35 序盤は圧勝
みんな頑張っている。
騎士団の中に頭ひとつ大きいフルアーマーの者が現れた。
そいつから大音量が響いてくる。
「女だけの国を作るとは、許しがたき異端。女たちにたっぷりと男を教えてやるのだあああ!」
聖巨神騎士団長のギガンツ。レオーナから帝国屈指の猛者だと聞いている。
卑猥なことを言ってやがる。ノルデン王国は女だけの国じゃなくて、男は俺が一人いるのだが。
「「「おおおおおおおお」」」
地鳴りのような騎士たちの叫び。
騎士が密集して突撃してくる。
さっきまでは第二波との間隔が開いていたが、今回は一塊だ。
歩兵隊が押し返す間を与えずに、突破しようとしている
レオーナが俺の方を振り仰ぐ。
「今ですっ 陛下」
「よし」
俺は頷いてから、両手を下に向ける。
「【全員攻撃力向上】!」
光のドームに歩兵隊が包まれる。
一時的に物理攻撃力を1.5倍に。
「これよこれ」
「力が漲るぅ」
「陛下、ありがとうございます♡」
歩兵隊から歓声が聞こえてきた。
敵の総攻撃のタイミングで歩兵隊を強化する作戦だ。
「一気に殱滅だ。行くぞみんなっ」
レオーナが槍を突き上げて檄を飛ばす。
「「「おうっ おうっ おうっ」」」
歩兵隊が駆け出す。
突っ込んできた騎士団と歩兵隊が激突。
歩兵隊の最前列は盾で騎士団を押しまくる。
後続の歩兵が槍で騎士を突きまくる。
「もっかい【全員攻撃力向上】!」
再び光のドームに歩兵隊が包まれる。
これで攻撃力が1.5×1.5で2.25倍だ。
「とりゃあああああ」
歩兵隊が騎士を次々と突き倒していく。
騎士団を圧倒し始めた。
歩兵隊は前進。向かって来る騎士をことごとく返り討ちに。
「引けい、引け引け」
騎士団が後退する。
振り返って逃げていく騎士に歩兵隊が投げ槍を浴びせる。
背中に槍が刺さって、バタバタと倒れた。
「よし!」
俺はガッツポーズ。
序盤は大勝利だ。
街道には騎士の躯が大量に転がっているが、歩兵隊は一人も犠牲者が出ていない。
◆◇◆
帝国軍の攻撃が止まった。単純な突撃では、こっちの集中砲火を浴びるとわかったようだ。
聖巨神騎士団長ギガンツが前の方に出てきて、怒鳴る。
「一つ眼巨人を出せい」
ズシンズシンと地響きが聞こえてくる。
街道の曲がり角から姿を現したのは――
身長10メルトルくらいある一つ眼巨人。顔の上半分が眼で、気持ち悪いことこの上ない。右手に棍棒を持っている。
体の節々に鎖が巻きついている。ちょっと前まで拘束されていたのが、解放されたのだ。
「いいいいい」
俺は一つ眼巨人の迫力にたじろぐ。
周囲の魔法使い隊員も息を呑んでいる。
「この世界はモンスターがいたんだ。剣と魔法の世界だから当然か」
氷に閉ざされた王国に引きこもっていたからモンスターと出くわす機会がなかっただけだ。
「辺境にはモンスターが跋扈してる。帝国軍はモンスターを捕まえて軍事利用する」
ルナだけはいつもどおり落ち着いている。
一つ眼巨人が地面を揺らしながら歩兵隊に迫る。
「ヤバくない? ルナ、あいつを魔法で倒せるか」
俺は焦ってルナに確認する。
「きっとレオーナが倒す」
「まぢで?」
俺は崖の麓の歩兵隊を見下ろす。
レオーナが槍と盾を地面に置き、背中から大剣を抜く。
「手出し無用」
レオーナは歩兵隊員に告げて、前に駆け出す。
一つ眼巨人と一対一で対峙。
レオーナが大剣を構えた。
体格差がありすぎるから、傍目には全然勝負にならなさそうに見える。
棍棒がちょっと当たっただけで、レオーナは全身がバラバラにされそう。
「ギイイイイ」
一つ眼巨人は気持ち悪いうなり声を出す。
そして棍棒を振りかぶり――
思いっきり振り下ろした。
レオーナがいた地面に棍棒の先がぶち当たる。爆発したような音がして、地面にめり込んだ。
レオーナは跳躍して、棍棒をかわしていた。
一つ眼巨人の右腕を飛び伝っていく。
「たあああああっ」
レオーナは大剣を一つ眼巨人の眼に振り下ろす。
大剣は眼に当たった瞬間、眩い光を放ち、眼を切り裂いていく。
ただの物理攻撃じゃない。
俺がレオーナに授与した能力【弱点攻撃】が発動した。弱点を突けば威力は2倍になるという。
「グギイイイイイイイ」
一つ眼巨人が奇怪な叫びを上げ、よろめく。棍棒を落とした。
着地したレオーナ。
「【竜巻旋風斬】――――」
光を帯びた大剣で、今度は一つ眼巨人の両足を斜めに斬る。
すぱっ――と両足を斬り抜くと、一つ眼巨人の体が切れ目に沿ってズズズとずり落ちていく。
轟音がして一つ眼巨人が仰向けに転がった。
「死ね――化け物」
レオーナが高く跳ぶ。大剣を下向きに構えて、落ちる。
一つ眼巨人の心臓を大剣が貫く。
「「「やったあああああああ」」」
歩兵隊員が大歓声。
ぴくぴくしていた一つ眼巨人は、やがて動かかなくなった。
レオーナは大剣を引き抜くと、振り返った。
「陛下が授けてくれた能力のおかげです」
俺の方に体を向けて一礼。
「いやあすごいすごい」
俺は拍手。
まさかレオーナ一人で、一つ眼巨人を圧倒するとは思わなかった。
「ぬううう」
ギガンツが歯ぎしりしている感じが伝わって来る。
レオーナが士気を最高潮に上げてくれた。
これなら勝てそうだ、と俺は感じ始めていた。
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