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変わる戦況

「クレア!」「!」


 ベリメリヌが弾け飛んだ先には既に距離を詰めていたクレアが。

 あっという間に起きた出来事であったが、千載一遇のチャンスを逃すほど鈍いクレアではなかった。


 宙から飛来するベリメリヌを見据え、その場で足裏に力を籠めて溜めを作る。

 偶然にも落下地点はほぼクレアのいる位置だった。


 地面に落下する直前でベリメリヌも『撥弾(ばちはじ)き』の衝撃から意識を取り戻す。しかし既にクレアの斬撃を防ぐ術はほぼ無い。

 巨体が空中で体を大きく(よじ)ったと同時に、クレアもまた構えた大剣を大上段から振り抜いた。


「う、らぁ!」


 ベリメリヌが宙で上体を反らしたため脳天直撃コースは避けられたものの、乾坤一擲の一閃は左肩にぶち当たりその後の押し込みで毛と皮を分断して肉に到達し。

 ―そして武骨な剣身はついに、脇の下をもすり抜けた。



 今度こそまごうこと無き絶叫が、村と山に殷々(いんいん)と響き渡った。



「――見事だ!」


 ジリ貧に近い戦況を覆す一撃にマーリンは思わず声を上げる。

 左腕を斬り落とされて地面に落下したベリメリヌはつんざくような絶叫を繰り返す。巨獣が地面に落下した際の衝撃でクレアもまた吹き飛ばされていたが、逆にそれが功を奏し、痛みにのたうち回るベリメリヌの被害を避けることが出来た。


 今がチャンスだ。


 この三人でなくとも、村人であっても愚か者であってもはたまた五歳児であってもそれは理解できた。


 そして逆を言えば、ここで決めきれなければ危ういことを長年の経験からマーリンは知っていた。

 魔獣には人間よりも強い生存本能があり、それは闘争本能と直結している。強力な魔獣は特に、死に瀕した時、命の最後の灯で周囲の敵もろとも燃やし尽くそうと暴れ狂う状態に突入することが有るのだ。


 左腕を失ったベリメリヌは間違いなくその状態に片足を突っ込んだ。しかしまだ自暴自棄に陥るような状況ではないはず。現に荒い息を吐きつつ立ち上がったベリメリヌは依然として理性を残しているように見える。


(この状態のうちに削り切る)


 (たが)が外れたハイクラスの魔獣など相手にすれば人間どころか本当に村が消えるかも知れぬ。


 ここからは速度勝負。

 そのことをクレアとヨウに伝えようとした時だった。




 ―なまぬるい、一陣の風が戦いの場を通り抜けた。



 痛みに喘いでいたベリメリヌが、何かに気付いたように首をもたげてあらぬ方角を向いた。


 そうして眼を見開き数拍呼吸を止めた後。




 ―突如としてこの日最大の咆哮(ほうこう)を上げ、魔獣の周囲で異常な量の魔子が乱舞した。

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