2 ハーレム王国
◆◇◆
海戦が終わって1週間後。
王都で、戦勝を記念した祝祭が開かれる。
俺とアイリが馬車に乗って市街を巡回するのだ。俺は結婚式の時に着た燕尾服、アイリはウエディングドレスだ。結婚パレードをやりそこなったから、今やる。
馬車の前はビキニアーマー姿の歩兵隊300名。
後ろは宰相キキィがピンクのドレス姿で馬車に一人で乗っている。
その後は、灰色のローブ姿の魔法使い隊50名とシスター服の神官隊の20名だ。
このわずかな人数で帝国軍の侵略を撃退した。こちらの戦死者はゼロ。
俺がこの世界に転生してから2か月ほどで戦闘部隊を組織し、完全勝利した。もちろん俺だけの力じゃない。全員の奮闘の成果だ。
歩兵隊長のレオーナを先頭に、パレードが出発する。今日は歩兵隊は武器を持たない。観衆に手を振るのだ。
王宮の前の大通りは左右に観衆の女性がずらっと並んでいる。
盛大な拍手、歓声が沸き起こる。
「歩兵隊のみんなぁ、ありがとう」
「ありがとうございます」
王国の女性が性奴隷にされるのを阻止したから、ものすごく感謝されている。
大通りに隣接する建物の2階、3階から紙吹雪、紙テープが投げられる。
紙がひらひらと落ちる中、レオーナはじめ歩兵隊員の全員が笑顔で手を振りながら行進する。
ノルデン隘路に立ち塞がった300名の歩兵隊の勇気と強さは永遠に語り継がれるだろう。大陸最強と言われた聖巨神騎士団を壊滅させたのだ。
ノルデン湾海戦でも歩兵隊員が舵を握って操船し、勝利に貢献した。戦いはやはり肉弾戦をこなせる戦士の存在が基本である。
俺とアイリの乗った馬車も王宮の門を出る。
嵐のような拍手に包まれた。
「王様ー」
「大好き♡」
女性たちが悶えて叫んでいる。
俺は照れながら右手を振る。
「王様が素敵」
「王妃様とよくお似合いだわ」
美しい妻のアイリと釣り合っていると言われるのは不思議な気分だ。
一人の若い女性が花束を持って駆け寄って来る。
「私たちを守って下さって、ありがとうございます」
花束を差し出してくるのを俺は受け取った。
こんなに感謝されるのは人生で初めて。
うう……頑張って良かった。女の子とエッチしてただけと言われかねないけど、頑張ったんだよ。敵の動きを読んで、防衛策を考えるのに頭も使ったし。
いくら頑張っても感謝されるどころか罵詈雑言を浴びせられるばかりで、給料は増えずノルマが増える一方の前世と違いすぎる。
俺は観衆に手を振りながら、目が潤んでしまう。
王都のほぼ全ての通りを行進して、俺は王宮に戻ってきた。
楽しかったパレードが終了。
「ようやく終わったんだな、戦いが」
俺はホッとして、アイリに話しかける。
「ええ。お疲れさまでした」
「やっと二人きりになれるんだね」
念願のアイリとの新婚生活が始まる予感がする。
「こほん。残念ですが……」
「え、何!?」
俺はドキリとする。
もしかしてアイリは離婚!?
俺と結婚していたのは戦いに勝つまでだとか。
「国民から、陛下と閨をともにしたいという希望が殺到していますっ」
「ええええ」
「みんな、陛下の子供を産みたいと」
「で、でも俺はアイリと結婚しているんだよ」
「私もつらいです。しかし国民の要望を無視することもできません。私が陛下を独り占めしたら暴動が起きます。せっかく帝国軍を撃退したというのに、今度は内戦が勃発してしまいますよっ」
「大げさだな」
「いいえ、本当ですっ それくらい陛下は人気なんですっ そもそも男性が陛下しかいない我が国は陛下にお子を授けていただく必要があります。国家存続のため陛下には王国全体をハーレムとしていただきますねっ うん、ハーレム王国ですっ」
勝手に納得するアイリ。
◆◇◆
男が死滅したノルデン王国にあって、子作りは国家の存亡に関わる大事。
国中の妊娠可能な女性たちが俺の子種を求めて王宮に押しかけて来て、本当に暴動が起きそうな気配。
帝国軍との戦いが終わるまでは、歩兵隊と魔法使い隊とだけ閨をともにしていた。全員が戦いに備えて、避妊の薬草を飲んでいたから妊娠していない。
ついに、妊娠が解禁される日が来たとあって、民衆だけじゃなく、歩兵隊や魔法使い隊までも俺に迫って来る。
「陛下、どうか私にお子種を」
「私も欲しい」
「早く陛下の子を産みたいです」
「ご褒美にお子種を授かるのは最前線で戦った歩兵隊からよ」
「勝てたのは魔法使い隊のおかげでしょ」
殺気立った女性の大群に取り囲まれて、俺は逃げられない。
「鉱山で働いているのは私たちですよ」
錬金術師の女の子たちも権利を主張して譲らない。
アイリも、死の恐怖を感じていた。妻のアイリが俺を独り占めしようものなら、女性たちはアイリを八つ裂きにする。
「王妃は陛下にもういっぱい可愛がってもらったら、もういいわよね!」
「もう孕んでるんでしょ!」
女の喧嘩はかなり怖い。
アイリは国を率いないといけない立場。長らく避妊薬を飲んでいた。
アイリは先日より避妊の薬草なしで愛し合っているが、まだ懐妊の兆候はない。
「わ、私は後回しでいいです」
妻のアイリが妊娠の順番を、他の女性に譲らざるを得ない空気であった。




