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7 異世界の黒ギャル

 ◆◇◆


 船がハルザ港に停泊。

 岸壁にかけられた板を通って、俺とアイリは船の外に出る。

 俺は白い王様服。アイリは水色のドレス。国家元首としての正装である。


 盛大なファンファーレが鳴り響く。

 歓迎の演奏だ。


 港の広場で大勢の人が横に並んで拍手をしている。ハルザ市の人々が俺たちの来航を出迎えてくれたことに感激する。


 予めキキィが全世界瞬間移動でハルザ市に行って、俺たちの訪問を伝えておいてくれが、こんな盛大な歓迎を受けることになるとは……


 俺はアイリと手を繋いで、列の真ん中の方に歩いて行く。

 向こうから白髪まじりの紳士が歩み寄ってくる。50才くらいで上等なスーツを着ている。

 ハルザ市長のベルトラム・フォーゲル氏だ。キキィが外交交渉を行った相手。頭がとても切れるが、温厚な人柄だと聞いている。


 フォーゲル市長が笑顔で右手を差し出してくる。

「ハルザへ、ようこそ」


 俺と市長は固く握手をする。

「援軍の艦隊を派遣して、我が国を助けていただいたことを心から感謝しています」


 本来俺は堅苦しい儀式が苦手なのだが、王様として堂々とした振る舞いを心掛ける。


 ハルザ同盟が援軍を寄越してくれなかったら絶対に負けていたから、本当に感謝している。


「なに、我々は商人ですから、儲かると思った方に付いただけのこと。ノルデン王国に賭けたのは大当たりでした」

 フォーゲル市長は恩を着せるつもりはないという口ぶりだ。


 ハルザ市は大商人の組合が市政を牛耳(ぎゅうじ)っている。フォーゲル市長も大商人の一人なのだ。


 男が死滅したノルデン王国に味方するのは、非常に勝率の低い賭けだったと思う。リスクが大きいことは承知の上で、ノルデン王国が存続した場合に大きなリターンを見込んでいた。神聖ロマン帝国北方艦隊を壊滅させ、海で自由に交易をし続けられる、と。

 商人らしい冷静な打算のおかげで、ノルデン王国は救われたわけだ。


「ノルデンの鉱業は復活しつつあります。鉱物の輸出や、食料の輸入でハルザ同盟のお世話になりますよ。そもそも我が国では、船を作ることもできませんからね」

 造船技師の男が死滅しちゃったからね。今ある船はゴーレムで動かせるけど、新しい船をゴーレムだけでは作れない。


「ははは、ハルザ同盟が何でもお売りしますよ」

 ノルデン王国の復興需要でハルザ同盟はボロ儲けだ。


 なお俺と市長の会話は、この世界の共通語であるロマン語でなされている。支配者層ならロマン語が話せて当然らしく、俺はこの世界に転生した際に挿入(インストール)されていた。おかげで勉強の苦労なく話ができてしまう。


 市長の隣に、女の子が歩み出て来る。

 17才くらいの小麦色の肌。顔の彫りが深い美少女だ。長い髪の毛も黒色。目の色は青だ。純白のドレスが体の色とコントラストをなしていて美しさが引き立っている。ドレスは胸の谷間が強調されていて、かなりの巨乳だ。

 とてもエキゾチックな感じ。俺が転生する前の世界でいえばインド系の女性を思わせる。


「よっ王様、よろー」

 少女はニコニコして右手を振りながら、友達感覚の気さくな挨拶をする。

 態度はまるで黒ギャル。この子は一体……?


「私の娘のミイナです」

 市長の言葉で、俺はミイナと市長を見比べてしまう。


 市長は色白。ノルデン王国同様に北国のハルザ市は日に焼けない気候だ。なぜミイナは異国の人のように色黒なんだろう。


「ははは、驚かれているようですね」

 市長が笑う。


「失礼しました」

 俺は顔に驚きが出てしまっていたらしい。


「私は若い頃、自ら南方に交易に行っていました。南の国で女性と恋に落ちまして、そして授かったのがミイナというわけです」

 市長がちょっと恥ずかしそうに話す。今は市長として責任ある立場のオジサンだが、血気盛んな時期があったようだ。


「まあ、なんてドラマチック。奥様もミイナちゃんも連れて帰られたんですね」

 アイリが市長の恋物語に興奮している。


「ええ。ですが妻は他界しておりましてな。ミイナが代わりに我が国のファーストレディを務めております。母親がいなくて寂しい思いをさせないようにしているつもりですが……父親では行き届かぬところもあります。至らぬ子ですが、どうかお付き合いをよろしくお願いいたします」

 市長が苦笑している。ミイナの(しつけ)に苦労している感じがひしひしと伝わって来る。


「こちらこそよろしくお願いします」

 俺はミイナに軽く頭を下げる。


「にひひ」

 ミイナがはにかんで見せる。笑顔がとても可愛い子だ。

 俺は堅苦しいのが嫌いだから、ミイナみたいな子は親しみやすくていい。


 …………

 ぶっちゃけ俺は黒ギャルが好きだ。


 前世で黒ギャルはほとんど絶滅していた。

 俺が教師として勤めていた教育崩壊校ですらも、黒ギャルはいなくなっていた。いなくなって初めてわかる黒ギャルの魅力。黒ギャルが存在した昔を懐かしんでいたものだ。


 今どきの女子は、外見が同じようで、猫をかぶって男に媚びる量産型女子と呼ばれる一種類ばかりになってしまっていた。

 黒ギャルのズケズケ言う口調が、ああ何と愛おしいことか。


 ノルデン王国の女性は全員色白で、気品のある人が多かったからな。ミイナを非常に新鮮に感じる。


 ミイナは俺の顔をじろじろ見ている。


「俺の顔になんかついてる?」


「ノルデン王国の危機を救った王様って、化け物みたいに強そーな男を想像してたんだけどなー」


「はは。俺は弱そうだよね」

 照れて後頭部に手をやる。


「ううん。なんかやさしそーな人ってゆーか。本当に強い男ってかんじー」

 ミイナが首を軽く振る。

 

 同盟相手のファーストレディに与えた第一印象としては悪くないようで、俺はホッとした。


「なんかヤバい。どストライク」

 ミイナが視線を逸らして呟いた。

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