22 悪役令嬢 VS クール系
◆◇◆
甲板で、ローブ姿のルナとマルーが対峙。
マルーが右手の平をルナに向ける。右手は灰色の光に包まれていく。
「アルティマ」
万能属性の最強クラスの単体攻撃魔法を唱えた。灰色の光線がルナ目掛けて放たれる。
ルナは身じろぎせず、光線に胸を撃ち抜かれた。ルナは膝を突き、ゆっくりと甲板に倒れ伏した。
だが、すぐにルナは両手を突いて、上半身を起こす。顔を上げると、両目が青く光っている。
「ちっ いきなり使ってきたわね。アンデッド化する最終奥義」
マルーが舌打ちする。
ルナは【死を喰らう者】能力を持つ。即死する攻撃を受けた場合に自動的に発動。すでに死んでいるからこれ以上は死なない。効果が切れるまで無敵状態と化す。
また、自らを殺した魔法を一時的にコピーし、使うことができる。しかもMPは無限だ。
ルナが立ち上がり、マルーに右手の平を向ける。
「アルティマ」
「アルティマ」
マルーも同時に放つ。
灰色の光線が二人の真ん中でぶつかり合い、爆発。
衝撃波が巻き起こって、二人とも腕で顔を覆った。
「アルティマ」
再びルナが放つ。
「くっ アルティマ」
マルーもすぐに反応。
また二人の間で爆発が起こる。
「私のMP切れを狙っているわけね。やだな」
マルーが美しい眉を寄せる。
アルティマのMP消費量は大きい。MPが無尽蔵じゃないマルーは、いずれMPが枯渇する。
「私も本気出さなきゃね」
マルーのローブを引き裂いてコウモリの羽が背中に生える。
「アルティマ」
ルナはマルーに答えず、淡々と撃つ。
「ふんっ」
マルーは鼻を鳴らすと、羽で飛び上がる。マルーが立っていた場所を灰色の光線が通り抜けた。
マルーはローブの裾をまくり、右手をポケットに突っ込む。
「食らいなさい」
マルーはルナにキラキラ輝く物を投げつけた。
魔法石だと、ルナは見てとった。
攻撃魔法が込められている――!?
「アルティマ」
ルナは魔法石を吹き飛ばす。
ガリッ
石が砕ける音
「【蘇生】」
女の声がルナに聞こえた。
天から眩い光の柱がルナに降り注ぐ。
「そんな……」
呆然とするルナ。
ルナは光に包まれ、やがて光が体に吸い込まれていった。
ルナの青い目の輝きも消えてしまう。
「ふふふ、思ったとおり。【蘇生】がルナの能力の弱点だったね。死んだなら、生き返らせればいい」
マルーが笑いながら甲板に降り立つ。
「かはっ」
ルナは血を吐いて、うずくまった。猛烈な疲労感に襲われていることが見て取れた。【死を呑み込む】を使うと効果が切れた後、反動に苦しむことになる。
「古代魔法の文献を読んでたら、あったのよね。一度死んで無敵状態になる魔法。対抗策も載ってたよ。帝国の大神官に【蘇生】を魔法石に詰めておいてもらったってわけ」
マルーは得意げに解説する。
ルナとは必ず戦うことになると予想していたから、策を用意しておき、見事に成功した。
もはやマルーが大優勢なのは明らか。ルナは一定時間、【死を喰らう者】を使えない。その間にマルーはルナを本当に殺す。
ルナがいきなり切り札の【死を呑み込む】を使ったことからして、もっと強い能力や魔法を持っていないのだ。
王と閨をともにすればいくらでも能力を授与してもらえるが、ルナは閨をともにしていない。あるいはもうルナに授与できる能力はカンストしてしまっているのだろう。
疲労で立ち上がることもままならないルナ。
マルーはルナのそばに歩み寄って、見下ろした。
「なぶり殺しにしてもいいんだけど、時間がないのよねぇ。王様が皇帝に殺されちゃうから。王様が死ぬ前に一度くらいは私を抱いてもらって、新しい能力をもらっときたいしー」
マルーは右手の平をルナにかざす。
「アルティマ」
防御不能の万能属性魔法がルナを貫く。
「【完全反射】」
灰色の光線がルナの体に当たったと思った瞬間、そんな女の声が聞こえてきた。
そして光は折れ曲がり、マルーに向かってくる。
「くはっ」
灰色の光がマルーの胸を貫く。
風穴が開いて、マルーは後ろ向きにゆっくりと倒れていった。
甲板に倒れて、白目を剥いたマルー。
「はあはあ」
ルナは荒い息をして立ち上がる。
すごい……陛下の作戦どおりだった
ルナはローブで口元の血を拭う。
マルーは【死を喰らう者】の対策を用意しているはずと、王様は予想していた。
ルナと閨をともにして、マルーの裏をかく能力を授けておく。
【完全反射】は一時間に一度、心で念じた時しか使えないが、全ての魔法を反射する。万能属性のアルティマであってもだ。相手が最強クラスであればこそ、至近距離で相手が油断しているタイミングで使えば自滅させられる。
「本当に陛下はすごい人」
ルナは感謝の気持ちが溢れ出して独り言を呟く。
マルーは防御不能の魔法を自ら受けて、絶命した。
ルナはよろよろと前に歩き出す。先に行った王たちを追いかけて加勢したい。
だが、力が残っていなかった。つまずいて倒れてしまった。
「王様……ごめん」
お読みいただきありがとうございます。
悪役令嬢はただ悪役の意味で使っています。
悪役令嬢ものを期待された方には申し訳ございません。悪役令嬢ものはいつか書いてみたくて勉強中です。




