25 田舎娘と閨をともにする1
◆◇◆
俺はベッドで上半身を起こしている。カバーで隠しているけど裸だ。
「魔法使い隊の中に裏切り者がいるかもしれない――」
ルナの言葉が、俺の心にこびりついている。
裏切り者はノルデン王国の男全員、約一万人に呪いを掛けて殺した大量殺戮者。
王国を危機に陥れた売国奴。
頭がイカれているサイコ女。
でもって超絶な呪いを発動したからには凄まじい魔力の持ち主。
百年に一人の天才と言われるルナに匹敵するか、それ以上ってこともあるかもしれない。
魔力を隠しているから、正体はルナにも見抜けない。
俺が魔法使い隊の女の子と閨をともにする時に見つけないといけない。
見抜けなかったら、裏切り者に能力を授与して、さらに強くしてしまう。
帝国軍と交戦中の我が軍の背後を突かれたら、大変なことになる。
責任が重大すぎる。
投げ出して、どっかに逃げたい。
カチャリとドアノブが回される音。
いきなりでびっくりした。
おいおいノックしてくれよ、と思うが扉が開く。
「うわー きれいな部屋だべ」
田舎っぺ言葉の女の子だ。
灰色のローブを着ている。前髪が長くて目が隠れている。
口元しか顔が見えないけど、にこにこしてるっぽい。
「ここに入っていいだか」
純朴そうな女の子だ。なんか和む。
「どうぞ。こっちに来て」
女の子は部屋の中を物珍しそうにキョロキョロしながら歩いてくる。
壁に飾られた絵や、花瓶に目を留めている。
ベッドのそばで立ち止まる。
「なしてベッドにカーテンがあるだか」
「それは天蓋って言うんだよ。何のためにあるのかは俺も知らない。おしゃれだからかな」
女の子は天蓋のレースに手を触れた。
「この布、絵が描いてあるみたいだべ。どうやってこんなの作るんだか」
レースは鳥や蝶の模様がある。
田舎っ子は、貴族の暮らしや礼儀作法を知らないようだ。
145セルチくらいの背丈。
閨をともにする女の子は決死の覚悟をしているピリピリした子ばかりだ。
王の寝室に来ても、豪華な内装を気にする子はいない。
この田舎っ子のように寛いだ感じなのは初めてだな。
「オラったらはしたないな。言われたとおりにしなくちゃ」
女の子はつぶやきながら、もそもそとローブを脱ぎ始める。
ベッドのそばで裸になるようメイドさんに指示されたようだ。
その後は何をしろと言われているんだろうか……
ばさっ
なっ
ゆったりしたローブの下は白いシャツで、胸がこんもりと膨らんでいた。
すごい隠れ巨乳。トランジスタグラマーってやつだ。
俺はとっさに顔を背けた。
視界の端で、女の子はシャツとショーツを脱いだ。
すっ裸になってベッドに入って来る。
石鹸のいい香りがした。
元は土の香りがしそうな子だから、メイドさんがお風呂でゴシゴシ洗ったんだろう。
「き、君、名前は?」
ドギマギしながら尋ねる。
「オラはゾフィーだ」
「いくつ」
「18だ」
俺と同い年だ。
「えっと……何をするか聞いてるんだよね」
「あい。陛下をお慰めしろって言われてる」
「いいっ それは違うような」
「オラ知ってるだ。おなごが、おとこにすること」
「え、マジ?」
「あい。オラは貧しい農家の娘だ。お姉ちゃんはみんな身売りして行っただ。お姉ちゃんたちが何をしているかは聞いてる」
ゾフィーの話に驚きっぱなし。
察するにゾフィーのお姉さんたちは娼婦として売られて行ったのだ。
俺が元いた世界でも、一昔前は貧しい家の女の子が身売りしてたけど……
ノルデン王国にも悲惨な境遇の女の子がいるんだな。
考えてみたら当たり前だ。
ノルデン王国の生活水準は元いた世界より低いから。
王国の主要産業は鉱業だけど、農家もちょっとはいるんだな。
寒くて、狭い土地で農業をやっていても、豊かな暮らしは期待できないだろう。
ゾフィーの一家は極貧生活を強いられている。
ルナの村も、帝国軍の襲撃で焼かれたって言ってたし。
貧しい上に、外敵の襲来に苦しめられる。この世界の女の子は本当に大変だ。
俺はゾフィーが哀れで、情が湧いてくる。
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