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32 密偵を殲滅1

 ◆◇◆


 日ごとに暖かくなって来ている。

 春の到来は近い。


 我が国を閉ざしている雪や氷がかなり溶けてきた。

 帝国軍がノルデン隘路に侵攻できるまであと10日ほどか。


 昼下がり、俺とアイリは執務室で政務をこなす。戦争が迫っているけど、できることはせいぜいやっている。焦ってもしょうがない。


 ビキニアーマー姿のレオーナが部屋に駆け込んで来た。

「市内の各地区で、ゾンビやスケルトンなどのアンデッドモンスターが発生しています!」


「なに!?」

 俺は立ち上がる。


「帝国が潜伏させていた密偵が動き出したものと思われます。倒しに行きましょう」


「アイリ、あとは任せた」

 俺は壁に立て掛けておいたロングソードを腰に帯びて出て行った。


 廊下でレオーナが走りながら俺に話しかける。


「想定より早いですね」

「ああ、どういうつもりだろう」


 帝国が我が国に密偵を潜伏させているとは思っていた。

 リープという瞬間移動魔法があるからな。


 瞬間移動できるのは行ったことのある場所だけだが、密偵には冬になる前にノルデン王国を旅させておけばいい。


 密偵は破壊工作を行いたい時に隠れ家にリープしてくる。

 リープがあれば爆破テロや暗殺を行い放題だ。

 瞬間移動の魔法があるファンタジー世界で治安を保つのは大変である。


 帝国は、国境への侵攻に合わせて、密偵にテロ活動をさせる、と俺は想定していた。国境での戦いだけでも大変なのに、国内をパニックにされたらたまらない。


 しかし密偵が暴れ出すのが想定より10日ほど早い。まだ帝国軍が国境に攻め寄せてくる動きはない。

 今なら密偵の殱滅に専念できる。


「密偵にリープで逃げられると、またやって来ます。ルナに魔力障壁を張ってもらって捕まえるか、一撃で仕留めましょう」


 レオーナとルナが国境の防衛についていたヤバいところだった。国内の守備隊はわずかになるから、密偵の駆除が難しくなる。


 王宮の玄関に馬が引かれている。

 ルナが子馬に跨って待っていた。


 歩兵隊副長の未亡人サーシャはじめビキニアーマーの歩兵隊員や灰色のローブ姿の魔法使い隊も15人ほどいる。彼女たちは馬に乗れない。

 レオーナは馬に飛び乗った。


「二手に分かれる。私とルナは北で暴れている奴らを倒す。他は南に行ってくれ。陛下も一緒に」

 レオーナが指示を出す。


「了解だ」

 俺は(うなず)く。


 レオーナとルナが馬をいななかせて走り出す。我が軍最強の戦士と魔法使いなら2人だけで十分。


 俺は歩兵隊と魔法使い隊15人と駆け出した。俺が付いて行くのは【全員攻撃力向上】か【全員魔力向上】を使って支援するため。

 もっとも俺の能力は隠し球なので使わずに済めば越したことがない。


 大通りを南に走ると、前からスケルトンの大群が現れた。

 剣と盾を持ったガイコツどもは気味が悪い。密偵が作り出したアンデッドモンスターだ。


「みんな、骨を粉々にして」

 サーシャが指示を出す。


 歩兵隊員が一斉に剣を抜く。


「「「どりあああぁ」」」

 歩兵隊員はスケルトンの剣を弾き、盾を豪快に蹴り飛ばす。


 ぐらついたスケルトンの頭に剣の横腹を叩きつけた。

 スケルトンの頭蓋骨が粉々になって後ろに吹っ飛んでいった。


 歩兵隊員はスケルトンの胴体も剣で叩きまくる。肋骨や背骨を粉砕。


 スケルトンは雑魚だが、骨をバラバラにしただけだと復活する。めんどくさいがきっちり砕いておかないと。


 魔法使い隊員は爆発系魔法をスケルトンに放つ。


 どおおおん

 どおおおおおん


 魔法なら一発でスケルトンを砕ける。次々と倒して行った。


「やった、できたわ」

 魔法を命中させた子が飛び跳ねて喜ぶ。


 魔法使い隊は、ついこの前までは一般人だった子が多い。

 ルナの特訓を受けて魔法が使えるようになったばかりだ。

 ちょうど良い実戦経験になっている。


 スケルトンを全滅させると、前方から新手が現れた。

 真ん中に黒づくめの男が一人。左右に黒のローブをかぶった者が6人。


「ククク、メスども、オレ様の美しさに気を失っても構わないんだぜ。優しく抱いてやるからな」

 意味不明なセリフをほざく男、バッカス・ギルナーだ。


 ノルデン王国の男で唯一の生き残り。貴族だったくせに、神聖ロマン帝国の下僕と化している。


「きもっ」

「なにアイツ」

 歩兵隊や魔法使い隊は初めて見るバッカスを不審者扱い。


「むうう……オレ様のセンスがわからんとは……まあいい、オレ様の壁ドンで酔わせてやる」

 バッカスはちょっとだけ気落ちした様子だ。


 大通りで、お互いに立ち止まって対峙。

 黒のローブを着た者たちは髭面(ひげづら)が見えるから全員が男だ。こいつら魔法使いがスケルトンを生み出した密偵だ。


「バッカス! お前の差金か」

 俺は指差して問い掛ける。


「ショボい王がお出ましになってくれるとは話がはえーや」

 バッカスが俺を見据えてせせら笑う。バッカスが密偵を指揮しているようだ。


「俺を暗殺しに来たんだな」


「ああ。貴様とあとレオーナにルナ。そんだけぶっ殺せば戦う気が失せるだろ。オレ様はノルデンの女が哀れでなぁ。降伏する気にさせてやろうってんだ」

 バッカスはバカ正直に教えてくれる。


 売国奴らしくバッカスはノルデン王国の事情をよく知っている。確かに最強のレオーナとルナを殺されたら終わりだ。俺はいなくても大丈夫かもしれんが。


「降伏させた功績で、新しいノルデン王にしてもらおうってことか。王国をお前のハーレムにするつもりだな」

 俺が聞き返す。


「メスはオレの胸でよがれ。ショボい王様から助け出しにきてやったんだぞ。くはははははは」

 高笑いするバッカスだが……


「えーやだ」

「イタすぎ。絶対触られたくない」


「わたし、陛下にだけ抱かれたい♡」

「陛下が上手すぎるもん♡」


 歩兵隊と魔法使い隊がバッカスへの嫌悪感と俺への好感を露わにしている。


「な、まさか、そこのメスどもは貴様に抱かれたのか」

 バッカスがぶるぶる震えながら俺に確認する。


「ああ、どうしてもって言うから閨をともにしたよ」

 俺は照れて頭を掻きながら答える。


 アイリや隊員たちがどうしても能力を授けて欲しいとせがむからね。

 今いる隊員たちとは一回は閨をともにしている。


 隊員たちの間で「王様はエッチが上手♡」っていう噂が流れているらしい。俺は催淫で狂わされているので自覚がないのだが。


「許さん許さんぞ。オレのメスををを」

 バッカスは意味不明なセリフを言う余裕をなくして、怒りまくっている。

総合評価が400Pを超えました。

たくさんのブクマ、ご評価ありがとうございます。

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