表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/72

23 老害をぶっ殺せ

 ◆◇◆


 俺たちは皇帝の船の廊下を斬り進む。

 護衛の兵士がたくさんいる方に皇帝がいるはずだ。


「でやあああっ」

 レオーナは豪快に大剣を振り回している。目いっぱい手を伸ばしても剣先が壁に当たらないほど廊下は広い。


「ていっ」

 俺も【剣聖】能力を持っているから、ロングソードで兵士を斬り倒す。


 前方に大きな扉と、何十人も兵士が剣を構えているのが見える。


「陛下、あの奥に皇帝がいそうです」

 レオーナが振り返って叫ぶ。


「よし、ここで使っとこう。【全員攻撃力向上】」

 俺は両手を上にして唱える。光のドームが俺たちを包んだ。


「ありがとうございます。力がみなぎってきます」

 レオーナが微笑む。


 【全員攻撃力向上】の効果で俺たちの攻撃力は1.5倍に。俺とアイリの攻撃力は大したことがないが、レオーナは絶大だ。


 皇帝と戦う前にレオーナの攻撃力をアップさせておいて、いきなりぶちかます。

 絶対にこの世界で最悪の老害をぶっ殺してやるのだ。


 レオーナが大剣で扉を一閃。

 上下に両断された扉を蹴破って中に入る。


 そこは体育館ほどの広さだ。

 蝋燭がシャンデリアや壁にたくさん灯されている。

 光で、裸の女性が床の上に大勢寝そべっているのが浮かび上がる。みんな(ヤク)を打たれたみたいにトロンとした表情。


 部屋の奥には大きなベッド。

 ここは皇帝のハーレム……


 ベッドのそばに背の高い男が立っている。メイドが男に黒い鎧を装着させている。


 白髪に白い顎髭。聞いていたとおりの皇帝の人相だ。俺たちが船内で暴れ回っている音が聞こえても逃げ出さずに、待ち構えてやがった。


「よく来たな、ノルデン王よ。美女を連れて来てくれて感謝するぞ。そやつがアイリだな」

 皇帝の声はでかい。

 離れていても威圧されるように響いて来た。


 部屋にいるのは女性ばかり。皇帝一人で俺とレオーナと戦うつもりらしい。


「皇帝、私が相手だ」

 レオーナが前に出て大剣を構える。


「頼んだよ、レオーナ。もっかい【全員攻撃力向上】!」

 俺が唱えると、レオーナも光のドームに包まれる。これでレオーナの攻撃力は2.25倍になった。


「ほう、女の大剣使いとは珍しい」

 皇帝は感心しながら壁の方に歩いていく。


 壁には剣や槍、色々な武器が掛けられている。

 皇帝は大剣の柄を右手で握る。


「大剣使いなのか」

 レオーナが驚いている。


「ククク、ワシはあらゆる武器を使いこなす。一つの武器すら極めることができね凡人と一緒にするでない」

 皇帝は大剣を右手で軽々と持って、歩いてくる。


「私はこの大剣を極めるため血の滲む修練をして来た。女だからと舐めさせはしない」

 レオーナが大剣を振りかぶる。


「来い、女」

 皇帝が左手の人差し指でクイクイと誘う。


「でやああああああっ」

 レオーナが気合いとともに駆ける。


 大剣が皇帝に振り下ろされる


 ギンッ


 火花が散る。

 皇帝は大剣を頭上で横にして、レオーナの大剣を受け止めた。


 レオーナはすぐに構え直して、今度は皇帝の胴を横薙ぎに

 キンッ


 皇帝は大剣を縦に構えて防ぐ。


「てやあっ」

 レオーナは裂帛の斬撃を連続するが、皇帝は全て軽々と防ぐ。

 齢80のジジイとは思えない動き。


 レオーナは後ろに跳びずさって間合いを取る。


 皇帝はニタァと気持ち悪い笑みを浮かべる。


「女にしてはまあまあの太刀筋だ。気に入ったぞ、ワシの側女にしてやろう」

 皇帝の周りに、黒いオーラが立ち上って見える。


 目の錯覚じゃない。

 本当に煙みたいな瘴気が皇帝から放たれている。

 噂のとおり皇帝は邪竜の子なのか……


「だ、誰がお前なんかの女になるか」

 レオーナは心底気持ち悪そうにする。


「ククク、ツンとした女はたまらない。そなたは記憶を改竄されて、ワシを求めずにはいられなくなるのだ」

 皇帝の周りで、トロンとしている女たちはみんな記憶を改竄されたのだ。


 俺たちが負けたらレオーナとアイリは身も心も皇帝の物に。

「頼む、レオーナ。勝ってくれ」


「汚らわしい。死ねえええ」

 レオーナは怒気を爆発させて、斬りかかる。レオーナはきっと【弱点攻撃】の能力を発動している。


 皇帝に弱点があるのかわからないけど、あったら高確率で弱点にヒットする。弱点をついた攻撃はダメージが通常の2倍。今のレオーナは【全員攻撃力向上】でパワーアップしてるから、合計で4倍以上の威力になる。


 突進の勢いとともに振り下ろされた大剣は、皇帝の大剣をへし折って、皇帝を真っ二つにしそう。


 だが皇帝の頭上で受け止めた大剣はびくともしない。

 さらに黒いオーラが動いて、レオーナの静止した大剣を包む。


 シュウウウウ……

 レオーナの大剣が酸に触れたように泡立ち、溶けていく。


「なっ――」

 驚愕するレオーナ。


 大剣を包む黒いオーラがレオーナの手にも迫って来る。

 慌ててレオーナは大剣の柄を離した。

 大剣はジュワッと消滅する。


「ふん」

 皇帝が瞬間移動したような動きで、レオーナの眼前に。

 レオーナの腹に、皇帝の左拳がめり込む。


「かはっ」

 レオーナが、くの字に折れ曲がった。


「少し待っていろ。ワシの大剣をそなたの股にぶちこんでやるからな、ククク」

 皇帝がセクハラ発言。老害って本当に最悪の存在。


 レオーナは意識を失ったようで、床に崩れ落ちる。


 ノルデン王国最強の戦士が、手も足も出ずに敗れた……

 俺は戦慄して立ちすくむ。


 本当に皇帝は邪竜の力を受け継いでいる。異次元の強さだ。

 皇帝を奇襲して討ち取るのが、唯一の策だってのに……

 レオーナがかなわないんじゃ、俺がかなうはずない。


「【神雷】」

 俺は恐怖を振り払うように叫ぶ。雷系の最上級だ。室内で使えるのかは知らんけど俺が使える攻撃魔法はこれだけだから。


 天井を突き破って雷が降り注ぐ。

 閃光で目が眩んだ。

 衝撃波と煙が俺とアイリの間を吹き抜けて行った。


 煙と舞い上がった埃が落ちついた後、皇帝が無傷で立っていた。

 黒いオーラが皇帝だけじゃなく、寝そべっている女たち、レオーナまでも包んで、雷から守っていた。


「ククク、ワシにそんなカス魔法が効くと思ったか」

 皇帝がせせら笑う。


 ヤバい――

 俺に残っている戦う手段は【剣聖】能力で斬り合うのみ。


 皇帝が大剣を持って歩み寄って来る。

「さあやるか、ノルデン王よ。そなたを斬って、王国の美女全てを寝取ってやろう」


「く、やるしかない」

 俺はロングソードを構える。


「アイリは下がってて」

 振り返って叫ぶ。


「私、陛下が負けたら自決しますっ」

 アイリが思い詰めた顔で告げる。


「えっ!?」

 振り返ってアイリを見た。

 アイリはドレスの腰の辺りからナイフを抜いて見せる。


「陛下は私のことは心配せず、戦ってください」


「い、いや、それは」

 俺は戸惑うけど、アイリに死ぬなとは言えない。

 皇帝にアイリを汚されたくない。


「女は強い男の子を産みたがる。ワシの強さを見て、気が変わるだろうて」

 皇帝は大剣を捨て、壁の方に歩いて行く。掛けられたとロングソードを手に取る。


 俺と同じ武器を選んで、なおかつ凌駕する。武器に依らない強さを見せつけるのが皇帝流ってか。


 黒いオーラを漂わせて、皇帝が近づいてくる。

 皇帝は余裕たっぷりに右手だけでロングソードを持ち、薄笑いを浮かべている。


 勝てる気がしない。でもやらなくちゃ。

 俺は意を決して斬りかかる。


 【剣聖】能力発動。

 俺の体は勝手に動く――

 キンキンッ


 俺の目には止まらない速さで剣が打ち合わされる。

 眼前で無数の火花が散る。

 互角に戦えているのか、と思った瞬間――


 俺のロングソードが跳ね上げられた。

 胸に痛みが走る。

 咄嗟に後ずさって胸を見る。横に斬られて、血が流れていた。


「くっ――」

 苦痛にうめく。


 皇帝は【剣聖】能力に対してさえも隙を突いて斬ってくる。

 皇帝は本気出してない感じなのに、はるかに俺の上を行っている。俺なんかいつでも殺せるが、自らの強さをアイリに見せつけてからにしようというのだ。


 俺が他に使える能力は【捨身の攻撃】だけだ。

 自爆で、皇帝と差し違えるしかないか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ