宿屋2
ふぅ、一旦落ち着こう。
当然、正直に答えるのはNGだ。
だからといって、折角のチャンスをふいにするのも避けたい。
どうやってごまかすかだな。
目尻のシワを無くすのはスキルでできるが、そんなことをしたら、大変なことになるのは、いままで読んだ小説でわかっている。
治さずにごまかすしかないか。美容スキルよ。俺に知識を‼
そして頭の中に知識が湧いてくる。
ファンデーションで下地を作って、パウダーで目立たなくするのか。
その他いろいろ目立たなくするために化粧品を使うようだが、すぐに生成できるので大丈夫だ。
これでいける。
先程出していたファンデーションの中身を女将の肌に合わせたものに変更するして、ささっと塗り終える。スキルのおかげでめっちゃ早く塗れる。
このまま押し切れるように鏡で自分の姿の変化を体験してもらいながらどんどん進める。
この流れるような作業と、どんどん自分の肌がきれいな感じになっていく過程を女将は、鏡状態のスクリーンから目をは外せないようだ。
目尻のシワもめだたなくなり、かつ、厚化粧のようにもならず、いわゆるナチュラルメイク風。
これには女将も満足したようだ。
「女将さんも忙しくてメイクもあまりできないでしょうが、やはり美しいですね」
実際のところは動き回る人間が化粧なんかしたら、この世界の化粧だと、汗で崩れまくっておばけの出来上がり。
そんな事情は分かっているが、ここは知らないふりして、ごまかしておこう。
「スキルで作った化粧品なので肌への定着も良くて、汗をかいても化粧崩れもほとんど起きない優れものですよ」
娘さんも女将の変わりように驚いているようだし、成功だろう。
ただ、少々やりすぎた感もあるが、まだ大丈夫なはずだ。多分。
俺は自重できる人間。
のはずだ。
それはともなく、朝の忙しいところに、それなりに時間もかけたので、さっさと1階に戻って今回の報酬のおかず1品付きの朝飯をもらうことにしよう。
「時間をかけてしまう、申し訳ない。これでおかず1品頼む。」
そう女将につ当てると、女将さんも思い出したのか、娘さんを連れて食堂に戻っていった。
結果的に、女将さんが追加してくれたおかずは蒸かし芋1つだった。
ケチすぎるだろう。
なんか、精神的に疲れた割にいまいちな成果で嫌になる。
いきなりうまくいくわけでもないか、気を取り直して、この街周辺の下調べでもすることにする。