表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/72

16 妻との約束

 ◆◇◆


 その夜、船内の寝室。

 アイリと寝巻き姿でベッドに並んで腰掛けている。


「ヒルデガルドさんに【超絶性技】を使ったんですね」

 アイリには、ヒルデガルドが俺にメロメロになっている様子でバレてしまった。


「うう……仕方なかったんだ」

「もう、私だけに使う約束でしたのに」


「不感症のヒルデガルドをイカせるのが協力する条件だって」


「陛下は【超絶性技】なしで、十分上手ですよっ」


「んなわけないでしょ。俺自身は全く自信ないんだよね」


「ほんとです。でも今晩は【超絶性技】を使ってくださいっ 陛下は私のものですからねっ」

 アイリはヒルデガルドにやきもちを焼いて、拗ねている。


「わかったよ。使うぞ、【超絶性技】」

 言うのが恥ずかしいな。


「大好き♡」

 すぐにアイリが唇を押し付けてきた。


 ◆◇◆


 アイリは【超絶性技】を使われて、失神してしまった。

 ベッドに裸で仰向けになって、目を剥いてピクピク痙攣している。


 やりすぎちゃったかな。まったくすごい技だ。


「新しい能力【捨身の(ブローイン)一撃】(デスペレーション)を獲得しました。女性または自分に授与してください。考慮時間は3分です。時間を過ぎた場合は自分に授与されます」

 女の声が俺の頭の中に響く。


 アイリと閨をともにして久しぶりの能力獲得だ。【能力授与】ギフトは同じ女性と連続して閨をともにすると、新しい能力を獲得しない。


 このところヒルデガルドやミイナと閨をともにしてたから、アイリとの連続が途絶えていた。


 【捨身の一撃】は名称からすると、自爆攻撃だ。自分を犠牲にして、敵を倒す。

 アイリと閨をともにすると補助系の能力ばかり獲得する。攻撃に使える能力は初めてだ。

 今までとは傾向が違うような……


 でも【捨身の一撃】は補助系と見做せるのかも。自分を犠牲にして味方を助けるわけで、究極の補助系能力。

 きっとものすごい威力のはずだ。自分の命を引き換えにするから、一撃でどんな強大な敵でも倒しちゃうくらいの。


 アイリに授与する? それとも俺?


 迷う余地などあるわけない。


「俺に授与」

 心の中で唱える。


 俺は光に包まれ、「【捨身の一撃】を授与されました」と女性の声が聞こえた。


 アイリはまだピクピク震えている。

 相談せずに決めてしまったことをアイリは怒るだろうか。


 だが相談しても結論は変わらない。

 アイリに【捨身の一撃】を使わせるわけにはいかない。アイリは優しい子だから、ノルデン王国のみんなを外敵から守るためなら何でもする。自分が犠牲になることも厭わない子だ。


 でもアイリに【捨身の一撃】で、敵と差し違えさせて、俺が生き延びるなんてしたくない。

 俺こそ犠牲になって構わないから、愛するアイリには生きていてほしい。


 しょせん俺の命はアイリに拾われたものだ。アイリが転生させてくれなかったら次元の狭間を彷徨っていただけ。

 アイリと結婚して、王様にしてもらった。ハーレムも作ってもらって、1000人くらいの女性と閨をともにした。


 俺なんかにしては恵まれすぎだ。

 我が生涯に一片の悔いなし。


「あ、あれ……私どうしたんだろ」

 アイリがハッとして目をこする。


「すまん、やりすぎた」

 【超絶性技】を発動すると、俺の体が自動的に動く感覚になる。俺のせいじゃないとも言えるけど、気が咎めるから謝っておく。


「い、いえ、気持ち良すぎました……天国みたいな光の世界に私、行っちゃってましたっ」

 アイリが顔を真っ赤にする。


「臨死体験をしてたとはね」

 苦笑してしまう。男はそこまで気持ちよくなることはないからね。良かったよ。


「先生は罪な人です。私をこんなに好きにさせて」

 アイリが俺にぴとっとくっついてきた。


「大好きだよ、アイリ」

 俺はアイリの背中を撫でてやる。


「先生が素敵すぎて、私だけのものにできないのが悲しいです。ぐすっ」

 アイリが鼻を啜る。ハーレム王国と化しているからな。


 しかも新婚旅行ではアイリと二人きりのはずが……戦乱に巻き込まれて、ミイナとヒルデガルドと関係を持つことになった。500人くらいの少女をお土産みたいにお持ち帰りすることになっちゃったし。

 

 わずらわしいことはもうたくさんだよ。

 本当に国を捨てて、アイリと2人だけの世界に行きたい。


「そ、それで、新しい能力は獲得したんですよねっ もう3分経ってるから、陛下自身に授与したんですか」

 アイリが確認してくる。

 聡明なアイリは閨をともにすると、能力を獲得するって気づいていた。


「ああ」

 俺は【捨身の一撃】を自分に授与したことを話す。


「なんで!? なんでっ!? なんで先生に授与するんですかっ!?」

 アイリが血相を変える。俺を先生と呼ぶ時はアイリは本音で話している。

 お愛想で言っているんじゃない。本気で俺が【捨身の一撃】を使おうとすることを怒っている。


「言うまでもないだろう。みんなのために犠牲になるのは俺の役目だ」

「いいえっ 私なんか、先生がいなければダメな子。先生はみんなに必要とされてますっ 死ぬなら私の方ですよっ」


「お、落ち着いてよ。実際に【捨身の一撃】を使うわけじゃないんだから。死ぬ前提で話す必要はないよ」

「そ……そうですか……ほんとに?」


「うん。俺だって自爆するつもりはないよ。死んだら負けだと思うから、どんなことをしてでも生き延びるつもり」

「絶対ですよ。先生が死んだら、私は生きていけませんから」

 アイリは悲し気にうつむく。


「ああ。約束するよ。【捨身の一撃】は使われることのない能力だ」

「良かった……先生は約束を守ってくれる人だから、大丈夫ですよね」

 アイリが、ほっとする。


 確かに俺はアイリとの約束を守ってきた。アイリと結婚して、国を守るっていう大事な約束は達成した。

 超絶性技を他の女に使わないっていう約束を破ったのは、些末ということでカウントに含めてないでいてくれたようだし。


 この場ではなんとかアイリを鎮めたものの、俺はひしひしとヤバい状況になっていると感じている。

 

 ハルザ同盟の全都市を陥落させた帝国軍は、必ずノルデン王国に攻め寄せてくるはずだ。

 ノルデン王国は孤立無援。

 

 帝国軍は前回の侵攻が失敗したから、同じ過ちは繰り返さない。攻め方を変えてくるから、こっちが対策を立てるのは容易じゃない。

 

 俺は王様として約1万人の女性を守る責務がある。

 いよいよ追い詰められた時、俺の命一つで女性たちを守れるなら【捨身の一撃】を使うかもしれないなと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ