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4 悪の皇帝

 ◆◇◆


 神聖ロマン帝国皇帝フリードは80才になる。髪も顎髭も白いものが混じるようになった。だが精力はいささかも衰えない。毎晩、複数の女と閨をともにすることを日課としている。


 ロウソクがいくつか灯された薄暗い寝室。

 フリードは全裸で、筋肉隆々の2メルトル近い巨軀をベッドに横たえ、20才ほどの裸の女を馬乗りにさせている。他にも4人の女がフリードの両腕両足に抱きついて、豊満な胸を押し付けている。

 女たちは麻薬を打たれたようにトロンとした表情で、夢中でご奉仕をする。女たちは姉妹で、顔が似ている。


 ベッドのそばに白いドレス姿の女が立つ。金髪を三つ編みにして人形のような印象を与える。ただし表情には邪気が宿る。


 マルー・サザン。

 ノルデン王国の没落令嬢で、闇堕ちした女。ノルデン王国の男を死滅させる呪術を使い、自らも悪魔と化す呪いを受けている。悪魔の羽を持つが、今は体内に隠されている。


 マルーはノルデン王国に帝国軍を侵攻させ、女たちを蹂躙させようとした。が、ノルデン王率いる女たちに阻まれてしまった。


 しかしフリードは、敗戦の責任をマルーに問うことはしなかった。マルーをいたく気に入っていて、側近中の側近として仕えてさせている。


「ノルデン王国に再度侵攻を開始するね。まずはハルザ同盟を攻め落とすよ。ふふ、きっと楽勝」

 マルーが笑顔で宣言する。皇帝にタメ口をきける唯一の人間である。


「マルーの献策は素晴らしい。上手くいくと思うぞ」

 フリードは女を突き上げながら言葉をかける。

 女の矯正が部屋中に響く。


「古代魔法の書物を調べてたら、今では忘れられた戦術が載ってたのよね」


「全く、古代文明には驚かされる。失われた魔法や技術の宝庫だ」

 フリードに乗っていた女が絶叫した後、失神してしまった。フリードは女を横にどけて、別の女を乗せる。


「ノルデン王は転生者で、【能力授与】なんてチートスキル持ち。こっちの世界より文明が進んでいた世界から来たっぽいし、私たちも失われた知識を復活させて対抗しなくちゃね」

 マルーの脳裏で、天才魔法使いルナが思い浮かぶ。ただでさえ強力な魔法を使うルナに、新たな能力が授与されてしまった。

 

 再びノルデン王国と戦う時は、ルナとの決戦が避けられない。マルーとしてはルナの【死を呑み込む者】の対策を見つけておきたいところだ。


「ハルザ同盟を攻め落とした次は、ノルデン王国だ。くはは、ワシ自ら軍を率いて行くぞ」

 フリードが楽しげに話す。


「へぇ皇帝自ら御出馬してくれるの!? 勝ちは決まりだね」

 マルーは少し驚いてみせる。


 フリードの強さはマルーにも測り難いほどだ。フリードの出生には不気味な言い伝えがある。

 邪竜が人の姿と化して、フリードの母を犯し、孕ませたという。


 フリードは幼い頃から化け物じみた剣技や魔法を使った。元々、フリードの一族は弱小の地方領主に過ぎなかったが、フリードは周辺の国を次々と攻め滅ぼしていく。ついには神聖ロマン帝国の大版図を築いた。

 いくらノルデン王がチートスキル持ちでも、フリード率いる帝国の総力で攻め込まれては持ち堪えられないだろう。


「ワシは、王妃のアイリとやらが、とても気になっていてな」

 フリードには、アイリが【王佐】のギフト持ちだと教えてある。


「ふん、便利な女よ。王様を助ける能力を次々に生み出ちゃうから」

 マルーは憎しみを口調に込める。


 アイリが獲得した【催淫】、【精力回復】、【睡眠不足解消】、【全員攻撃力向上】、【全員魔力向上】といった補助魔法。みな【王佐】のギフトが状況に応じて必要とされる能力を生み出したのだろう。


 【催淫】はありふれた能力だが、【精力回復】と【睡眠不足解消】はかなりレアだ。それらによって、ノルデン王は毎晩10人くらいの女の子に能力を授けていった。


 マルーの想像を絶するほどに、アイリがノルデン王の力を増幅した。アイリのせいで、王国を滅ぼすことができなかったと言ってもいい。


 しかもアイリはお姫様で、没落貴族のマルーにとっては昔から妬ましい存在だった。優しくて素敵なノルデン王と結婚して、幸せの絶頂にあるアイリは忌々し過ぎる。


 しかもノルデン隘路の戦いの後、アイリが死んだ歩兵隊員に【蘇生】を使うのを、マルーはかなた上空から見下ろしていた。【蘇生】は超レアな能力。

 マルーがいたノルデン王国軍内には、アイリが【蘇生】を使えるという情報を知らされていなかった。知っていたら、みんな死を恐れずに戦えたから、知らせないはずはない。

 つまりアイリは戦いの最中にレベルアップして、自ら【蘇生】を習得したのだ。アイリはノルデン王と閨をともにせずとも超絶能力を生み出すことができる。


「アイリは【不老不死】や【若返り】の能力まで生み出すやもしれん。ぜひとも手に入れたい女だ」

 フリードは激しく女を突き上げる。高齢を全く感じさせない。女が反り返って、絶叫して気を失った。


「そうね。アイリならいずれ皇帝が望む能力を身につけそう」

 マルーの見立てでは【王佐】のギフトは、アイリの補佐する相手がノルデン王から皇帝に代わったとしても必要とする能力を生み出す。

 

 ジジイになったフリードは【不老不死】や【若返り】を切望している。ノルデン王の【能力授与】がなくとも、おそらくアイリはいずれレベルアップして手に入れるだろう。


「アイリを捕らえてワシの性具にする。ここにいる女のようにな」

 フリードは次の女を乗せる。女は虚な表情でフリードに乗った。


 女たちはつい先日攻め滅ぼした国の姫たちだと聞いている。フリードは姫たちの記憶を消して、フリードの物を求めずにはいられなくなる体に変えてしまう呪術を使った。


 亡国の女たちを犯すのが、フリードの何よりの楽しみだという。

 フリードのハーレムには、父母兄弟を殺され、自らの意思を消された哀れな女が何千人もいる。


「姉妹丼なんて、悪趣味よね」

 マルーは呆れる。


 だがアイリがいずれフリードによって廃人にされると思うと、いい気味だ。


「マルー、そなたも抱いてやろう。湯浴みをしてくるがいい」


「はいはい」

 マルーは渋々といった感じで応じる。


「ワシとノルデン王は、男としてどっちがいいんだ?」


「あはは、ノルデン王に決まってるでしょ」

 マルーは陽気に即答。


「なにい」

 フリードがマルーを睨みつける。

 腰は上下に激しく動かしたままで、乗った女が嬌声を出す。


「だってノルデン王は若くて可愛いんだもん。加齢臭のする皇帝と違って、ドキドキしたなぁ」

 マルーはフリードの苛立ちをスルーして、うっとりとする。


「ふっ ワシは、マルーの口さがないところが気に入っている。お前だけは意思を消しはしない。早く湯に行ってこい」

 すぐにフリードは機嫌を直した。


「さすが大帝国の皇帝は度量が広いね」

 マルーは振り返って部屋を出て行く。


「いずれ若返った体で、マルーを抱いてやるぞ。天国を見せてやろう。小生意気なマルーがワシの虜になるのが楽しみだ。くはははははははははははは」

 フリードの高笑いが響いた。

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