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14 イチャラブを見せつけとく

 ◆◇◆


 執務室。

 昼下がりに俺とアイリ、キキィが政務を行なっている。

 寒いから貴族の服装の上に毛糸のセーターを着ている。アイリもキキィもドレスの上にセーターとマフラー。


 最優先の懸案はキキィへの移動系能力の授与だが、どうしたもんか。

 書類仕事をこなしながらも、俺の心はここにあらずって感じだ。


「きゃああああ」

「中庭に不審者がいます」


 突然メイドさん達の叫び声がした。


 俺たちは執務室を飛び出し、中庭に向かう。

 

「もう敵が攻めて来たのか?」

「冬の間は氷で閉ざされているのに!?」


 次から次へと問題が発生する。


 廊下で、走ってくるレオーナと合流した。


 俺たちは中庭に面する回廊で立ち止まった。


 雪が積もった中庭に立つ一人の男。


 全身黒ずくめ。革ジャンぽい上着に、デニムっぽいズボン。サングラスかけている。茶色の長めの髪はビジュアル系バンドのようにスジ盛で立体感がある。肌は日焼けしている。年は18くらいか。


 真っ白な雪とのコントラストが際立っていた。


「ククク、冬の女神が俺に輝けと言っている。彫刻のごとく美しき漆黒の堕天使、ここに降臨」

 意味不明なセリフをほざいている。


 口ぶりからすると本人はカッコよくて、イケメンのつもりらしい。だが俺には奇特な服にしか見えないし、顔立ちは並だ。


「どうやって侵入した?」

 レオーナが大剣を抜きながら問う。


「リープで飛んで来たに決まってるだろ」

 男が薄笑いする。


「バッカス君!」

 アイリが俺の隣で、口に手を当てて驚いた。


「知っているのか、アイリ」

「あ、はい。私の従兄弟のバッカス・ギルナー君です」


「なに!? てことはこいつはノルデン人の貴族か!?」

 ノルデンの男は呪いでみんな死んだはずだが。


「男性が亡くなっていった時に、バッカス君が死ぬのは見てません。生きてたんだ……」

 アイリはあまり嬉しそうではない。


「オレ様はたまたま神聖ロマン帝国に旅行中でな。偶然にも呪いを免れたわけだ」


「ま、まさか。呪いを掛けたのはお前か!?」

 レオーナが大剣を構えて詰問する。


 バッカスが、ただ一人生き残っているなんて……

 状況的にバッカスが怪しすぎる。


 本当にバッカスが犯人だったら、自分以外の全部の男を殺すなんて最低最悪のクズ野郎だ。

 でもって、バッカスがハーレム王になろうという野望を抱いていそう。


「違うなァ。女神に愛され、生きる伝説たるオレ様の力を持ってすれば造作もないことだがな、ククク」

 バッカスの大仰なセリフと黒ずくめの服装にはどっかで見覚えがある。


 なんだっけ……


 あ、そうだ、メ○ズナックルだ。

 男子向けファッション雑誌。


 モデルの男たちの写真と一緒に飾られるイタいキャッチコピー。

 前世で俺が勤めていた教育崩壊校の男子に人気だった。

 どこの世界でもアホな男が好きなファッションって同じなんだな。


「バッカス君は勇者タイプで、剣も魔法も使えます。でも、どっちも中途半端な器用貧乏」

 アイリは辛辣。


「何の役にも立たないゴミってことですね」

 レオーナは吐き捨てる。


「アホ丸出しなバッカスに、呪いなんて高等なことはできそうにないが……」

 俺はアイリに小声で尋ねる。


「ええ、呪いを掛けたのは帝国の魔法使いでしょう。でもバッカス君が片棒を担いでいる可能性は大ですっ あなた、売国奴でしょっ」

 アイリがバッカスを指さす。


 バッカスは両手を広げてかぶりを振る。

「だから知らんと言っているだろう、ククク」

 めちゃくちゃ怪しい。


「もうっ 何の用で来たんですかっ」

 アイリはイライラ感を放つ。こっちはバッカスに用はないと言いたげ。


「ふ、オレ様は祖国の女が哀れでなァ 皇帝陛下に願い出て、降伏勧告の使者を任されたのだ」


「我らは絶対に降伏などしない」

 レオーナが大剣を振り上げる。

 ちらっと俺の方を見た。ムカつくからバッカスを斬っていいかと確認している。


 俺はレオーナに右の手の平を向けて「待って」と合図した。


「てゆーか、貴様は何者だ? なんで男の貴様が生き残っている?」

 バッカスが俺を不審な目で見てくる。


「俺にはなぜか呪いが効かなかった」

 嘘をつくことにした。転生者というのは秘密だ。


「ふん、貴様は男じゃないってことだろう。オカマ野郎が」

 バッカスが蔑んでくる。


「ああ、俺はヘナチョコさ。だが男がいなくなったから、姫と結婚して王様にしてもらったよ」


「なに……」

 目が点になるバッカス。

 おおかたアイリのことが好きで、自分の女にしてやろうと思っていたのだろう。


「はい。私は妻にもらっていただきました」

 アイリが俺の左腕に抱きついた。ラブラブなところを見せつける。


「くうううう……」

 バッカスは歯軋りして、睨みつけてくる。


「陛下、キスしましょうよ」

「ああいいよ、アイリ」


 ちゅ んちゅ くちゅ


 俺とアイリはバッカスに見せつけるように身を寄せ合って熱いキスを交わした。


「やめろおおお――――」

 中庭にバッカスの絶叫が木霊する。


「ふふん」

 アイリがドヤ顔。


「許さん。貴様は許さんぞおぉ」

 バッカスが殺意のこもった視線を俺に向けてくる。


「んで、降伏の条件を教えてもらおうか」

 俺はバッカスの殺意をスルーして、話を元に戻す。


 王として、我が国女性の最善を考える義務がある。

 降伏はカッコ悪いから拒否というわけにはいかない。


 頼みの綱は、ハルザ同盟への援軍要請。だが実現のハードルはとても高い状況だし。


「くっそムカつく。オレ様が皇帝陛下に頼み込んで寛大な条件を引き出してやったってのによ」

 バッカスは怒りを露わにしながら口を開く。


「お前に恩着せがましくされる覚えはない」

 レオーナも言い返す。


「うるさい。ノルデンの女性は全員身分に応じて、帝国の男の側室や奴隷になる。あと、全財産を没収だ。そこのムカつく貴様は八つ裂きにしてくれるわっ」

 バッカスが俺を指差して怒鳴った。


「はああぁ 侵略されるのとどう違うというのだ?」

 レオーナが呆れる。


「汚い男たちに輪姦されずに済むぞ。身分の低い女は輪姦されるだろうがな、クク」

 バッカスがせせら笑った。


「断固拒否だ。汚されるくらいなら、みんな死を選ぶ」

 レオーナは毅然としている。


 俺は腕組みして考え込む。


 バッカスの言う降伏条件は……妥当なのだ。


 俺の転生前の世界では、中世までは降伏しても全財産没収と女性の凌辱は免れなかった。

 

 帝国の処遇はマシと言えばマシなのだが……


「アイリは……いや、王妃はどうなるんだ」

 俺はバッカスに問い掛ける。アイリが前世の名前に改名したことをバッカスは知らない。俺がどうなっても構わないが、アイリは守りたい。


「ククク、皇帝陛下が側室にして下さるそうだ。側室の末席からスタートだが、陛下へのご奉仕ぶり次第で地位が上がっていくぞ」


「く……」

 亡国の姫が侵略者の女にされることは多いが、嫌だ。

 やはり降伏はありえないな。

ご評価とブクマをいただきましたら感激いたします。

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