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13 破滅フラグしかない⁉︎ 回避するには

「こほん。ゴーレムを作れたとしても、海戦に勝てるとは限りませんよー」

 キキィが妄想に浸っていた俺を現実に引き戻す。


「ん、どういうこと?」


「帝国艦隊は200隻でーす。こっちは50隻しかありませーん。いくらゴーレムが疲れ知らずで船を動かせるといっても、圧倒的に数で負けていまーす」


「む……そうか」


 海でも劣勢を覆す戦術を考えないといけないのだ。


 俺は世界史教師だった。

 古今東西の戦争を覚えている。

 戦史を教訓にしよう。


 ガレー船を使って、数で不利な方が勝った海戦……

 前世の2500年前にあったギリシャのサラミス海戦だ。


 ペルシア帝国艦隊約千隻が襲来した。

 対抗するのはアテネ艦隊約300隻。数では圧倒的に負けていた。


 戦いの様相については諸説あるが、俺の見解はこうだ。


 アテネ艦隊はサラミス湾にペルシア艦隊を誘き寄せた。アテネ艦隊はサラミス湾内で反転。ペルシア艦隊を迎え撃つ。


 そこにスパルタはじめアテネの援軍の艦隊がサラミス湾の外に到着。ペルシア艦隊の背後を攻撃した。

 狭い湾内で、ペルシアの大艦隊は身動きが取れなくなった。前後からアテネやスパルタの軍艦にぶつかって来られるとかわしようがない。結果はアテネ艦隊の勝利。


 やはり海戦でも、地形を活かすことが欠かせない。

 ノルデン湾に帝国艦隊を誘き寄せて挟み撃ちにするのだ。


 それ以外に勝つ方法はない。

 だが問題は、帝国艦隊の背後を突く方法……


「我が国に援軍の艦隊を寄こしてくれる国なんてないよね、はぁ」

 俺はまたしてもため息。


「え? ありますよ」

 キキィが意外そうな顔をしている。あ、あるんだ、味方の国が!?


「俺はまだこの世界の知識が乏しい。キキィには当たり前でも、俺は知らないから教えてくれ。どこが味方してくれるんだ?」


「ハルザ同盟です。大陸北岸にある10の商業都市は帝国から独立していて、互いに同盟を結んでいます」


「ほう」

 俺は目を細める。


「ハルザ同盟の生命線は海上貿易ですから、帝国に匹敵する艦隊を持っています」


「本当に味方になってくれるのか」


「以前は我が国と友好関係でした……」

 キキィは歯切れが悪い。


「今は?」

「わかりません。我が国に男がいなくなったとわかって、味方するに値しないと思っているかもしれません」

 キキィが口を結ぶ。


 俺は頭を掻いた。

「我が国が滅亡寸前で、帝国に攻められそうとあってはね。火中の栗を拾ってくれるはずはないか」

 元いた世界のことわざを使った。

 アイリはうなずいているが、他の者は意味不明でキョトンとしている。


 ハルザ同盟が我が国に援軍を出せば、帝国の怒りを買って、ハルザ同盟も攻め込まれることになる。いくら互角の艦隊を持っていても、無益な戦いは避けたいところだろう

 ハルザ同盟が我が国を助ける価値は、俺にはあまりないように思える。


 レオーナが割り込んでくる。

「ハルザ同盟は我が国の男が死滅したことを知っているのかな。知らなきゃ、隠しとけばいいんじゃないだろうか?」 


「知ってますよー 我が国の男たちが死んでいく呪いが発生した時、ハルザ同盟の商人が町にいましたから。彼らは慌てて逃げて行きました。結局死んだでしょうけど、いくらかは死ぬ前に本国にたどり着いているはずでーす」

 キキィが即レス。


「ちっ、ハルザ同盟に帰った男たちが、バタバタ死んでいったら本当だと思うな」

 レオーナが舌打ちした。


「援軍は無理か」

 俺は肩を落とす。


「でも、でもですよー 他に助けを求める相手がいません。ここは私を外交交渉に派遣してください」

 キキィが胸に手を当てて訴えた。


「キキィが?」

 みながポカンとする。

 宰相とはいえ幼女。外交という難しそうな言葉がピンと来ない。


「父がハルザ同盟を訪問したことがあります。私も同行して、ハルザの市長とは面識があるんですよー」


「う、うん。面識があるって大事だよね」

 俺はせっかくキキィが一生懸命なので、全否定はしない。

 でもキキィが市長を覚えていても、向こうは忘れているだろう。せいぜいキキィは可愛らしい子と思ったくらいだ。外交交渉の相手とは見ていない。


「しかし、問題はどうやって行くかです。しょぼーん」

 キキィ自身が一転して気落ちする。


「ああ……今は海が凍ってるな」

 俺は流氷でいっぱいの港に目を向ける。


「はい。氷が溶けたら、帝国艦隊が攻め寄せます。外交交渉の時間がありません」


「ダメじゃん」


 結局キキィの案は何の役にも立たない。


「リープの魔法は使えないの?」

 ルナがぽつり。


「リープ?」

 俺は初めて聞く。


「瞬間移動の魔法でーす。行ったことがあるところにしか行けませんけど。私は魔法が使えないんですぅー」

 キキィが拗ねた感じで答える。

 頭いい子だけど、魔法が苦手らしい。


「ルナが使えるなら、連れて行ってもらえば?」


「無理。私はハルザに行ったことがない。リープを唱える本人が行ったところでないと」

 ルナが答えてくれる。


「私がルナと手を繋いで、リープすることはできないんですよー」

 キキィも補足した。


 八方ふさがりだ。


「キキィ自身がリープを使えるようになるしかないってことか……」

 俺は腕組みして打開策を考える。


「陛下、キキィちゃんと閨をともにしてくださいっ」

 アイリが進言してくる。


「えええ……」

 絶句。だってキキィは幼女。

 アイリは、まぢ鬼畜。よくそんな非道な発想を思いつくよな。


「陛下がキキィちゃんに有効な能力を授与して下さる他ありません。リープか、別の移動系の能力を」


「で、でも、そう都合よく能力が得られるとは……」

 俺がキキィと閨をともにするのは問題が多すぎる。


 びゅうううううううう

 一段と寒い風が吹き付ける。

 

「王宮に戻りましょう」

 アイリが震えながら促す。

 

 港にいても名案は思いつきそうにないので、俺たちは引き返すことにした。

 

 10才と閨をともにするなんてありえないんだけど、他に方法はない? キキィと閨をともにしたら俺は人として終了。


 やらなければ国家滅亡。

 どっちに行ってもダメじゃん。


 ついに破滅フラグしかない状況に追い込まれた。

 どうすりゃいいんだ。

お読みいただきありがとうございます。


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