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17 俺の子を授かる女性たち

 ◆◇◆


 1ヶ月ぶりの帰国。

 俺の帆船は、ヒルデガルドの海賊船と一緒にノルデン湾に入って行く。


 やれやれ大変な旅だった。途中、何度も海戦を勝ち抜いて、なんとかハルザ市の女の子500人を無事に避難させることができた。


 彼女らは王国の空き家に住んでもらう。男全員が呪いで死滅しちゃったから、我が国は空き家だらけ。

 呪いは、男がのたうち苦しんでから、体が消えていくというものだったらしい。遺体が残らないのは、遺族にとっては悲しい。だが死体が消えてくれて、事故物件にならずに済んでいる。


 彼女たちが家に荷物を置いたら、公衆浴場の温泉につかって旅の疲れを癒してほしいと伝えてある。


 港に接岸した俺たちの船を市民や警備中の歩兵隊が迎えてくれる。


 俺は船から桟橋に降り立つ。


 桟橋ではビキニアーマー姿の歩兵隊副長サーシャがニコニコしている。ブロンドの長髪、色白巨乳で泣きボクロが印象的な美人。


「陛下、おかえりなさい♡」

 語尾にハートマークが付いて聞こえる。


「た、ただいま」

 なんか恥ずかしい。


 サーシャがお腹を撫でる。

「子供を授かりました。陛下の子です」


「う……」

 俺は絶句。


 横目で見ると、アイリも硬直している。


 サーシャとは子作りをしたけどさ。本当に妊娠しちゃった。うれしいけど、ものすごく恥ずかしい。


「お、おめでとうございますっ」

 気を取り直したアイリが祝福。


「はい、私、うれしくて、うれしくて」

 サーシャが涙ぐむ。


 未亡人で、死に急ごうとしてたからな。子供ができたら生きていこうって気になる。


「良かったよ」

 俺は、こういう時になんていうかわからない。


 父になるんだという感慨がすぐには湧いてこないけど、そのうち湧くのかな。サーシャと結婚して夫にならなくていいし、子育ては全くしなくていいらしいんだけど。


「陛下は本当に素敵な方。たった一回で、命中させてくださるなんて♡」


「ま、まあ俺が種無しじゃないみたいで良かったよ」

 ちょっと心配してたんだよね。

 もし俺が種なしだったら、「もう用はねえよ、この無能」って追放されてしまう。


 国中がハーレム地獄と化すのは大変だが、いまさら追放されるのは嫌だ。


「いいなあ。私も早くお子を授かりたい……とにかく良かった。この調子で、陛下のお子を授かる女性たちが増えていけば我が国の人口問題が解決されそうですね」

 アイリが歩きながら微笑む。本気で、王国の妊娠可能な女性たちみんなに俺の子を授けさせるつもりかよ……


「でもしかし、ますます責任重大になったな……」

 俺は身が引き締まる。

 女性たちに加えて、子供も守らないといけなくなった。


 帝国がハルザ同盟を攻め落とした。

 ハルザ同盟の艦隊を失った今、海上の勢力は帝国の圧倒的優勢に傾いている。

 帝国の侵攻は陸からじゃないく、海からのはずだ。


 もし負けたら……

 帝国に反逆する者の芽を摘むため、俺の子供は必ず殺される。

 それが世の習いというものだ。


 ◆◇◆


 王宮の執務室。

 帰国して一週間。

 俺は溜まっていた政務をこなしつつ、防衛線強化の指示を出している。


 陸路はともかく、海路はやはり戦力が不足していることが否めない。


 レオーナが駆け込んで来た。

「陛下、大変です。ノルデン湾に帝国の艦隊が」


「やはり来たか」

 俺は立ち上がる。


 ハルザ同盟を攻略した帝国軍は、ハルザ同盟の数百隻もの軍艦を接収する。

 今度はその軍艦を使って、ノルデン王国に攻め寄せて来る。


 一方で、ノルデン王国艦隊はわずか30隻ほど。ヒルデガルドの海賊船を加えても50隻ほどしかない。


 海戦力で圧倒する帝国軍は、こっちの艦隊を粉砕。ノルデン湾から上陸して、王都に攻め込んでくるだろう。


 俺は海で迎え撃つことは諦め気味。

 上陸しようとする奴らを水際で叩く作戦を考えている。


 味方の艦船は港の奥深くの基地に隠してある。


 王都には歩兵隊200人、魔法使い隊30人を配置。全戦力の3分の2だ。

 残りはノルデン隘路にいて、陸から帝国軍が攻めて来るのに備えている。


 ◆◇◆


 俺はノルデン湾に突き出る岬の付け根にやって来た。

 帝国軍が上陸する時の足場として使うと予想している。


 俺の後ろにはルナはじめ魔法使い隊とレオーナ率いる歩兵隊。

 帝国軍が近づいて来たら、魔法をガンガン放ったり、投槍で倒してやる。

 さらにゾフィーにゴーレムを際限なく作ってもらって、帝国軍を押し返すつもりなのだが……


 だが、帝国軍の船は近づいてこない。

 ノルデン湾の入口あたりで碇を下ろして、停泊している。


「なぜ攻めて来ないのでしょう? こちらを警戒しているのでしょうか」

 レオーナが怪訝そうにする。


 もしかして……

 俺は嫌な感じがした。


「オラは敵はちょっと休んでから攻めて来ると思うけどな。長いこと船に乗ってたから疲れたんだ」

 ゾフィーが思いついたことを言う。多分それは違う。


「海上封鎖だ」

 俺は恐れていたことが現実になりつつあることを確信する。


「本当ですか、陛下」

 レオーナが聞き返して来る。


「ああ。帝国軍は力押しはしてこないんだ。帝国軍の戦力は圧倒的だから、力押しでも勝てるんだけど損害が大きくなるから……俺たちを取り囲んで、兵糧攻めにすることにしたんだ」


 ノルデン王国は農地が少なく、食料を自給できない。

 輸入ルートである海上を封鎖されたら、俺たちは食料を手に入れられない。


 俺たちが飢えて、衰弱したところで、いよいよ帝国は上陸する。時間はかかるが、損害をほとんど出さずに勝てる方法を選択されてしまった。


 目下の俺たちの海戦力では海上封鎖を打ち破る方法はない


「ノルデン隘路の駐屯部隊から伝令です。帝国陸軍がノルデン隘路に現れました。その数、10万!」

 歩兵隊の女の子が走って来た。


 ざわっざわっ


 先の帝国軍の侵攻と同規模だ。しかも海軍と同時に。


「ただし今のところ帝国陸軍は攻めて来る気配はありません。お互いに攻撃魔法の射程外で睨み合っています」


「むう」

 陸と海で同時に攻めれば、恐らく帝国軍の勝ちだろう。でも攻めて来ない。


 やはり兵糧攻めだ。


 ノルデン王国に侵入する交通路は2箇所しかない。陸のノルデン隘路と海のノルデン湾。


 外敵が攻めて来るルートが限られるのは、普段は大きな強みだ。そこを集中的に守ればいいから。


 だけど逆に言うと、俺たちが撃って出るルートも限られる。

 他のルートから出て行って食料を調達できない。


 帝国軍が2箇所を封鎖して、守りに徹してやがる。ノルデン隘路の突破はきっと不可能なように、大量の矢や投石機、魔法使いが控えている。


 兵糧攻めをやられたらヤバいというのはわかっていた。対策を考えようとしたけど、思いつかなかった。

 せいぜい食料をたくさん備蓄しておくくらいだ。ハルザ同盟から食料を輸入しようとしていたところに仕掛けられてしまった。


 シーレーンのハルザ同盟攻略といい、海上封鎖の兵糧攻めといい、こちら弱点を的確に突いてくる。

 帝国にはよほど頭が切れて、こちらの内情に詳しい者がいる。


 マルーか……

 闇堕ちした女が思い浮かぶ。


 マルーはノルデン王国の没落貴族だったから我が国の事情に詳しい。


 帝国から手に入れた魔導書と魔法石で、ノルデン王国の男を死滅させる呪術を使った。

 マルーは帝国軍の一員のようなものだ。


 皇帝の腹心になって、入れ知恵しているのかも。

 こっちは帝国軍の内情がよくわからないから、情報戦でも負けている気分。


 しかし弱気になるわけにはいかない。

 なんとか包囲を突破する方法を考えないと。


 多分、帝国軍はすぐには攻めて来ない。沿岸の守りはレオーナに任せて、俺は王宮に引き返した。

 どうにか俺の子供も、産んでくれる女性たちも守らないと。

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