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助太刀

評価、ブックマークありがとうございます!

これから仕事が忙しくなりそうなのですが、なるべく切らさず更新していきます。

 まさしく劇的な一撃で勝利したクレアさんだったが、ナハセ村のアドミラドリアと比べても明らかにデカい巨獣を真っ向から迎え撃ったのだ。ダメージがない方がおかしい。

 すぐにでも壊れそうな剣で体を支えなければ立っていられない状態なのに、もう一体のアドミラドリアが急接近してくれば諦めるのも分かる。


「でも今回は俺がいますよっと」


 距離は十分。

 柵用の太い丸太の上に立っていた俺は、重低音を響かせて疾駆する巨体目掛けて、魔状「氷弾連」を放った。

 目の前の敵にばかり目を向けていたアドミラドリアは、想定外の攻撃に思わず吠えた。


「全弾着弾」


 ただアドミラジほど脆くはないようで、分厚そうな外皮と体毛にぶつかって砕けた弾もある。所詮は氷。ダメージはありそうだが致命傷にはならない。

 しかし水弾を大きくすると芯まで凍らせることができなくなることは確認済であるため、何とか貫通力を上げる方法を模索する必要がある。


 とりあえずアドミラドリアの突進は止まった。


 満身創痍のクレアさんが驚いた顔でこちらを向く。自力で動けないなら退避させなければならないので、まずは『巡』を行使して高速で近づく。


「クレアさん、動けますか。クレアさん?」

「今のは、ヨウの魔状?……いや、動くのは無理っぽいな」


 呆然とした表情であった彼女の、一拍置いての回答を聞くと同時に、クレアさんをすくい上げた。

「うおぃ!ちょっと!」という声が聞こえたが、肩に乗せたまま跳躍して柵の内側に降ろす。

 正直動けない人がいる方が困るし、悠長にしている時間は全くなかった。

 ちなみにお姫様抱っこではなく山賊抱っこである。


「そりゃこっち来るよなあ」


 急襲した氷弾に面食らっていた巨大兎も平静を取り戻したのか、こちらを見据えて再び飛びかかってきた。

 柵にというか民家に近づけるのは避けたい。しかし強烈なカウンターで再度村から引き剥がしたいのだが、近づきすぎているため強い魔状を行使する時間が取れない。

 ただし距離を取らせることは難しいにしても、一時的な足止めはできるはず。

 その間にゼンネルさんが来てくれれば、とどめを刺してくれるはずだ。


「氷弾連」


 狙いは頭。足止め目的だが支援役が近くにいるため襲われる可能性がある。

 であれば、あわよくば殺す。


 五発ほどまとめて頭蓋を襲う。全て着弾。

 魔獣は着弾した衝撃で出足が鈍るが、ノックバックまではしない。


 さらに追撃で五発。全て着弾。

 次は大きな腕で守りを固めるが、指を掠めた氷弾が一本をえぐり野太い叫び声をあげた。完全に足が止まる。


 新たに装填していた五発を追加。全て着弾。

 頭はガードされているが、すでに前に進むことをあきらめたのか、完全防御の状態となっている。


 しかし。

 やはり氷弾では軽い。力づくで距離を取らせることができない。

 しかし強力な魔状は行使過程に時間がかかる。それまでに再度突進を許してしまうのは本末転倒である。


 こちらから仕掛けるしかないか。

 今の完全足止め状態であれば一つだけ、短時間で、且つ村と魔獣との距離を取らせることのできる『及』がある。


 あれを『及』というかは怪しいが。


 構築済の残り五発のトリガーを引く。全て着弾。

 攻撃が止んだと勘違いした兎に無慈悲な氷の雨を叩き込んでその場に縫い付ける。足が止まっていることを確認した俺は、腹に気合を入れて『巡』を行使して急加速し、一足飛びにアドミラドリアに近づいた。


(……怖え!)


 近接戦未経験の身からすれば、生きた魔獣に近づくことのなんと恐ろしいことか。この間合いでずっと戦っていたクレアさんには改めて尊敬しかない。


 ―しかも今から俺は、『巡』を解除しなければいけない。


 流石に無謀だと思うが、小さい脳を働かせたアドミラドリアが完全防御のまま少しずつ前進する方法に気づいた場合、徐々にジリ貧になることが分かっていた。


 よって、一度だけ無茶を行う。

 これっきりだ。


 『巡』を行使しながら『及』も行使できればよいのだが、それは目下練習中だ。

 ワザと遅れて撃ち込んだ三発の氷弾が魔獣を捉える(かたわ)らで、俺は、躊躇しそうな足に喝を入れて高速で魔獣に接近した。


 勝負は一瞬。



 『巡』を解除。『及』を行使準備。

 気配に気付いたようにアドミラドリアが上げていた腕の隙間から周囲を伺う。


 『巡』の解除が遅れたが、この『及』は速い。


 アドミラドリアの目が俺を捉え、驚いたように体を揺らした。


 半径三メートル内に有る魔子をアドミラドリアと俺の間に収束させる。俺は一歩踏み出し、距離を縮めるとともに魔子を無理矢理圧縮する。

 対してアドミラドリアは周りに氷弾がないことを確認すると、勝利を確信したように再び俺を見据えた。


 魔子の圧縮が完了。


 後ろ脚を折り、俺に飛び掛かる態勢に移行する直前。

 俺は片手用盾ほどに圧縮した魔子に掌を添え、そのままアドミラドリアの体側に掌底を突き出す。



添え撃ち(ヘキトーム)



 突き入れた圧縮魔子が体表に触れた瞬間、魔子が一気に解放され、生まれた振動波による衝撃がアドミラドリアを側面から襲った。

 巨体の側面のあばらが明らかにへこみ、足が地面から浮いて地面と水平に吹き飛んでいく。


 二度三度と転がったアドミラドリアは、立ち上がることができない。

 口から血が流れ落ち、苦し気な息を吐き続けている。


 距離も時間も使いたい放題の状況で、俺は最後の魔状を構築し始める。


 不意に、雌であろう魔獣が、転がったまま顔の向きを無理に変え、満足に動かない足を掻いて移動しようとする。


 その先には、真横から二つに(わか)たれた雄のアドミラドリア。


(……悪いな)


鉄槌(ナターン)



 隆起した高密度の土が、虫の息の魔獣を大蛇のごとく襲う。

 重く鈍く、骨と肉を圧し折る音が辺りに響いた。


 近づくまでもなく、雌のアドミラドリアは絶命していた。


「どうして村まで降りてきちゃったのかね……」

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