11 若くて美しい未亡人
◆◇◆
次に閨をともにするのは歩兵隊の女性たちだと聞かされている。一晩の目標は十人。
レオーナは「いっそ十人を一度に寝室に入れてみてはどうでしょう」と言っていた。隊長らしく一気に攻め落とす的な強気発言だ。
だけど女性を十把一絡げに扱うなんて失礼なこと、俺にはできない。
それに十人を一度に相手にしたところで、獲得できる能力は一つだけ。十人を相手にする意味はないことになる。
実際に複数人と閨をともにしたことがないので、わからないけど恐らくそうだ。
最初は歩兵隊副長のサーシャ。
20歳くらいのお姉さんだ。
予めアイリに聞かされた話ではサーシャは未亡人。
若いのに未亡人だなんて、かわいそうだな……
俺はベッドで寝そべっている。
サーシャはベッドの横で、ビキニアーマーをしずしずと外している。
レオーナによると、ビキニアーマーはノルデンの女性歩兵の制服らしい。
胴体は防御力ゼロなので大丈夫なのかと思ってしまう。
が、胴体は盾で守れば良くて、動きやすさを重視しているそうだ。
「陛下、私、今晩を楽しみにしていたんですよ」
サーシャが話しかけてくる。
「そ、そうなんだ」
俺としては嫌がられてなくて、とても気が楽になる。
サーシャは全ての防具を外し終えた。俺の視界の隅に、サーシャの白い体が入る。
サーシャはレオーナほどじゃないけど、おっぱいが大きい。
女性歩兵隊員は豊かな胸の持ち主が多い印象。胸の大きさで選抜しているんじゃないかと勘ぐってしまう。
胸が大きいと動くのに邪魔だからそんなはずはないんだけど。胸が邪魔なのを補って余りあるほど身体技能に優れた女性たちなのだ。
サーシャは長髪を留めていたバレッタを外す。
ブロンドの髪が、ふぁさっと広がった。
「私は新婚でした。夫も歩兵隊員。厳しい訓練を一緒に乗り越えて来た仲間」
サーシャがベッドに入って、カバーをかぶる。俺の隣で座った。
「私、夫と暮らせて、とっても幸せでした」
「…………」
俺は胸が締め付けられる。
サーシャは淡々と話した。
「戦士だからお互いに死ぬ覚悟はできていました。短い結婚生活になるかもしれないから、一緒にいられる時を大事にしようって愛し合っていました」
「結婚して何年だったんですか」
「半年です。短すぎですよ。夫は呪いで苦しみながら死んでいきました。私は幸せの絶頂から地獄に突き落とされたんです……ううう」
サーシャは悲しみを堪えきれず、涙声になる。
「呪いを掛けた奴が許せないですね」
「必ず夫の仇を取ってやります。だから陛下には私に能力を授けていただきたいんです。夫も許してくれると思います」
サーシャに夫のことを話されると、俺はしゅーんと意気消沈してしまう。サーシャと閨をともにすると寝取ったみたいだから。申し訳なさでいっぱい。
「ごめんなさい。陛下は夫のことを気にしないでください」
サーシャは俺が困っているのを察したみたい。今さらだけど、フォローしてくれる。
「は、はい」
でも俺はちぢこもってしまう。
とてもじゃないけど女性を抱けない時は、アイリに催淫を掛けてもらう。
俺はサイドテーブルに置いたベルを鳴らした。
チリンチリン
ベルの響きを扉の向こうにいるメイドさんが聞きつける。
別室で執務中のアイリが呼ばれてくる手はずだ。
すぐにアイリがやってくる。
未亡人と一緒にベッドにいる姿を見られるのは恥ずかしい。
アイリは心を無にしたような、虚な目つき。
「陛下に催淫っ」
アイリは俺を指差して唱える。
「あなたはどうしますか」
アイリはサーシャに尋ねる。
「ふふ、私は大丈夫」
サーシャが落ちついた声で答える。
「そ、そう……なんですか」
アイリは意外そうにする。
俺も、サーシャは催淫で狂わないとやってられないと思うのだが。
「じゃ、じゃあ、よろしくってことで」
アイリが恥ずかしそうに退散する。
扉が閉められる。
「ねぇ陛下ぁ」
サーシャが身を起こして、俺に覆い被さった。口調がエロい。
目の前にサーシャの顔。
サーシャは左目の下に泣きぼくろがある。
とても悲しげな感じがする。
「今晩だけは……夫を忘れたいんです」
サーシャが唇を近づけて来た。
◆◇◆
サーシャはさすが元人妻。
俺にとっては初めての行為を積極的にしてくれた。
これまで俺と閨をともにしたのは処女だったから、びっくりすることばかりだった。
「陛下、素敵でした♡」
サーシャはうつ伏せで枕を抱えて、うっとりしている。俺の心なしか、サーシャは満足げ。
苦しみが少しは癒されたのだろうか。
「ど、どうも……」
俺は翻弄されて、魂が抜けちゃった感じ。
「新しい能力【一撃必殺】を獲得しました。女性または自分に授与してください。考慮時間は3分です。時間を過ぎた場合は自分に授与されます」
女性の声が聞こえた。
なんかすごそうな能力だ。
一瞬、俺がもらっておいてもいいのかもしれないと思ってしまった。
だがサーシャは夫の仇を取りたくて、俺なんかと閨をともにすることにしたのだ。
「サーシャさんに授与」と念じた。
サーシャの体が輝く。
「えっ 【一撃必殺】!?」
サーシャが跳ね起きる。
「すごい能力なんですよね」
「もちろんっ どんな強敵でも25パーセントの確率で即死させられるんですっ 4回斬り合うことができればほぼ勝てるってことですよっ」
大興奮。
「喜んでいただけるなら俺は本望ですよ」
ハズレスキルと言われなくて心底ホッとする。
「あ、ありがとうございます」
サーシャが涙ぐみ指で目元を抑える。
「これで夫の仇をとってやれます……うう……できるだけ多くの帝国軍を道連れにして、私は……夫の所に行きます」
サーシャが不吉なことを言う。
死亡フラグの一種なんだろうか。
俺としては、味方の女性は誰も死なないでほしいんだけど。
サーシャに俺はとても強い能力を授けてしまった。サーシャは死に場所を求めて、敵中を突き進んで行くんじゃないだろうか。
【一撃必殺】は、どんな強い敵でも同じ確率で発動するという。
だったら敵の大将を討ち取ってやれと思う。
でも【一撃必殺】が外れる時が来る。サーシャはいずれ必ず討たれてしまうのだ。
俺が授与した能力が、サーシャを死地に追い込むことになる。
やっぱり【一撃必殺】は俺がもらっとくべきだった。激しい後悔に襲われてしまう。
「サーシャさん、お願いです。一人で敵中突破とか止めてください」
俺は懇願する。
サーシャは黙ってベッドから降りる。
俺に背中を向けて、ビキニアーマーを身に付け直す。
「絶対に、絶対に無茶しないでくださいね」
俺はサーシャが戦死したら、俺も責任とって死なないといけない。
「そうだっ サーシャさんは切り札にしましょうよ。敵のボスキャラが出てきた時に戦っていただくことにして、後ろで控えていて下さい」
俺はサーシャに無茶するつもりはないと答えて欲しくて話しかけ続ける。
「陛下……」
やっとサーシャが返事をしてくれる。
「わ、わかってもらえましたか」
「本当にお優しいですね、陛下は。でも私は感謝してるんですよ、能力を授けて下さって」
サーシャは背を向けたまま、ビキニを胸に当てている。
「どうか……死なないと言ってください」
サーシャはゆっくりと首を振った。
「夫や恋人を亡くした兵士は、私だけじゃありません。みんなに能力を授けてやって下さい」
ビキニアーマーをつけ終えたサーシャが部屋から出て行く。
俺は愕然とした気分で、扉が閉まるのを見送った。
この後すぐに次の歩兵隊員がやってくる。
俺は狂うしかない、と思った。
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