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5 初夜

 ◆◇◆


 慌ただしい一日を終えて、俺は王様の寝室に。

 

 キングサイズのベッドには天蓋(てんがい)が垂れ下がっている。

 枕元の燭台(しょくだい)の明かりだけだから、室内は暗い。


 俺はバスローブのような寝巻を着て、ベッドの上でちょこんと三角座りをしている。

 右隣には同じくバスローブ姿のアイリ。


 初夜だ。


「これから陛下には、たくさんの女性と(ねや)をともにしていただきます。ですが、最初は私にしてください。お願いですっ」

 アイリは懇願した。


 アイリは俺のことを先生ではなく、陛下と呼ぶようになっている。


 童貞だから、俺は緊張しまくり。

 アイリもドキドキしているのが伝わって来る。


 何か話さなくちゃ……


「あ、あのさ、エッチなことしたら子供ができちゃうんだよね」

 俺はよりによって生々しいことを口走ってしまう。


「ぷっ 何を当たり前なことを」

 アイリが吹き出している。


「いやいや、子供ができちゃまずくない? 今は大変な時だしさ」

 恥ずかしいので言葉を重ねて言い訳する。


「ご安心ください。避妊の薬草を煎じて飲んでおります」

「へ、そんなのがあるんだ」


「私、陛下のお子をいっぱい産みたい。ですが今は国の存亡が懸かっていますっ」

「全くその通り」


「私は陛下とともに国を率いねばなりませんっ 残念ですが、妊娠はお預けです」


 ホッとする俺。


「ですから安心して、たっぷりと私を可愛がって下さいね」

 アイリが抱きついて来る。


「本当に俺でいいの?」

 結婚しておいて、今さら確認する。


「先生がいいです♡」

 アイリは本音で話す時は、俺を先生と呼ぶようだ。


 ◆◇◆


 ベッドのシーツが赤く染まって、アイリは恥ずかしそうにしていた。

 俺はアイリと一緒に童貞と処女を卒業したのだ。


 横になって、感慨にふけっている俺。


「新たな能力【催淫(アフロディジアック)】を獲得しました。閨の相手または自分に授与してください。考慮時間は3分です。時間を過ぎた場合は自分に授与されます」

 俺は女性の声が聞こえた。耳に入って来たんじゃなく、頭の中に響いてくる感じだ。


 俺は、がばっと跳ね起きた。

 能力授与のギフトが発現したんだ。


「どうかされましたか、陛下」

 カバーに目元まで隠れて、恥ずかしそうなアイリが尋ねてくる。


 俺は【催淫】の能力を獲得したことを伝えた。

 言うのが恥ずかしい。どうしてエロスキルばっかりなんだ。

 初夜で味をしめたみたいじゃないか。


「催淫はつまり、男性や女性をいやらしい気分にさせるってことですねっ」

 アイリはなぜか興奮。

 カバーを掴んだまま上半身を起こす。


「使い道あんのかね……」

「ありますよっ ぜひ私に授与してくださいっ」


「えっ?」

 俺はびっくり。

 アイリは清純派のイメージがある。すでに俺と体を重ねちゃってるけどさ。アイリが【催淫】を何に使うっていうんだ。

 

 アイリが他の男に【催淫】を掛けて、エッチなことをするのは嫌だ。

 今のところ、国には俺しか男はいないが。


「早く早くっ 3分過ぎちゃいますよー」

 急かされる。


 俺が【催淫】を使って、女の子をその気にさせるっていうのは卑怯だ。

 俺自身が催淫の能力を得ても、使うつもりはない。


「わ、わかったよ」

 アイリに授与することにした。

 でもどうやって授与するんだ。


「アイリに授与します、よろしいですか」

 また女の声が聞こえた。


 俺にギフトや能力を授けてくれている神様みたいな存在は、俺の頭で考えていることを読み取ってくれるらしい。


 「はい」と念じた。


 アイリの体が輝く。


「あ、私、【催淫】の能力を授与されたって、声が聞こえました」

 アイリが報告する。


「で、何に使うつもりなの?」

 俺はアイリに問いただす。他の男に使うつもりと答えたら、俺はノルデンを出て行く。


「もちろん、ノルデンの女性たちと陛下に使わせていただきますっ 陛下にはいっぱい能力を授与をしていただくのと、子作りをしていただかないといけませんからっ」

 アイリはあっけらかんと答えた。


「は……嫌がる女性を無理やりエッチな気分にさせるってことじゃないの。ダメだよそんなの」

 俺は非道なことをしたくないのだ。


「仕方ありませんっ 今は国家存亡の非常時。個人の感情は二の次ですっ 王妃として、心を鬼にしますっ」


「マジで……本当に鬼だ」

 俺はドン引き。

 アイリが強引すぎると思う。アイリの思い込みが激しいってのは知ってたけど。正直、イメージ以上。


「でも悪いことばかりではないと思いますよ。陛下、ここは前向きに考えて下さい」

「はあ?」


「ノルデンの女性の多くが、夫、恋人、婚約者を失っています。亡き人を想って泣き暮らして、鬱病状態なんです。彼女たちが一晩だけでも、つらい記憶を忘れることができたらどんなに気が晴れることか」


「む……」


「ただでさえノルデンは北国で陰鬱な気候です。冬で人肌が恋しい時期。陛下に彼女たちを慰めていただけたらと思います」

 アイリに言われると、人助けをする面が、ほんのちょっとはあるのかな……と思える。


 だが、女性たちを、死んだ男たちから寝取った感じがしてならない。


「陛下は他人の心を思いやる優しい方だって、私は知ってます」

 アイリが俺にじっと眼差しを向けている。


「陛下が大好きな私でさえも、陛下は抱いていいのかって悩むほどのお方……」


「そりゃそうだよ。だってアイリは俺にはもったいない人だから」


「私なんかに優し過ぎです。やっぱりノルデンの女性たちを託せるのは、お優しい陛下をおいて他にいません。陛下を召喚させていただいたのは正しかった」


「無能って追放されないのは光栄だけどさ」


「ふふっ 優しいからこそ陛下は自分から抱く気にはなって下さいませんよね。ですので催淫を使わせていただきますっ」

 アイリの言葉には固い決意がこもっている。


「本気なんだな……?」

「はい。毎日複数の女性と閨を共にしていただきます。国だけじゃなく、女性の心を救うためなのですっ」


「アイリはいいのかよっ 俺が他の女とエッチしてるのが!」

 俺はちょっとキレぎみ。


 アイリが他の男に抱かれるのを想像したら、俺は狂いそうになる。

 逆にアイリは平気でいられるのかよ。


 次第にアイリの目が涙ぐんでいく。


「いや……いや……いやですよ。先生が他の女と愛し合うなんて。つらくてしょうがありません」

 涙が両目から(こぼ)れ落ちる。


 俺のことを陛下じゃなくて、先生と呼んでいることからして、アイリの本心だ。


「でも私はこの世界に転生して、素敵な人たちに囲まれて幸せに暮らしていました。この国の人たちも大好きなんです。みんなを災厄から守りたいっ」


 アイリは俺よりも先に転生した。

 ノルデンのお姫様として大事にされたから、国に思い入れがいっぱいある。


 アイリは俺とノルデン王国の間で板挟みになって苦しんでいるのだ。

 俺にはアイリの気持ちがわかるような気がした。


「しょうがないな。アイリの苦しみは分かち合おう」

 俺は頭を掻く。

 結婚して、何があってもアイリを守るって誓ってるしな。


「あ、ありがとうございます。先生っ」

「俺に催淫をかけるのを許すよ」


 アイリ以外の女性と閨をともにするのは嫌だ。

 催淫で狂わされないとやれそうにない。


 俺とアイリは手を携えて、狂気の道を突き進む。


「ごめんなさい、先生。うう……」

 悲しげなアイリの肩を撫でてやる。


「悪いのはアイリじゃないよ」


「でも……先生、今晩だけ、今晩だけは私だけを愛して下さいっ」

 アイリが潤んだ眼差しを向けてくる。


「え……愛してるけど」


「ぐすっ 早速使わせてもらいますねー」

 アイリが鼻を(すす)ってから、小悪魔っぽい笑みを浮かべる。


「催淫っ」

 アイリが俺を指差して唱える。


「なっ」

 ドキン

 激しい鼓動がした。

 体が、かああっと火照ってくる。


 アイリの体が淡い光に包まれて見える。

 甘い香りも漂ってくる。

 無性にアイリに触れたくてたまらない。


「わ、私にも、催淫っ」

 アイリは胸に手を当てて唱える。顔が真っ赤だ。


 次の瞬間、アイリが抱きついてきた。


「先生、んちゅ」

 アイリに唇を塞がれる。

 さっきまでのモジモジしたアイリとは別人のように積極的。


 俺は戸惑うけど、体がどんどん熱くなっていく。

 アイリを抱きしめた。


「はぁ先生ぇ大好きい」

 上気したアイリが俺をうっとり見つめる。


「俺もだ」


 ん……

 ちゅ、んちゅ……

 俺たちはまた口付けをし、互いに舌を口の中に入れる。


「はぁん めちゃくちゃに、私をめちゃくちゃにしてください」

 清純なはずのアイリが……


 俺は完全に理性を失った。


 夜中、何度もアイリは俺にも自分にも【催淫】をかけた。

 俺たちは獣のように明け方まで、愛し合うことになった。

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