25 俺たち夫婦の勝利
◆◇◆
次に気づいた時、俺は淡い光に包まれた異空間を飛んでいる。
魂が抜け出したのかな。
別の異世界を目指しているのかもしれない。
今度は王様じゃなくて、庶民の穏やかな人生がいい。
ハーレムは女の子に気を遣わないといけないから、とても大変だってわかった。もう結構だ。
できれば天寿を全うしたアイリも同じ世界に転生してきて、また夫婦になりたいな。
アイリだけと仲睦まじく暮らしたい。
「あなたの次の転生先ですが……」
いきなり女の声が聞こえた。【能力授与】ギフトで、新しい能力を獲得した時と同じ声。
「え……お、お願いします、平和で、そこそこ文明の発達した世界で」
俺はとっさに訴えた。
「却下」
冷たい答え。
「そ、そんな、またハーレム王ですか もう許して下さい」
「あなた達はイチャラブすぎで、ほんと腹が立ちます」
「え、まさか、アイリと一緒にしてくれないの!?」
「ふん、私が阻止しても、アイリの強い意思は必ずあなたと同じ世界に転生します。はあぁ同じことを繰り返すの無駄ですから、このまま生かしておきます」
ため息混じりに告げられた。
「へ……!? てことは」
淡い光の中に自分の姿が溶けて行く。
「先生っ 先生っ」
アイリの叫び。
俺は激しく揺さぶられている。
目を開ける。
アイリが俺に覆い被さっている。
大粒の涙が落ちて来る。
俺は床に寝かされているのか……
「先生っ 意識が戻ったんですねっ」
アイリが抱きついてきた。
「ああ、助かった。アイリのおかげだよ」
神様は愚痴まじりだったけど、俺をずっと見守ってくれてたんだ。
アイリが俺を好き過ぎるからこそ、神様は1パーセントの当たりをくれた。
「私のせいで【捨身の攻撃】を獲得して、先生が使うことになっちゃった。ごめんなさいっ ごめんなさいっ」
アイリが涙声で謝りまくる。
「いや、ほんと。皇帝を倒せて、俺が生き残れたのはアイリのおかげだ。俺たちは最高の組み合わせだよ」
「ううう……」
アイリは申し訳なさと、俺が助かった喜びが入り混じって泣きじゃくる。
俺は起き上がろうとする。
体の節々がまだ激しく痛む。
神様は俺を生還させてくれたが、痛みまでは直してくれなかったようだ。
アイリに肩組みしてもらう。
「へ、陛下、勝ったのですか」
レオーナの声。
はっとして声の方を向くとレオーナが手を床について顔を起こしていた。
「良かった、気がついたんだね。うん、信じられないだろうけど、俺とアイリの力を合わせて勝ったんだよ」
俺は興奮気味に伝える。
【捨身の攻撃】は俺とアイリで生み出した能力だ。そして2人とも生き残ったから、夫婦の勝利。
「さ、さすがです。では皇帝を討ち取ったことを大声で知らせてやりましょう。帝国軍どもは慌てて逃げ出します」
レオーナも興奮してきた。
「やろうやろう。でも皇帝を討ち取ったっていう証拠はどうしよう」
皇帝の体は光に溶けて消えちゃったんだよね。死体が残ってないから、帝国軍に見せつける物が……
この部屋には、虚ろな目のハーレムの女性たちしかいない。帝国軍の兵士がいたら、目撃証人になるんだが。
「皇帝の鎧が落ちてますよっ」
アイリが指差す。
広い部屋のあちこちに黒い鎧が散らばっている。皇帝の体は消滅したけど、鎧はそっくり残っていた。
「皇帝の鎧は、帝国軍の強さの象徴。我らが鎧を持っていれば、皇帝が負けたことを思い知ります」
レオーナが鎧を拾い集めに行く。
俺は甲板で戦っているルナのことを思い出した。マルーとの死闘はどうなったんだ。
◆◇◆
急いで廊下と階段を駆け抜け、甲板に出てみると、ルナがぺたんこ座りしている。そばでマルーが仰向けに倒れていた。
帝国軍の兵士はルナを警戒して遠巻きにしている。
「やった……マルーを倒したんだな」
俺の問いかけにルナがコクリとする。
皇帝とマルーの両方を倒せたら俺たちの勝利だ。震えが来た。
「帝国軍ども、見ろ。皇帝の鎧だ。皇帝はノルデン王が討ち取った」
レオーナが黒い鎧を掲げて叫ぶ。
「なっーー!?」
「確かに皇帝の鎧だ」
「皇帝が死んだだと」
動揺が広がって行く。
すぐ近くの帝国軍の船で火柱が上がる
そばで停泊している海賊船のヒルデガルドが【火嵐】をぶっ放したのだ。
【火嵐】を合図に、港の奥に隠している味方の艦隊と海賊船が出撃してくる手筈。今、ゴーレムがガレー船の櫂を漕ぎ始めている。
「何事だ!?」
「敵襲か」
周りの帝国船でパニックが起きる。
俺も【神雷】をこの旗艦に降らせてやる。
雷が船尾辺りに降り注ぎ、爆発。
「敵襲、敵襲」
「前方から敵艦隊が接近してくるぞ」
銅鑼が打ち鳴らされている。
作戦どおり、味方のゴーレム艦隊が殺到してきている。50隻にもならないが、混乱状態の帝国艦隊なら衝ける。
「逃げろ」
「皇帝が死んだら終わりだろ」
帝国軍兵士が甲板を逃げ惑う。
「引け引け」
「退却だ」
大混乱に陥った帝国軍。他の船はノルデン湾の外に引き返していく。
浅瀬に座礁する船も多い。
俺はヒルデガルドの船に乗り移って様子を見ていた。
甲板にはヒルデガルドとミイナもいる。
「あははは、こりゃ本当に大量のドロップアイテムとお宝ゲットだな」
ヒルデガルドは笑いが止まらない。
「【ドロップ率(大)】の効果ですね」
ミイナも初めて自分が役に立って喜んでいる。
「生き残った帝国軍兵士は国外に放り出して、お宝だけもらっときましょう」
レオーナも満足げ。
食料庫を破壊されたり、甚大な被害が出たからな。戦利品を奪うことに何ら後ろめたいことはない。
帝国の船には食料も積んでいるだろう。当面は食いつなげる。
お読みいただきありがとうございます。
ラスボスを倒したので、後はハーレムの建設に邁進します。




