキィに任せる。軍事はレオーナにお任せ。膨大な能力者がいる我が国に攻め込もうとする敵はいないだろうが。子作りも休止で」
「ふふ、先生は暇すぎになりませんか。代わりに先生がなさりたいことがあるのですか」
「俺は王様にしてもらったし、大勢の子宝に恵まれた。我が国の投資は莫大な利益を上げているからお金の心配もない。ようやくってことで、前世でやれなかった俺の夢をかなえたい」
「夢? 先生の夢って……先生になることじゃなったんですか」
アイリが驚いている。
確かに俺は教え子の育成が得意だ。だが俺にたまたまそういう才能があるとわかっただけで、先生にはなりたいわけじゃなかった。
就職氷河期で、他に仕事がなかったから泣く泣くブラック労働の先生になっていた。
「歴史の研究者になりたいんだ。前世で俺は、歴史学者になりたかったけど、研究者になるのは狭き門でね」
「え……こちらの世界にいながら、前世の歴史を研究するんですか」
アイリが不思議そうにする。
俺は首を振る。
「前世のゴミの国なんてどうでもいいよ。転生してきた今から振り返ると前世はつくづく不公平極まりないひどい国だった。俺が研究したいのは、この世界の古代の歴史さ」
俺は窓の前に立つ。俺の夢を語るのがちょっと恥ずかしくなったから。
外を見つめたまま話し続ける。
「歴史を研究するのに、一つ目標があるんだ。ノルデン王国の男を死滅させた呪いを解明したい。呪いを使ったマルーは死んだ。どんな呪法だったか知る者はいない。だけどルナは、古代の魔術書に手掛かりがあると言っていた。古代の魔術書を読み解いて、呪いの作動する仕組みを突き止める。でもって対処法も導き出したい。再び呪いを使われたら、ノルデン王国は危機に瀕する。俺の子孫の男がみんな死んじゃうわけで、そんな事態は絶対に阻止しないといけない」
「陛下、優しいっ みんなを守ることばかり考えて下さって」
アイリが感動してる。
「趣味と実益を兼ねた研究だよ」
俺はちょっと照れる。
「俺は古代の魔術書を探す旅に出ようと思う。神聖ロマン帝国には多分いっぱい魔術書が残っているはずなんだ」
告げるとアイリがハッとした。
神聖ロマン帝国は独裁者だった皇帝が死んで、内乱が続いている。
治安が崩壊して、とても危険な状態だ。
「そんな……王様が王国から出て行くなんて」
「魔術書が戦乱で焼かれる恐れがあるから一刻も早く行きたい。魔術書を背負えるだけ背負って帰ってくる」
俺は3年間、貴重な自由時間に古代の言語の勉強をした。古代の文献をけっこう読めるようになっているのだ。
王子の誕生を区切りにしようと思っていた。
「私は子供のお世話をしないと……付いて行きたいのに」
「すまん。だが行かないといけない」
「先生が死んじゃったら、私は生きていけませんよ」
「大丈夫。絶対に死なない」
俺は多くの女性たちと閨をともにして、新たな能力が発現した。そのうちいくつも俺の護身用として、もらっておいた。
俺はすでに戦士としても、魔法使いとしても世界最強クラスのはずだ。
「うう……旅先で女を作るんじゃ」
「ないない。もう女性は嫌と言うほど閨をともにしたから」
即答しておく。
「行って来る。必ず帰って来るからな」
俺はアイリとキスする。
しばしの別れになる。
次回で完結です。8月27日土曜日10時頃、投稿予定です。
完結後に、新連載も投稿もさせていただきます。
今後も拙作をご愛顧いただきますと大変ありがたく存じます。




