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18 可愛い子は旅をする

 ◆◇◆


 朝の10時。

 おやつ時だが、キキィはハルザ同盟への援軍要請のため早速出発する。


 執務室。

 キキィが真ん中に立つ。セーターにマフラーと、しっかり寒さ対策をしている。


 これからキキィが瞬間移動するハルザ市も北国で寒いのだ。

 左右にスーツケースが2つ置かれている。


 俺やアイリ、国の幹部に見送られてキキィは旅立つ。


「ハルザ同盟に瞬間移動して、いきなり不法入国者として逮捕される恐れもありますよねー」

 キキィは心配になることを口にする。


 前世のことわざで、「可愛い子には旅をさせろ」というのがあったが、わざわざ危険なところに行かせる者はあまりいないだろう。


「陛下から一応、使者の証をいただいていますが、警察の取り調べを覚悟しなければなりませんねー ハルザ市長に面会するまで、かなり時間がかかりそう」


 幼女が使者の証を持ってたら本物か疑われる。

 それにハルザ同盟は、ノルデン王国と関わりたくないだろう。


 キキィを牢屋に閉じ込めて、来訪が無かったことにする恐れもある。キキィをかくも危険な任務に赴かせるなんて……

 

 剣戟(けんげき)が交わされる場所だけが戦場じゃない。

 外交の使者こそが、武器も持たずに最も危険な場所に飛び込んで行く。


「陛下、私の武器はこれでーす」

 キキィは自分の頭を右指でツンツンする。


 まるで俺の考えていることを読みとったみたい。


「そして、これ」

 キキィは舌を、ちろっと出して見せる。

 かわゆい。


「舌戦に勝ってきてくれるんだな」


「はい。ハルザ同盟に我が国と結ぶ利益を説いてきまーす」

 キキィはけなげにも気丈に振る舞っている。


 だがもしキキィが捕らえられ、処刑されたら……

 【全世界瞬間移動】を授けた俺のせいだ。


 俺は幼女を死なせた責任を取って、腹を切らないといけない。

 つくづく【能力授与】は罪なギフトだ。


「信じているぞ。必ずハルザ同盟の艦隊を引き連れて来てくれると」

 俺はかえってキキィにプレッシャーをかけてしまう。

 気弱になりそうな自分をごまかしているんだ。キキィにすがるなんて俺ってつくづくダメな奴。


 内心では援軍要請はとても厳しいと思っている。

 ノルデン王国は今のところ戦力がほぼゼロだからな。ハルザ同盟側が一方的にノルデン王国を助けてやる形にしかならない。


 ハルザ同盟側にメリットはほとんどなし。下手したら共倒れになってしまうから拒絶するのが普通だ。


 だがキキィが頷く。


「ここ数日、陛下と執務をさせていただいて確信しました。新たなノルデン王はとても賢明だと。そして【能力授与】という化け物スキルを持っています。とても頼りになる王様」


 キキィの顔がちょっと赤くなる。


 ツンロリちゃんがドストライクを投げ込んでくれるなんて。俺はいつの間にデレさせることをした?

 昨夜のキキィのお父さんのマネをしたのが良かったのか?


 キキィは【全世界瞬間移動】を一発で引き当てたのをすごいと思ってくれたんだろうけどさ。


「そ、そうかな」

 面と向かってはっきり言われると照れて、謙遜する。


「陛下とともにノルデンの女たちは、男が全滅という国難を必ず乗り越えます。私は自信を持って言えますよー」


 キキィの堂々とした言葉に俺は感動する。


 ピンチの時こそ気丈でいなければならないのだ。

 10才児に教わってしまった。


 俺は心を入れ替えて、俺のすべきことに集中しよう。


「ああ、絶対に陸の戦いは勝って見せる。あと、海の戦いのためにゴーレム艦隊を作る。ハルザ同盟艦隊と帝国艦隊を挟み撃ちだ」

 俺は力強く約束する。


 横目で見ると、レオーナ、ルナが頷いている。

 陸の戦いの中心は最強の戦士と天才魔法使いになるだろう。彼女らも勝利を誓う。


 俺たちはキキィが少しでも強気で外交交渉に臨めるようにしたい。


 キキィは次にアイリの方を向く。


「宰相の仕事は、アイリ王妃に引き継いでもらいます。膨大な政務を処理してもらう必要があって、すみませんが」


「いいのよ。心配はしないで。キキィちゃんほどは上手く捌けないけど、私、頑張るからっ ぐすっ」

 アイリは涙を指で拭う。

 今生の別れになるかもと思っているようだ。


「じゃあ、行きますねー」

 キキィはスーツケースを両手で握る。


「お、おう。気を付けて。危なくなったら帰って来いよ」

 【全世界瞬間移動】を使えば、いつでもどこでも逃げ帰れるのが救いだ。


「逃げ帰ったら、また行く勇気を出す自信がありません。ハルザ市長に援軍要請を聞き入れてもらえるまで帰らないつもりです」

 なんとキキィは不退転の覚悟を決めていた。

 

 キキィの小さな体の周りには国を預かる宰相のオーラが立ち上って見える。


「そんな……」


「では、全世界瞬間移動」


 みるみるキキィの体が薄れていき、消えた。

 キキィはハルザ市に移動したのだ。


「行ったな」

 俺たちは顔を見合わせる。


「私も頑張らないとっ」

 アイリが両手の拳を握り締める。

 

「キキィをがっかりさせないよう早速、軍議です」

 レオーナも気合が入っている。

 

 俺たちは一人で戦いに行ったキキィに勇気をもらった。

お読みいただきありがとうございます。


身も蓋もない話を書いていると心細いので、ブクマやご評価をつけていただきますと、心の支えになります。

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