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31 メイドさんがご奉仕

 ◆◇◆

 

 俺は港から王宮に戻ると、執務室で仕事。


 ご飯は仕事しながら、メイドさんが「陛下、あーんして下さい」とスプーンで食べさせてくれた。


 メイドさんたちが色々とお世話してくれるのは助かる。だが忙し過ぎるのだ。

 朝昼は内政、軍議。夜は女性と閨をともにして能力授与。

 24時間ほとんど自分の時間がない。


 非常時だから仕方ないのだが、さすがに精神的にしんどい。

 日が暮れてから、「ちょっとだけ気分転換させてくれ」と執務室を抜け出した。

 行き先は王宮の図書室。


 俺は本が好きだ。

 本屋さんに、図書館。本に囲まれる空間に来ると心が安らぐ。

 王宮の図書室内を歩くだけでも、心にゆとりができるというものだ。


 図書室の扉を押し開ける。

 本棚の間、蝋燭の明かりがついている所がある。


「あれ、誰かいるのかな」

 灯りの辺りに目を凝らす。


 メイド服を着た女の子がハタキでパタパタしている。

 お掃除中だけど、入ってもいいだろう。


 俺は棚の方に歩いていく。

 メイドさんが俺に気づいて、こっちを見る。

 前髪が長くて、両目が隠れている。


「あ、陛下だ」

 田舎っぺの言葉遣い。


「ゾフィー!? なんでメイド服着てんの!?」

 びっくりした。ゾフィーは魔法使い隊員だ。メイド服じゃなくて、ローブを着ているものだろう。


「オラ、メイドのお仕事をさせてもらってるんだ。お給金稼いで、家に仕送りしねえと」

「なんだって!?」


 俺はさらにびっくり。

 魔法使い隊は昼間、ルナの地獄の新兵訓練を受けている。

 死ぬほどヘトヘトにされるらしいのに。

 まさかゾフィーがダブルワークしているとは思わなかった。


「ゾフィーは平気なの? よくメイドさんの仕事まで、できるよね」

「オラは大丈夫。農作業の方がよっぽどキツいから」


「うう……農業って大変なんだね。家族に仕送りするために頑張るなんて偉いなあ」

 俺は、文句言わずに働くゾフィーを見習いたい。


 メイドさんから魔法使い隊に採用された子もいて人手不足と聞く。穴埋めにゾフィーが働いてくれているのだ。


 図書館の掃除って大事なんだよね。(ほこり)が溜まると紙魚(しみ)という本を食べる虫が発生するから。

 この国では本は超貴重品。王国の歴史を記した本や魔導書が置かれているので、戦時でも掃除が欠かせない。


「陛下は何の用だ?」

「ちょっと本を見て回りたいだけ。俺に構わなくていいよ」


 俺はゾフィーの横を通り抜けて、本棚の間を歩く。

 棚に並んだ本のタイトルを見るだけで、心が満たされる。


 ぐいっ

 服の裾が引っ張られる。

 振り返るとゾフィーが俺の服を摘んでいた。


「ん、何?」

「陛下、オラにご奉仕させてけろ」


「は?」

 突然のことに俺はキョトンとする。


 えーと……

 ゾフィーとまた閨をともにして新しい能力を授与するのが課題ではある。

 だから今晩の最初の相手はゾフィーなんだけど……


「オラいっぱいご奉仕したい」

 ゾフィーがハタキを投げ捨てて、俺に抱きついてきた。

 小柄だが大きな胸が押し付けられる。


「ま、待ってよ。ここではダメだよ」

 俺は気分転換がしたいのに。


「後で陛下にご奉仕できるって聞いてる。でもオラはもっともっと陛下にご奉仕したい」

「2回ってこと!?」

 俺はびっくりして聞き返す。


 ゾフィーがコクリとする。かわゆく見えてしまった。


「オラはもっと能力をもらって、みんなの役に立ちてぇ。ゴーレムを動かせたら、つらい農作業をおっかあや妹がしなくてよくなるんだ」

「うう……ゾフィーはなんて健気な子なんだ。でもさ、落ち着いて。ゾフィー自身がしたくないことはしなくていい。俺なんかに無理して、その……ご奉仕することはないんだよ」


「んん? 陛下は何を言ってるだ。オラは陛下が大好き。オラを優しく可愛がってくれるから♡」

 ゾフィーの前髪に隠れてない顔の下半分が赤くなっている。


 俺にゾフィーは好感を持ってくれているのか。うれしいけど図書室はさすがに……


「いやいや、ここは大事な本がある所だからさ」


「オラ、メリッサさんから新しい魔法を教わったんだ」

 突然、娼婦メリッサの名前が出てきて、嫌な予感がした。


「催淫」

 ゾフィーが俺を指差して唱える。


 俺はドクンッと心臓が跳ねる。体が急激に熱くなってきた。


「く、なにこれ。アイリやメリッサより強力なんだけど。くおおお」

 俺は衝動に抗おうとして身を悶させる。ゾフィーの魔力がとてつもなく強いってことだ。


「オラに任せてけろ。陛下、ご奉仕させていただきます♡」


 ◆◇◆


 図書室の棚に俺はもたれ掛かる。

 俺はゾフィーにご奉仕され、催淫の効果で獣になってしまった。自己嫌悪でいっぱい。ゾフィーだけでなく、神聖な図書室を汚してしまった。


 ゾフィーはぺたんこ座りして、ハアハア息をしている。メイド服が乱れまくりで、あちこち肌が露出してる。


「新しい能力【他律(ヘテロノモス)ゴーレム】を獲得しました。閨の相手または自分に授与してください。考慮時間は3分です。時間を過ぎた場合は自分に授与されます」

 女性の声が聞こえた。


 言葉から想像すると、他人がゴーレムを操れるってことだ。まさに求めていた能力を獲得した。

 もちろんゾフィーに授与する。


「陛下、ありがとうございます。オラに新しい能力を授けてくれて」

「いや、頑張ったのはゾフィーだから。ごめん、俺は俺じゃなかった。催淫のせいだから、許してくれ」


「陛下は素敵だったよ♡。姉ちゃんたちに話したらオラはうらやましがられる」

 ゾフィーはニコニコしている。


「止めてくれー」

 恥ずかしすぎるから誰にも話さないでほしい。




 この日、順番を入れ替えて、後でまたゾフィーと閨をともにすることに。

 同じ女性が連続だと、新しい能力を獲得しないのが、【能力授与】の仕様なので。


 ゾフィーとの3回目の閨では【協働(コラボラティブ)ゴーレム】を獲得。ゴーレム同士が協調して働いてくれるようだ。

 とても便利な能力である。


 船を漕ぐのは、ゴーレムが同じような動作をすればいい。

 だが鉱山を掘る場合は、別々の場所を掘ってくれないといけないから。いちいち指示しなくてもゴーレム同士で判断してくれたら楽だ。


 ゴーレムに働いてもらって、人間は働かなくていい夢の国が実現しそうになってきた。


「ゾフィー、君は国の宝だ」

 俺は感動して、ベッドの上で裸のゾフィーを抱きしめてしまった。


「陛下♡」

 ゾフィーも喜んでくれて、俺にヒシと抱き着いてくれる。


 裏切り者はゾフィーじゃないよね、絶対。俺は信じることに決めている。

お読みいただき、ありがとうございます。


よろしければブクマ、ご評価を付けていただきますと泣いて喜びます。

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