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11 女海賊

 ◆◇◆


 女海賊ヒルデガルドが面会に応じるというので俺は港にやって来た。


 海賊らしく頭巾をかぶった男が右の人差し指でクイクイする。

「来な。お頭がどんな男か見定めてやるそうだ」


 振り返るとアイリが不安そうに俺を見つめている。


「行ってくる」

 簡単に別れを告げて歩み出す。


 何があるかわかんないから、「大丈夫、心配しないで」と気休めは言えない。


 俺は小舟に乗って、沖合のヒルデガルドの船に連れて行かれる。

 案内役の海賊の男たちが笑っている。


「お頭は気が短いからな」

「へへ、ちょっとでも気にくわなかったらサメの餌にされちまうぜ」


 一体、どんなことをして俺を試すんだろうか。非常に不安感が高まる。


 船腹に降ろされたロープをよじ登って甲板に立つ。

「来な、お頭は船長室だ」


 俺は船内に案内された。


 ◆◇◆


 船長室に入る。

 俺の背後で扉が閉められた。

 室内は蝋燭(ろうそく)がテーブルの上に一本灯されているだけで、夜のように暗い。


 赤い髪の女がベッドに腰掛けていた。左目は眼帯をしているのが印象的。海賊の頭目らしく黒いコートを着ている。年は25くらいだろう。妖艶な美女だ。


「へえ、可愛い男だね。帝国軍を撃退したっていうから、大した豪傑だと思ってたけど」

 ヒルデガルドは微笑を浮かべている。


「ノルデン王だ。話す機会を与えてくれて感謝する」

 俺は内心では怖くてたまらないけど、堂々としているよう心掛ける。


「ふふ、あんたに協力してやってもいいよ」


「本当か」

 思ったより楽勝に交渉が成立しそうで、声が弾む。


「ただし、条件がある」

「ん、何だ、報酬か」


「もちろん金はたっぷりともらうけどね……あんたがテスト合格することが必要だよ」

 ヒルデガルドは俺の全身を舐めるように視線を動かしている。


 やっぱり俺は何かしないといけないのか。そう簡単にはいかないよな……


「何をさせられるんだ」

 サメと素手で戦うとかか。あるいは鯨を捕らえる? 【神雷】の能力を使えば、鯨をきっと倒せるぞ。


「ふっ アタシをイカせてみな」

「は……」


「このベッドでアタシを抱いてみなよ。アタシをイカせられたら、あんたの勝ち」

「まぢで」


「言っとくがアタシは不感症でさぁ 子分どもに何をさせてもちっとも気持ちよくなりやしない。悪いがあんたに勝ち目はないよ、ふふ」

 ヒルデガルドは軽く笑う。

 俺を困らせて、楽しんでいる。


 不可能な無理難題を押し付けて、俺を殺す理由にしようというのだ。品の無さからしてクソゲー感が漂ってるな。

 しかも女はイク、イカないをいくらでも演技できると聞いたことがある。ヒルデガルドがたとえイッても、イッてないと言い張れてしまう。圧倒的に俺が不利な無理ゲーでもある。


「さ、アタシをあんたの好きにしていいよ」

 ヒルデガルドはベッドにコテンと仰向けに倒れる。マグロになるつもりらしい。俺に全部やらせて、俺のテクを見定めようというのだ。


 どうする……どうする……

 アイリには絶対に使っちゃダメと言われたけど……


 俺には大勢の命が託されている。

 使うしかあるまい。


 【超絶性技】発動――


 ◆◇◆


「はあはあ、これがイクッてことなのね……」


 ベッドでヒルデガルドは裸であおむけになっている。身につけているのは左目の眼帯だけ。ヒルデガルドの黒いコートの下には、推定Iカップの巨乳が隠れていた。


「あんた何者なの アタシを何度もイカせるなんてさぁ」

 上気したヒルデガルドが右目で俺を見上げてくる。俺もいつの間にか裸になっていた。


「ただの歴史オタクだ」

 偉ぶらずに、そっけなく答えておく。【超絶性技】は俺自らが体得したもんじゃない。

 エッチな子のアイリと閨をともにして獲得したもの。まさか役に立つ時が来るとは思わなかった。


「? さすがはハーレム王ね。国中の女の子とやってるんだったら、経験豊富だわ」

「いや、まだ国中の子とはしてないから」

 俺と閨をともにしたのは1000人くらいだろう。それでもすごい数だけどね。


「もうアタシ、あんたなしじゃ生きていけないよ」

 ヒルデガルドが起き上がって裸で抱きついてくる。

 唇を押し付けられた。


「んっ」

 俺はまだ【超絶性技】の効果が残っているみたいで、勝手に舌がヒルデガルドの口に入っていく。


 ヒルデガルドは愛おしそうに舌を絡める。

 しばらく夢中で味わってから、ヒルデガルドは口を離した。


「アタシの負けだよ。約束どおり、あんたたちをノルデン王国に連れて行く」

「おお、ありがとう」


「新しい能力【火嵐】(ファイヤストーム)を獲得しました。女性または自分に授与してください。考慮時間は3分です。時間を過ぎた場合は自分に授与されます」

 女の声が俺の頭の中に響く。


 火属性の能力だ。名前からすると、火でグループ攻撃する魔法。海賊が持ってたら、敵の船を焼き払うのに便利そう。


 ヒルデガルドに授与していいのかな。能力を授与してから裏切られると痛いんだけど。

 ヒルデガルドは俺にメロメロになってるみたいだけど、演技じゃないよね。


 うーん……よし。

 ヒルデガルドに授与。

 俺はちょっと迷ってから、念じた。


「え、アタシに火嵐を授与って」

 ヒルデガルドに女の声が聞こえたようだ。


「俺と閨をともにした相手には能力が授与されるんだ。俺なんかと寝た代償って言うか」

 説明するのが恥ずかしい。

 女の子は俺とは仕方なく寝ている。せめて見返りをあげないとね。


 能力は俺自身に授与することもできるが、それは内緒にしとく。


「あ、ありがとう」

 ヒルデガルドが顔を赤くして素直に礼を言う。年上の女海賊がちょっとかわいく見えてしまう。


「どういたしまして。道中、帝国軍が襲って来そうだ。能力を役立ててもらうことになる」


「任せときな。しかもアタシたちの一味は今後、ノルデン王国をアジトにしてやるよ」


「へ、どういうこと」


「ノルデン王国の周りの海で海賊をやるってことさ。分取った御宝は、王様に献上してやるよ」

 ヒルデガルドは恩着せがましい。


「ハルザ同盟の海は、帝国に支配されて自由にやれくなるから、ノルデン王国に来るってことなんだろ」

 俺はヒルデガルドの本音を見透かした。


「ま、そうだ、はは。帝国は強欲な奴らばかりで、ムカつくからな。王様が嫌なら、別の国に行くが」

 ヒルデガルドは開き直っている。どこにでも行けるんだぜというのが、何者にも縛られずに生きている海賊らしい。


「ぜひノルデン王国に来てくれ。歓迎する」

 俺は右手を差し出した。


 ヒルデガルドは姉御肌の性格だ。仲間になってくれたら心強い。


 それにノルデン王国の海軍は、30隻ほどしかいなくて弱体。海賊船が何十隻か加わってくれるのは大きい。


 ヒルデガルドと握手する。

「アタシたちはノルデン王国から、ちょい離れた島をアジトにする。荒くれ男たちには、ノルデン王国に立ち入らないようきつく言い聞かせておくからな」


「え、そうなんだ」

「なにしろ、あんたのハーレム王国だからな。男がいちゃいけないだろ」

 ヒルデガルドが含み笑いする。


「別にいいんだけど……」

 連夜、俺一人で授精をさせられているのはしんどいのだ。


「でもアタシだけは、あんたが恋しくなったら王宮に行かせてもらうからな。あんたなしじゃ生きられない体にされちゃったから責任取ってくれよ」

 ぴとっと頬をくっつけられた。


 海賊の親分も一人の女なんだな、と思った。


 ヒルデガルドは俺にぞっこんになってしまったみたい。

 海賊一味に協力してもらう大役をなんとか果たせて良かったよ。


 なんか楽勝過ぎて、こんなんでいいのかという気がする。


 ……

 ま、いっか。

 俺は前世を通じて苦労ばっかりして来たからな。

 J国の苦労しなきゃ仕事じゃないって方が間違ってるんだ。


 人生の厳しさはもういいですって感じなんで、たまには楽をさせてもらっておこう。

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