宿屋1
異世界転移してはや十数年。
美容スキルというチートすら超えたぶっ壊れ性能なスキルのおかげで生きていけている。
美しくなるためには健康である必要があるということで病気などが治癒できる
そんなノリで、四肢欠損レベルですら治せてしまう。
これだけで十分チートだが美しくなるためにとつければなんでもアリか!!
といいたいくらいに何でもありなスキル。
栄養のあるものを食べるたり、おいしい食事は心をみなすことで心身ともに美しくなるとかでスキルで食事が生成できる。
化粧品やドライヤなどの身だしなみを整える道具が生成できる。
異世界転移前は疎かった化粧品の使い方がわからなかったが、スキルのおかげで使い方がわかる。
(よくある、どんな武器でも使い方がわかるとかの派生?)
現代のような美しい容器も作成されるため、この入れ物を売るだけでもかなりの金額で売れる。
(ただし技術水準が高すぎて、こんなものをうっかり売ろうとすれば大騒ぎになること必須)
これだけのスキルがあれば、ハーレムでも築いていると思われそうだが、
彼女の一人もできないまま今に至る。
なんでコミュ障とか、ボッチとか自称しているやつらは異世界にいくと女ができるんだ。
スキルのおかげで怪我しても回復できるし、最悪、スキルでご飯も出せるから餓死することもない。
だが、女性関係は全くだめだ。
旅商人で金はほとんどもっておらず、宿も低グレード。
女性たちのゴミを見るかのような感じで、目をあわせることすら厳しい。
スキルで作った化粧品など渡せばいい?
俺が持っているのがおかしいようなものを渡せば、後で厄介になるし。
つまらないものだと、女性は靡かない。
これが他の主人公だと、瀕死になっていたり、病気でも待っていて、通常では救えないような女性を、
うっかり全快させて、俺、またなんかしちゃましたかとかいって好感度をあげていくだろうけど、
俺にはそんな、非常識なことはできず、俺SUGEEEEアピールもできない。
ああ、こんなことを考えていると気分を沈んでいく。
娯楽が少なすぎて気分転換も難しいとか鬱々としていると
宿の奥から少女らしき声が聞こえる。
「こんな姿で給仕したくの‼」
どうやら、泊まっている宿の娘が部屋から出たくなく手ごねているようだ。
「顔にニキビが出たくらいで、何言っているの。朝食の時間ははあんたが手伝わないと回らないでしょ。」
母親とのそんなやり取りを聞きながら、考える。
俺にもチャンスがきたのか?
程よいさじ加減で良い格好ができないだろうか。
ニキビくらいでいちいち回復スキルを使うような庶民はいないだろう。
女将も、ニキビのためにいちいちお金を出そうとは思わないだろう。
そうすると、お金をもらわずに無料で治すか?
しかし、無料でそんなことをするのは怪しすぎる。下心ありとみられそうだ。
朝食におかずを一品増やしてもらうくらいで言ってみるか。
幸い、きもったま母さん風の女将であれば、普通に話せるだろうから言ってみるか。
異世界転移した俺の人生、ここからが本当の始まりだ。
とか、勝手な妄想をしていないで、勇気を持って女将に話しかけてみよう。
自然体を意識しながら女将の方に歩く。
ふう、初めてモンスターを狩るときに匹敵する緊張感。
手汗がやばい。不審者と思われないだろうか。
すでに席を発ってあるきだしているので、今更引き返すのも怪しすぎる。
勇気を持て。自分を叱咤しながら話しかける。
「女将、ニキビ程度なら俺でも治せる。朝食に一品増やす代わりに治すのだどうだろうか」
噛まずに言えた。
女将は訝しんだ結果、ニキビ程度でいちいちそんなことをしていたら
客商売ができないということでけんもほろろに断れれてしまった。
「あっ、そうですよね」
震えるような声がでてしまった。
やばい、足が震えてきた。
恥ずかしすぎる、この宿、いや、この街はもうだめだ、
次の街へ行こう。
そうだ、俺は旅商人。
次の街へ行くのは当たり前のことだ。
そんなことを思っていると、部屋の中から娘さんが話しかけてきた。
「治せるって本当?」
フィーーーーーシュ!!!!
娘さんのほうが釣れた。
ここだ、ここで娘さんを説得するしかない。
どうすれば、自然な感じに説得できるのか。
すっとアイディアがでない。どうすれば良いのか。
そうこうしていると、娘さんから、本当におかず一品程度の費用で治してくれるのかとの再確認がある。
たしかに、その疑問はもっともだ。
神殿で治癒をお願いする場合は、日本の感覚だと10万円くらいはらうような感じだ。
庶民が受けられないこともないが、安易に受けられるようなものでもない。
にきびを治癒してもらうようなものではない。
人から聞いた話だと、決まった料金というものはなく、治療後に費用を請求されるものらしい。
骨折をなおしてもらったら金貨10枚(日本円換算で100万)かかったなんて噂もある。
そのため、神殿側移行で金額が決まるので、庶民が神殿で治癒を受けることはほとんどない。
費用が安いものは、お金を払ってまですぐに治すようなものではないし、逆にひどい怪我や病だと庶民には払えないような金額となり払えないからだ。
結局の所、庶民は民間療法レベルの薬で我慢することになる。
ようするに、なぜ、そんなに安く治癒してくれるのか、疑問にも耐えているということだろう。
神殿のものしか治癒してはならないわけでもないが、さて、どうやって説明しようか。
よく考えるまでもなく、治癒ができるのに、貧乏そうな旅商品というのも、うさんくさいな。
下心がさきにきて、当たり前のことが頭から抜けて落ちていたようだ。
しかたないので、神殿で働けるような治癒能力はなく、美容スキルであると伝えた。
もちろん美容スキルなんてものはおそらくチート的に付与されたユニークスキルだと思うので、
美容スキルは怪我や病気の治療には大した効果はなく、肌荒れやニキビなどを治す程度と
たいした能力がなく、そのため費用も、そんなに請求しないと言う説明をした。
安いことの理解は得られたが、今度は、そんなしょぼいスキルでニキビがなおせるのかという疑われ始めた。
こうなったらアプリーチを少し変えることにした。
「女将さんに、娘さん、私の美容スキルはたしかに治癒能力は低いものの、このような便利なことができるのです。」
そういってスキルで全身鏡のようなスクリーンを出した。
娘さんには部屋に居たままだと、このスクリーンを見ることができないので、このスクリーンを見てもらうように声をかけた。
女将さんにスクリーンの前に立ってもらい、自分の姿を見てもらうが、
「これが私かい?なんか太く映ってないか?」などケチを付けている。
残念ながら現代のようにプリクラのように自動補正で肌をきれいにしたりはしない。
だから、その目尻のシワも、実際にあるものなので、女将は文句を言わないように。
ぐちぐちと文句を言っている女将できになったのか、娘さんの部屋の扉が少し開き、女将さんの様子を伺い始めた。
女将さんと、娘さんがスクリーンの前に交互に立ち、そのままの姿を映っていることをお互いに説明してもらう。
なぜか、相手のときは、そのままの姿が映されるが、自分のときだけはそうではないと
両名が言い始める。
解せぬ。
とにかく、これではいつまで経っても終わらないので、私がニキビを治して、女将さんが確認するとともに、
娘さん本人にもスクリーンで確認してもらうことにした。
不承不承でとりあえず治癒することになった。
なぜ、そんなに自分だけはきれいだと根拠もなく主張できるのか、謎思考する義。
ちゃちゃっとニキビを治癒する。
どこぞの主人公のように勢い余って全身の肌をきれいにするとか、とんでもない威力を発揮するなんてこともなく、よく見れば築ける程度のニキビ跡があるかなくらいとなった。
あとは少し化粧をすれば完全にわからなくなる。
そんなわけで、娘さんの肌色にあったファンデーションを塗って完全にわからないようにした。
この世界にもファンデーションはあるが当然ながら現代のようなきめ細やかな色や種類はない。
ファンデーションも、スキルを使って作ったと説明した。
スキルで好きな色にできるくらいで、ファンデーション自体は世間一般なものなので、そこまで驚かれるようなものでもない。
スキルを使う上で、この世界の常識に関しての下調べは十分している。
これでミッションコンプリート。
常識の範囲内で見事対処。完璧だ。
だが、女将の次の発言に頭を悩ませる。
「ねぇ、あんた、おかずを更に一品つけるから、私の目尻のあたりも治せないかな。」
それは、年齢辛くする小じわですよね。
年齢からくるものなので、通常の治癒スキルだと治せないはず。
そんなことができたら貴族階級は全員見た目が若いままとなってしまうだろう。
当然答えは決まっている。
「あははは、女将さん、それはネンレ・・・」
だが、それ以上の言葉を発することができなかった。
女将の目がやばい。
おかず一品もらえるとか言っているレベルではない。
せっかく娘さんと仲良くなれるかもしれないキッカケがつくれたのに、、この状況。娘さんのことは忘れて、逃げるべきか。
どうする!?
1.毅然とした態度で断る(娘さんは諦めよう、こんなところに居られるか、俺は逃げる)
2.ヤレヤレ系主人公のように、仕方なく治癒する。
ほかに選択肢はないのか。
考えろ、俺‼