26 難民の女の子を保護
◆◇◆
皇帝が死んで、予想どおり帝国内では跡目争いの紛争が勃発した。
また帝国に征服された多くの国でも独立戦争が起きているという。
ハルザ同盟でも市民が蜂起して、帝国軍を早々に追い払った。俺がハルザ同盟解放に出撃するまでもなかった。フォーゲル市長も無事らしくて良かった。
おかげでハルザ同盟の諸都市から大量の食料を積んだ船がやって来てくれた。
港ではゴーレムたちが食料の袋をかついで運んでくれる。
「ふう、これで食料不足が解消される」
俺は作業を見つめて安心する。
空になった船には、ハルザ市から避難してきた500人の女の子を乗せて帰ってもらおう。
国に居座られると、彼女らも俺の子が産みたいと騒ぎそうだからな。
「あたしは帰国しないからね。他の子も多分帰らないよ」
隣にいたミイナが俺の意表を突いてくる。
「え、なんで」
キョトンとする。ミイナとは結婚したけどさ。偽装結婚だから、取り消すのに何の問題もない。ハルザ市に帰って、商人にふさわしい夫を見つけてほしい。
「陛下はみんなに大人気だし。それにあたしは……」
急にミイナが顔を赤くする。
「ん……」
「あたし、陛下の御子を宿してしまったから」
ミイナが右手でお腹を撫でる。
「は?」
俺がミイナと閨をともにしたのは数回だけ。しかも2回目からは避妊薬を俺が見ている前で飲ませた。
まさか最初の一回で妊娠しちゃったの!?
「うふふ、できちゃったから正式に第二夫人ってことでいいでしょ。あたしたちはもう離れられないの」
ミイナがニコニコで呆然とする俺の右腕に抱きついてくる。
恐る恐るアイリの方を見る。
アイリはうつむいてしょんぼりしている。
サーシャとか妻じゃない女性を妊娠させるより、ミイナを妊娠させるのはダメージがでかい。
「お、俺は嵌められたんだ。俺が孕まそうと思ったんじゃない」
焦って言い訳する。
「ひっどーい。あたしの子が要らない子みたいじゃない」
「そ、そういうわけじゃ」
「もう。正妻の私も孕ませてくださいよね」
アイリが腰に両手を当てたポーズでちょっと怒っている。
女の子たちに責められるのってつらい。
◆◇◆
執務室。
宰相のキキィから情勢報告。
「帝国領内では貴族どおしの争いが激化しています。武器をめちゃくちゃ欲しがってて、ハルザ同盟は売りまくって儲けてるそうですよー」
「死の商人だね」
俺は感心しないけど、商魂たくましいと思う。
「で、ハルザは武器の素材になる金属を大量に買いたがってます。我が国から鉄とかどんどん輸出して大儲けしましょう」
「そ、それはどうかな」
「金を稼ぐ大チャンスで、何を言ってるんですかー」
キキィが目を吊り上げて怒る。
「人が死ぬのに油を注ぐのは……」
俺は一瞬、ためらったものの……すぐ考え直す。
俺の転生前の世界では、世間の人間は氷河期世代の俺につらくあたるばかりだった。
ここは異世界だけど、ぶっちゃけ他人なんかどうでもいいよね。優しくしてやると、搾取されるばかりなんだし。
「よし、じゃんじゃん鉱石を輸出して儲けよう。儲かった金は国民に分配しよう」
「やったー 陛下は気前がいいですね。女の子たちが大喜びですよ」
そこでレオーナが駆け込んできた。
「陛下、大変です。ノルデン隘路に大量の難民が押し寄せて来ています」
◆◇◆
馬を駆るレオーナの背中にくっついて、ノルデン隘路に急行した。我が国と帝国の国境の間にある要衝だ。
幅10メルトルほどの崖の間の道で歩兵隊員100人ほどが立ち塞がっている。
向こう側には黒雲のような難民の群れ。街道の彼方まで途切れることなく続いている。
「一体、何万人いるんだろう」
俺は馬の上でうめいた。
「見えているだけで10万人以上いるかと」
レオーナも見当がつかないようだ。
「助けてくだせぇ。故郷は軍閥や野盗が暴れ回る地獄と化しております」
難民の先頭にいる男の声が聞こえて来た。
俺は馬を降りて、前の方に歩いて行く。
難民はみな、ズダボロの服を着て、土で汚れた顔をしている。重そうな荷物を背負って懸命に逃げて来たようだ。
「どうか騒乱が収まるまで滞在させて下さい」
「食料を恵んでください」
難民たちの訴えが痛々しい。
助けてあげたいんだけどね……
俺は申し訳なさでいっぱいになる。
あいにく我が国自体、目下の食料は余裕がない状況。
「お願いだ。どんな仕事でもやるでよ」
髭面のおっさんが大声で言うが、我が国の労働はほとんどゴーレムがやる。
おっさんにやらせる仕事はない。俺の前世で、高齢社員がAIによってリストラされるみたいなものだ。
「陛下、難民を国に入れたら治安が悪化します。ここは毅然とした対応を」
レオーナが釘を刺してくる。軍事と警察の責任者であるレオーナの言葉は重い。
「だよねえ、どうしたもんか。なんとか助けてあげたいんだけど」
「さすが、陛下はお優しい。ですが難民など知ったことではありません。追い返せばいいのです」
帝国が大混乱に陥ったのは、俺が皇帝を討ち取ったからなんだよね
帝国全土が北○の拳の世界になることまでは想定できなかった。
「ヒャッハーが暴れ回って、ジジイをぶっ殺し、女性をレ○プしていると思うと罪悪感を覚えずにはいられないだよなぁ……」
「ふぅ では女の子だけ、入国を許可してはいかがでしょうか」
レオーナが嘆息してから提案してくれる。
「え、いいの!?」
「女の子なら男と違ってあまり悪さをしないでしょう。我が国には陛下しか男性がいない状況。男は伝染病のようなもので、絶対に入国を許可できませんが」
「そこまで言うか……とにかく女の子が可哀想だから女の子だけでも救ってあげよう」
レオーナは頷くと、難民の前で大声を張り上げた。
「若い女だけ特別に保護しよう。いっさいの暴行から守ることを、我ら女性歩兵隊の名ににかけて保証する」
「おおお、ありがたい」
「娘だけでも生き残れたら」
難民たちの中で安堵のささやきがなされる。
女の子が家族と別れを済ませる。
「お父さん、お母さん、私ばっかりごめんなさい」
「お前だけでも強く生きて行くんだぞ」
大勢の別れを見ているのはつらい。
全員を助けてあげられなくて申し訳ない。せめて女の子は大事にしてあげよう。
女の子たちが泣きながら、歩いてくる。
歩兵隊は道を開けて通してやる。
レオーナが隊員に言い聞かせる。
「男が女に変装して、紛れ込もうとするかもしれん。しっかり見張っておけ」
「はい。我が国に陛下以外の男はいりませんからね」
「しっかし、また王様のハーレムが増えそう」
「難民にも結構可愛い子がいるなあ」
「あの子なんか、めっちゃ可愛いじゃん。腹立つ」
歩兵隊員が愚痴を言い合っている。
「俺は難民の子をどうこうするつもりはないって」
「お言葉ですが、ハルザ市の難民を受け入れて、ミイナ殿を第二夫人にされています」
レオーナが前科をなじってくる。
あれは逆レ○プみたいなものだというのに……
難民の女の子は約5千人。
王都で暮らさせることにして、ぞろぞろとノルデン隘路を歩いていく。
他の難民たちは満足したみたいで、引き返して行った。
ジジイたちは他の国で保護されるといいのだが、邪魔者扱いされるだろうな。哀れなことに、どこかで野垂れ死ぬことになる。
彼らの大事な娘を俺が奪い取ったと思わないでほしいものだ。
王都には、かつて男だけで一人暮らししていた家屋がたくさんある。
男を死滅させる呪いが発生してからは空き家だ。
難民の女の子たちは空き家で暮らしてもらう。
俺はキキィと一緒に王都を回って、難民の女の子たちの様子を見て回る。
「久しぶりに屋根のあるところで寝られるわ」
「幸せー」
些細なことで感激している女の子たちを見ると、保護してあげて良かったなと思う。
街には温泉の公衆浴場がある。山国で温泉が豊富に湧くからね。
難民の子たちが早速詰めかけている。
お風呂から出てきた女の子たちは汚れが落ちてツヤっとしている。どの子も色白。北国のノルデン王国に隣接する地方の子だから、あまり日に焼けていないようだ。
確かにみんなかなり可愛ゆくて、美女しかいないノルデン王国の女性が1.5倍に増えた感覚。
「はあぁ、大量の難民を受け入れちゃってー 陛下は人が良すぎです」
キキィは不満げ。
「すまん。しかし追い返すのは可哀想でな。難民の子たちは、いずれ騒乱が落ち着いたら帰っていくだろ」
「いいえ、ほとんど帰りませんよー 親兄弟がほとんど死んじゃいますから帰る場所がありません」
「う……」
「しかもノルデン王国は帝国軍を二度も撃退した強国。ここより安全な土地はありません」
「てことは難民の子たちはずっと住み続けたがる?」
「はーい、絶対そうなります。国民と難民が対立して内紛が勃発しそう。宰相としては頭が痛いですね」
「ど、どうしよう」
俺の善意でしたことで、国民に迷惑をかけてしまう。薄々予想はしていたが、やはり焦ってしまう。
「難民をノルデン王国を一員として取り込んでいくしかないですねー 陛下に難民の子たちとも子作りをして、みんなが陛下の妻ってことで平等にならないと」
「ひいい」
もともと8千人の国民と子作りする予定が5千人追加。ハルザ市の女の子5百人も加わりそうだから、目眩がしてくる。
「多くの女性と閨をともにしていただけると、それだけ能力が授与されますねー 能力持ちが膨大にいる我が国は、どんな外敵も侵略できない最強国家。安全保障のためにも陛下は頑張ってください」
帝国が崩壊して平和になると思ったのに、ハーレムは拡張される一方だ。
こんな大変なことになるなら【捨身の攻撃】で死んでいた方がマシだったんじゃという気がする。
あと2回で完結です。




