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第2フェーズ

引き続き残業の嵐です。在宅は終電ないのが良いのか悪いのか。0時に上がれただけ良しとしよう

読んでくださっている方、いつもありがとうございます。

 刹那。

 

 十メートルは有るやもしれぬ空を裂く五本の亀裂が。触れれば切れそうな風を巻いて射出された。


 止まることに全勢力をかけたクレアはもう避けきれない。マーリンが目を見開く。


「『息吹(アンモーティ)』!」


 そのクレア目掛けて、咄嗟にヨウが魔状を行使していた。

 直後、ターゲットの彼女の身体が風に掬われて空中に投げ出され、間一髪で直撃を免れる。


(よくやった!)


 思わず心の中で快哉を上げたマーリンは、その間にも構築していた魔状を繰り出す。


「『鉄幕(エネフ)』」


 土を隆起させ可能な範囲で硬質化するだけの初級魔状。しかし魔子操作量が優れている魔状師であればそれだけ硬質化または長大な土壁を築くことが可能となる。今回はスピードを重視したが、魔獣とクレアの一直線上にあった村を守れれば良いため、規模を制限した分硬化に魔子を注いだ。


 間髪入れず、鉄幕に空間斬撃が着弾し破壊音と土煙が一時その場を支配した。

 粉塵が少し引いた後に見えてきたのは、ズタズタに切り裂かれた土の壁。しかしの後ろに控えた村には被害は無いように見え、三人はほっと息を付く。


 吹き飛ばされたクレアは呆然とした顔のまま土壁の惨状を見つめていた。


「クレア!戻ってこい!」


 びくりと肩が跳ねたが、奥歯を噛みしめた顔でこちらを向くと、真っ直ぐこちらに走ってきてマーリンの前で急停止した。


「……ごめん」

「別にいい。……考えなしだったがな。言っていた通りベニメリヌは魔状に近い空間斬撃を使う。文献でしか知らんが、熊のくせして火炎を操るとも言われていた」


 ちらりと未だふらついている熊を観察する。

 間違いなく直撃した。いくらクラス5とはいえ、かなりのダメージを与えられたと見ていい。


「クレア、これからはお前が前衛だ。ヨウ、お前はさっきと同じくクレアの支援兼援護射撃を頼む。俺も遠距離から隙があれば狙うが、どちらかと言えば後方支援だ」


 驚いた顔をしたのはクレアだった。


「私で、大丈夫か?」


 その言葉に目の前の男は鼻で笑う。


「は。少し先走っただけで自信を無くしたか? 時間がない。要点だけ言う。お前のやることは変わらん。無理はせず削れると思ったら削れ。今は感電(スタン)状態になっているがその内動けるようになるだろう。それまでに体を動かしておけ」


「重要な点が一つ。魔獣と村の直線上で戦うな。先ほどのような魔状で攻撃された場合、正対した先に村があれば被害が出る。 ―死んでも守るんだろう。ならば死ぬ気で村から引き離せ」


 矢継ぎ早な説明に目を白黒させつつも、最後の言葉を聞いてクレアの目から迷いが消えた。

 頷く彼女に認めた後、マーリンは手を振った。


「よし、行ってこい」

「おおよ!」「はい!」


――


 クレアを前衛にして戦うことはもちろん危険を伴う。しかし様々な危険性(リスク)を考慮するとこうするしかないのだ。


 マーリンは上を向く。ヘケット村の上空だけ雲が薄く、雨も霧のような小雨に変わっていた。

 先ほどの中級雷魔を同じ行使速度ではもう撃てない。撃つにしても数倍の時間がかかるだろう。そうすると高速軽打の魔状で勝負することになるが、大した火力の無い攻撃をいくら繰り返したとてベニメリヌには効きはしまい。しかし時間をかけるという事はその間ベニメリヌを村に被害が及ばぬよう食い止めつつヨウを守らなければならない。クラス5の魔獣に既に危険生物と判断されたであろうヨウを。 一度でも突破されて一当てされればその時点で作戦は失敗だ。よしんば回避出来たとしても、魔状行使は破棄(キャンセル)されまた一から組み上げていくのか。とてもそんな悠長な作戦を取る訳にはいかなかった。


(言っても詮無いが。もう少し時間があればな)


 時間とは修練の時間のことだ。ヨウの中級雷魔『雷童子』は恐ろしい程強力だ。あんなものを、雨雲があれば二分で行使可能なのは(はなは)だイカれている。しかし欠点が無いわけではない。



 射程範囲だ。


 あの球場の雷雲は自身の頭上あたりにしか生み出せない。本当の安全策で行くならば、ヨウは表に出ずクレアとマーリンが死に物狂いでベニメリヌを一箇所に食い止めて、その間にヨウが遠隔地から『雷童子』を行使するのが一番ではあった。しかし今はまだそれは不可能な作戦なのだ。


 一撃完璧に命中させることが出来ただけで僥倖だったのだ。


(意外にも短期決戦かもしれん)


 こちらとしては、今のダメージが消えない内にベニメリヌを戦闘不能にしたい。


 まだフラつきの残る熊の魔獣だが。クラス5だ、こんなものでは有り得ない。

 彼らは災厄と言って差し支えない生物なのだから。

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