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35/72

35 序盤は圧勝

 みんな頑張っている。


 騎士団の中に頭ひとつ大きいフルアーマーの者が現れた。

 そいつから大音量が響いてくる。


「女だけの国を作るとは、許しがたき異端。女たちにたっぷりと男を教えてやるのだあああ!」

 聖巨神騎士団長のギガンツ。レオーナから帝国屈指の猛者だと聞いている。

 卑猥なことを言ってやがる。ノルデン王国は女だけの国じゃなくて、男は俺が一人いるのだが。


「「「おおおおおおおお」」」

 地鳴りのような騎士たちの叫び。


 騎士が密集して突撃してくる。

 さっきまでは第二波との間隔が開いていたが、今回は一塊だ。


 歩兵隊が押し返す間を与えずに、突破しようとしている


 レオーナが俺の方を振り仰ぐ。

「今ですっ 陛下」


「よし」

 俺は頷いてから、両手を下に向ける。


「【全員攻撃力向上】!」

 光のドームに歩兵隊が包まれる。


 一時的に物理攻撃力を1.5倍に。


「これよこれ」

「力が漲るぅ」

「陛下、ありがとうございます♡」

 歩兵隊から歓声が聞こえてきた。


 敵の総攻撃のタイミングで歩兵隊を強化する作戦だ。


「一気に殱滅だ。行くぞみんなっ」

 レオーナが槍を突き上げて檄を飛ばす。


「「「おうっ おうっ おうっ」」」

 歩兵隊が駆け出す。


 突っ込んできた騎士団と歩兵隊が激突。

 歩兵隊の最前列は盾で騎士団を押しまくる。

 後続の歩兵が槍で騎士を突きまくる。


「もっかい【全員攻撃力向上】!」

 再び光のドームに歩兵隊が包まれる。

 

 これで攻撃力が1.5×1.5で2.25倍だ。

 

「とりゃあああああ」

 歩兵隊が騎士を次々と突き倒していく。

 騎士団を圧倒し始めた。


 歩兵隊は前進。向かって来る騎士をことごとく返り討ちに。


「引けい、引け引け」

 騎士団が後退する。


 振り返って逃げていく騎士に歩兵隊が投げ槍を浴びせる。

 背中に槍が刺さって、バタバタと倒れた。


「よし!」

 俺はガッツポーズ。

 

 序盤は大勝利だ。

 街道には騎士の躯が大量に転がっているが、歩兵隊は一人も犠牲者が出ていない。 


 ◆◇◆


 帝国軍の攻撃が止まった。単純な突撃では、こっちの集中砲火を浴びるとわかったようだ。


 聖巨神騎士団長ギガンツが前の方に出てきて、怒鳴る。

一つ眼巨人(サイクロプス)を出せい」


 ズシンズシンと地響きが聞こえてくる。


 街道の曲がり角から姿を現したのは――

 身長10メルトルくらいある一つ眼巨人。顔の上半分が眼で、気持ち悪いことこの上ない。右手に棍棒を持っている。


 体の節々に鎖が巻きついている。ちょっと前まで拘束されていたのが、解放されたのだ。


「いいいいい」

 俺は一つ眼巨人の迫力にたじろぐ。


 周囲の魔法使い隊員も息を呑んでいる。


「この世界はモンスターがいたんだ。剣と魔法の世界だから当然か」

 氷に閉ざされた王国に引きこもっていたからモンスターと出くわす機会がなかっただけだ。


「辺境にはモンスターが跋扈してる。帝国軍はモンスターを捕まえて軍事利用する」

 ルナだけはいつもどおり落ち着いている。


 一つ眼巨人が地面を揺らしながら歩兵隊に迫る。


「ヤバくない? ルナ、あいつを魔法で倒せるか」

 俺は焦ってルナに確認する。


「きっとレオーナが倒す」

「まぢで?」


 俺は崖の麓の歩兵隊を見下ろす。


 レオーナが槍と盾を地面に置き、背中から大剣を抜く。


「手出し無用」

 レオーナは歩兵隊員に告げて、前に駆け出す。


 一つ眼巨人と一対一で対峙。

 レオーナが大剣を構えた。


 体格差がありすぎるから、傍目には全然勝負にならなさそうに見える。

 棍棒がちょっと当たっただけで、レオーナは全身がバラバラにされそう。


「ギイイイイ」

 一つ眼巨人は気持ち悪いうなり声を出す。

 そして棍棒を振りかぶり――

 

 思いっきり振り下ろした。

 レオーナがいた地面に棍棒の先がぶち当たる。爆発したような音がして、地面にめり込んだ。


 レオーナは跳躍して、棍棒をかわしていた。

 一つ眼巨人の右腕を飛び伝っていく。


「たあああああっ」

 レオーナは大剣を一つ眼巨人の眼に振り下ろす。

 

 大剣は眼に当たった瞬間、眩い光を放ち、眼を切り裂いていく。


 ただの物理攻撃じゃない。

 俺がレオーナに授与した能力【弱点攻撃】が発動した。弱点を突けば威力は2倍になるという。

 

「グギイイイイイイイ」

 一つ眼巨人が奇怪な叫びを上げ、よろめく。棍棒を落とした。


 着地したレオーナ。

「【竜巻旋風斬】――――」

 光を帯びた大剣で、今度は一つ眼巨人の両足を斜めに斬る。


 すぱっ――と両足を斬り抜くと、一つ眼巨人の体が切れ目に沿ってズズズとずり落ちていく。

 轟音がして一つ眼巨人が仰向けに転がった。


「死ね――化け物」

 レオーナが高く跳ぶ。大剣を下向きに構えて、落ちる。


 一つ眼巨人の心臓を大剣が貫く。


「「「やったあああああああ」」」

 歩兵隊員が大歓声。


 ぴくぴくしていた一つ眼巨人は、やがて動かかなくなった。


 レオーナは大剣を引き抜くと、振り返った。

「陛下が授けてくれた能力のおかげです」


 俺の方に体を向けて一礼。


「いやあすごいすごい」

 俺は拍手。

 まさかレオーナ一人で、一つ眼巨人を圧倒するとは思わなかった。


「ぬううう」

 ギガンツが歯ぎしりしている感じが伝わって来る。

 

 レオーナが士気を最高潮に上げてくれた。

 これなら勝てそうだ、と俺は感じ始めていた。

お読みいただきありがとうございます。


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