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38 美貌の未亡人が死に急ぐ

 マルーは天高く昇っていき、みるみるうちに小さくなる。


「マルーが上空から魔法を振らせてくるんじゃないか」

 俺は気を揉む。


 翼で飛び回られたら、こっちの魔法を命中させるのが難しい。


「かなりMPを消費したはずだから大丈夫。帝国軍さえ倒せば、マルーも去る」

 ルナが簡潔に告げる。

 

 マルーは上で戦況を見てそうだが、無視してていいようだ。


「ルナは大丈夫なのか」

 俺はルナのそばに歩み寄る。


「大丈夫」

「ずっとアンデッド化したままってことはないんだよな」


「多分、いずれ時間が来たら戻ると思う」

「そっか。良かった」


「今のうちに敵を叩く。MPが無尽蔵だから」

「何だって!? すげえ!」

 アンデッド化したら魔法を使い放題とは。だったらできるだけいっぱい敵に浴びせておいてもらわないと。


 ルナが帝国軍に向かって、両手を掲げる。

雷槍(ライトニングランス)

 小声が聞こえた直後ーー

 彼方の帝国軍の魔法使いに雷が降り注ぐ。


 またルナが呟く。

「アルティマ」

 敵の幹部らしい銀色のローブの魔法使いが、撃ち抜かれた。


 ルナが魔法を連発して敵魔法使いを次々に倒していく。


「私たちもやろう」

 ゾフィーが魔法使い隊に合図。


「「「「雷撃(ライトニング)!」」」」

 魔法使い隊が叫ぶ。


「俺もやるぞ。神雷(ゴッドライトニング)

 最上級の雷系魔法を落としてやる。


「敵魔法使い100が黒こげだ。残った者は大混乱になってる」

 ゾフィーが報告。


「雷槍」

「「「「雷撃!」」」」

「神雷」

 魔法使い隊の総力を上げた雷系魔法攻撃の連発で、敵魔法使いは地獄のように雷に打たれ続ける。


「敵魔法使いは壊滅状態だ」

 ゾフィーの声が弾む。


 ルナが突然前のめりに倒れる。

 俺は慌ててルナを抱き止めた。


「しっかりしろ」

 俺は声を掛けるが、ルナは俺の胸でハアハア苦しげに息をする。


 ルナの目の光が消えている。

 アンデッドの無敵状態が終わったんだ。


 ギリギリだった。ちょっとでも切れるのが早かったら、マルーにやられていただろう。


「ルナはこの展開を予想してたんだな」

 俺はルナに囁く。


 裏切り者はまずルナを殺す。その後に俺。

 だけど、【死を喰らう者】があれば乗り越えられる。


 裏切り者が明らかになってから、ルナが反撃する。

 マルーには逃げられた。だが、味方が壊滅するのは防げた。


 全てはルナのおかげだ。

 情けないことに、俺は展開を全く予想できていなかった。


「ルナもアルティマを使えたんだな。ルナがマルーと互角に戦ってくれたから、マルーは逃げるしかなかった」

「い、いや、私は、アルティマを使えない」

 ルナは呼吸を乱したまま答えてくれる。


「え? でも使ってたじゃん」

「アルティマを、使えたのは、【死を喰らう者】の効果。自分を死なせた魔法を、一時的に、使えるようになる」


「そうだったんだ……死の原因になった敵の能力をコピーできるなんて、まさに【死を喰らう者】だな」

 無敵状態に加えて、敵と同じ攻撃魔法が使えるなら優勢になれるよな。


「だから、私が、助かったのは、王様のおかげ」

 ルナが上目で俺を見ている。感謝しているっぽい。


「いや、マルーにアルティマを授与したの俺だから。ルナを危険にさらして申し訳ない」

 俺は恥ずかしくて頬を掻く。

 バカな俺は裏切り者を見破れずに、マルーに強力な能力を授けてしまっていた。ルナがカバーしてくれなければ、致命的な大失態になるところだった。


「ちょっと休む」

 ルナがぐったり、もたれかかってくる。


「ああ、後は任せて、ずっと休んでいてくれ」

 

 この小さい体の子が破綻を食い止めてくれたんだ。


 ◆◇◆


「怯むな! 戦えい!」

 後ろに控えている聖巨神騎士団長ギガンツが叫ぶ。


 ギガンツと周りの親衛隊30人ほどには【全員魅了】が効いていない。


「魔法耐性を持ってるんだわ」


「我らで討ち取るぞ」

 レオーナが槍と盾を捨て、大剣を抜き放つ。


「「おうっ」」


「1番隊は私に続け。他の者は魅了状態の敵を討て。行くぞ」

 レオーナが駆け出す。


「ふふ、死に場所を見つけたわ」

 副長のサーシャも槍を抱えて走って行く。微笑を浮かべた顔には狂気が宿っている。


「サーシャは残って指揮を取ってくれ」

 レオーナが戸惑っている。


「ギガンツの首を亡き夫の墓前に手向けるわ」

 走りながら言葉を交わすサーシャとレオーナ。


「ならば止めはしない。雑魚は我らに任せろ」


「ありがとう。相打ちになっても必ず首を取る」


 歩兵1番隊30人が、聖巨神騎士団親衛隊に突っ込んで行く。


 残る歩兵隊は、メリッサによって魅力された騎士を刺しまくる。楽勝で刺せるのだが、数が多い。全員倒すには時間がかかって、1番隊の応援には行けそうにない。


 歩兵30人 VS 騎士30人の決戦だ。


「てやあああああっ」

 レオーナが先頭で斬りかかる。

 【竜巻旋風斬】の能力発動――


 騎士3人を馬ごと宙に巻き上げた。

 魔法耐性があっても、物理攻撃は効く。


「たあっ」

 他の歩兵も槍で突っかかる。


 馬上の騎士と激しく槍を打ち合わせる。


 レオーナが【竜巻旋風斬】で進路を切り開く。

 後ろにサーシャが続いた。


 2人の前にギガンツが立ちはだかる。

 巨大な馬に乗っているので身の丈3メルトルくらいに見える。異常な威圧感だ。


「亡き夫の無念、貴様を討って晴らしてやるわ」

 サーシャが槍を構える。


 レオーナは横に走り、親衛隊に斬りかかる。サーシャの一騎打ちの邪魔はさせないつもりだ。


 サーシャの槍先が光輝く。


「ほう。【一撃必殺】の能力持ちか。女のくせに生意気な」

 ギガンツが小馬鹿にする。


「見抜くとはさすがね。でも、わかったところで防げはしないわよ」

 【一撃必殺】は25%の確率で槍が当たった相手を即死させる。


「クク、我に当たるかな」

 ギガンツは笑って、大盾を構える。


「さっさと死んで」

 サーシャが駆けて、槍を突き上げる。


 だが大盾から衝撃波が放たれ、サーシャは吹き飛ばされた。

 サーシャは激しく後ろに転がって行く。


「我の【爆風盾】(ブラストシールド)の能力だ。誰も我に近づけはせん、フハハ」

 ギガンツはサーシャを見下して笑う。


 サーシャは槍を地面に突き立てて起き上がる。泥に汚れた顔はギガンツを忌々しく睨みつける。

 【一撃必殺】は槍が当たらなければ発動しない。


「卑怯だわ、武人らしく剣矛を交えなさい」

「クク、女など相手にしてられるか」


 ギガンツは、親衛隊の一人から槍を受け取る。

 槍を右手で振りかぶり、サーシャ目掛けて投げた。


 砲弾のような投槍がサーシャを襲う。


「くっ」

 サーシャは跳びずさる。


 投槍が当たった地面は衝撃で大きな穴が空く。サーシャに当たっていたら確実に死んでいた。


 ギガンツは次の槍を受け取る。

 サーシャの持ち味は接近戦。ギガンツはサーシャを近寄らせず遠巻きに投槍で倒す作戦だ。


「死ね、女」

 ギガンツが槍を振りかぶる。


「私はね、夫が死んだ時にもう死んでいるの。今さら命が惜しくはないわ」

 サーシャは槍を構える。槍先の光が輝きを増していく。


「あの世で夫に詫びろ。仇は討てませんでしたとな。クハハハハ」

 ギガンツが槍を投げる。


 サーシャは跳んだ。

 槍がいた場所に突き刺さる。


 サーシャは高く、ギガンツより高く跳んでいる――


「あなた――私に力を頂戴」

 サーシャが亡き夫に呼びかけている。捨身の攻撃だが、【一撃必殺】が成功する確率は25%しかない。一撃に全てを賭けようとしている。


 サーシャは宙で身を翻し、槍をギガンツに向ける。放物線を描いて落下する。


 ギガンツが大盾を構え、サーシャに衝撃波を放つ。

 だがサーシャは暴風を突き抜け、ギガンツ目掛けて落ちる。


 ギガンツは次の槍を受け取り、サーシャに突き出す。


 二人の槍が交差する。

 ずんっ ずんっ


「かはっ」

「くぅっ」


 サーシャの槍は大盾を突き破り、ギガンツの胸を貫いていた。【一撃必殺】が決まった。

 だがギガンツの槍も、サーシャの腹を貫いている。


 サーシャは血を吐いて落ちていく。

 ギガンツが仰向けに落馬して、地響きがした。


「これで……あなたのところに……逝けるね」

 地面に倒れたサーシャは、微笑を浮かべて目を閉じた。

必ずハッピーエンドにしますので、今後もお読みいただきますとありがたく存じます。

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