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(本当に、なんなのこれ!!)
言葉は聞いたことがない。今いる場所も全く見覚えがない。時刻も覚えがない。
ひとまず外に出ればなんとかなる、と開けた鳥居のところに飛び込もうとしたとき、それはいた。
「馬…??」
形は、馬。
ただし翼がついている。
そしてこちらを睨み据えている。
「ごめん、通して…?」
近寄ろうとしたところ前足を踏み鳴らされた。そのまま首を振られる。
覚えず舌打ちがこぼれた。後門の軍人、前門の馬(仮)。
数が少ない方から、と一歩踏み出すと鼻を鳴らされた。そのまま耳を後ろに倒される。
(これは近づいたらだめなやつ)
かみつくぞ、の合図と聞いたことがあったためたたらを踏んだ。腰が引けた瞬間、後ろから熱くて太いものが腹に巻き付いた。そのまま肩にも巻きつかれ、動きを止められる。
追いつかれたと気づいて反射で足を振り上げた。かかとを相手の靴へ落とすつもりで容赦なく落とす。が、
「かったい!」
見下ろすと頑丈そうな編み上げ靴。思わず振り仰ぐと口元だけほころばせた先ほどの軍人がいた。そのまま顔が近づいてくる。肩に巻き付いていた腕が離れ、頬と耳のあたりで固定され、顔のドアップと同時に温かくて柔らかいものに口をふさがれた、までは記憶が残っている。