感電
ここ三日間は寝る時間3時間程度の高稼働状態で全然進められなかったです。
変な時間帯に更新ですが、読んでいただけると嬉しいです。
中級雷魔状『雷童子』。
自然現象を模した魔状のため、雨雲の多い状況でなければ複数人でも時間のかかる大規模魔状である。それが中級なのだから雷属性の魔状はほとほと規模感が狂っている。またこの規模故、多対多の場面でなければ使われないのが通常だ。
天地が裂けたような鳴動と光が一帯を包んだ後、幸いにして目を死守した者が見たもの。
それは災厄の象徴であった巨大な魔獣がどうと音を立て倒れた瞬間であった。
先ほどの落雷に驚いた村人が、村の中から遠巻きに十数名顔を出していた。
そして見たこともない程巨大な魔獣に再度驚き、しかもその魔獣が魔状によって倒れ伏したという事実に三度驚愕し一様に声を上げた。
「マジかよ。倒したのか?」
私まだ何もやってないんだけど、とクレアが寂しそうに零したと同時。
「―まだだ!」
鋭いヨウの声が響いた。
気付いた村人の声が、歓声から悲鳴へ変わる。
ヨウの『雷童子』を受けた敵は一度地面に倒伏したものの、ぶるぶると震えながらも再び立ち上がろうとしていた。
「ゼンネル! 村の人間を遠くへ追いやれ! 退避させろ!」
少し前に持ち場から戻ってきていたゼンネルは率先してベニメリヌ以外の魔獣を狩りつつ村を守っていたが、マーリンの珍しく切羽詰まった声に身を翻して柵を越え村人がいる方向へ走り去る。
マーリンはゼンネルが素早く行動に移したことを確認し、再び巨獣を視界に収めた。
「頑丈だが……でかした。感電だ」
しかし起き上がるために巨体を支えていた手も大地を踏みしめる足も痙攣したように覚束ない。肉食獣らしい凶悪な顎からは、同じ生命である事が伺える薄桃色の舌と涎がだらしなく溢れ出している。
千載一遇の好機であることは誰の目にも明らか。そう見えた。
「これは行くだろ!」
まだ動けないと理解した瞬間、飛び出したのはクレア。
ここで決めて村を守る。災厄級の魔獣を、クラス5を私が倒す。
「クレア止まれ!」
マーリンの声が聞こえたが、今は攻めるときだ。慎重を期すれば機を逸する。
ある種の本能に従って突進したクレアは。
―まだ膝をついたままの魔獣と眼が合った。
(――っ)
ぐつぐつと。
煮え滾り溶け出した紅玉のような眼差し。
本能で飛び出した彼女は、さらなる本能の叫びによって体が急停止しようとする。
突発的に溢れたアドレナリンが思考処理を加速させ、周囲がスローモーションの世界に意図せず踏み入れる。
―それは遥か遠い地球で確認された「タキサイキア現象」。
つまり、「走馬灯」と同じ現象であった。
いつの間にか、ベニメリヌの震えていた手が中空を引っ掻いていた。
刹那。
十メートルは有るやもしれぬ空を裂く五本の亀裂が。触れれば切れそうな風を巻いて射出された。




