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第四話

道具を何とか見つけ出した俺達は今危機に直面していた。


「ない…」


「お兄、どうするの?」


「どうしようか…」


目の前には冷蔵庫があったであろう場所にある空っぽの木箱。


そう食材がない。


「あんだけ道具揃ってるんだから食材ぐらいあるだろうと思ったんだが…」


「見事に空っぽだね」


困り果てた顔をする妹。


流石に食材となしに料理は作れない。


因みに余談だが高校一年生とは思えない、いつもの甘えっぷりを発揮した妹は未だに俺にくっついている。


昔、妹に『恋人は作らないのか?』と聞いたが『そういう人はいない』とムクれながら言われたことがある。


多分それはきっと俺にベタベタしすぎだからじゃないのかと思うのだが気の所為だろうか?


普通年頃の女の子は兄とか父親を嫌う気がするのだが、何故かそういったこともなかったな。


まぁそれが悪いという訳では無い、険悪な雰囲気にならないから俺としてもありがたい。


(愛されてますね)


まぁ否定はしないが…


っと考えが逸れた。


「もう夕暮れだからな…外には井戸が一応あるが」


「今日は良くても明日以降が大変だね…」


「そうなんだよな…」


(今こそ物作りをするべきでは?)


作るって…何をですか?


(罠ですよ、罠)


なるほど…小動物を取るなら確かに有効かもしれない。


素材となる物も森だから見つけやすいし。


「よし、俺ちょっと森に行ってくるわ」


「私もお兄に着いてく…」


ぎゅっと力をいれ俺にさらにくっつく妹。


これは離れないな…


長年一緒にいたのだそれぐらい分かる。


それに…


一人にさせたくないからな。


「離れるなよ」


「うん…」


服を着替えようかと思ったが、そもそも何を着てもそこまで変わらないと思い転生した時に着ていた黒のワイシャツにジーパンという服装だ。


因みに妹は制服姿である、夏だったので半袖の制服と改造して少し短めにしてあるスカート。


なぜ俺が改造してあるかを知っているかと言うと、これを作るのに俺が夜中にミシンを出して妹の言う通りに作ったからだ。


作らされた理由は『お兄はなんでも器用にできるから』だそうだが…正直年頃の女の子的にはもう少し恥ずかしがってほしいところだ。


まぁ、自分でやって失敗した妹が悲しむ顔は見たくなかったので仕方ないといえばそうかもしれない。


(とんだシスコンさんですね)


それは違う、兄は妹のお願いを断れない生き物なんだ。


俺が高校に通っていた頃もそうやって周りに説明していたしな。


まぁそれはさておき。


リュックを背負って森を探索し始める。


「割と森の中って色々あるな…」


キノコやら果実が色んな場所に生えている。


ただ、食えるかどうか分からないがそこは触れてみれば頭に詳細が浮かぶ謎仕様のお陰でバッチリだ。


「このキノコ…食えるのか…」


「完全に殺しに来てる色だね…」


めちゃくちゃ引いている妹を横目で見ながら、明らかに毒々しい見た目をしているのに詳細ではかなり美味しいというキノコを手に取る。


「まぁ、これでとりあえず料理はできる…のか?」


「うん、キノコは炒めて果実はカットするだけになるけど…」


「まぁ、文句は言ってられないしな」


食えるものは食っていかないと生きていけない。


……


虫はさすがに食べたくはないが…


苦手なんだよな…虫。


特に一センチ以上の虫はダメだ、ダンゴムシとかこの世に存在している意味がわからない。


蜘蛛は平気なんだがなぁ…


あれは正確には蟹に分類されるっぽいしな。


だが幸いなことにこの森には虫は居ないっぽいし大丈夫だろう。


(代わりに魔物でビー種やゴロン種等いますけどね)


……


絶対に出会わないで欲しい。


そんなこんなを辺りをウロウロしているとあるものを見つける。


「これは…」


「異世界にもあるんだね…」


「やっぱりお前もそう思うか…」


高さ5メートルはあるであろう竹がそこら一帯には生えていた。


「欲しいな…」


「持ち帰れるの?」


「多分…まぁ、持ち帰るとしてもまず切り倒さないとな…」


試しに金槌の形をした例のアレを鋸になるようにイメージしてみる。


イメージはひ○らしのレ○が使っていたようなものをだ。


「おお、本当に変わった」


「神様の道具すごいね」


鉈に変えた俺は竹の根本付近を切ろうと近づくが…


「鏡華、すまないが今は少し離れてくれないか…危ないぞ?」


「いや」


あ、うんそういうと思ったよ。


「じゃあせめて腕以外のところを掴んでてくれ…」


「うん」


妹は頷くと俺のワイシャツの背中部分を掴み後ろから着いてくる。


……


根元から切るのは止めよう。


立ったままでも切れる位置で切り始める。


流石に神様の道具と言うべきか、ものの五分で切り倒すことができた。


「流石の切れ味だ…」


「断面も綺麗で滑らかだよ」


妹は俺の身体の横からひょっこり顔を覗かせながら目を輝かせてまじまじと見ている。


きっと料理をした時にまた輝かせるのだろう。


「さて、切り倒せたはいいが」


まだ、これは持ち上げられるのかという問題が残っている。


「まぁ、やって見ればわかるか」


早速、両手で先程切った部分付近を両手で掴み持ちあげる。


「軽っ?!」


「そんなに軽いの?」


「そうだな…体感的にいえば辞典ぐらい軽い」


「本当に…?」


訝しげな目を向けてくる妹だが、実際にそれぐらい軽く正直引きずって帰ろうかと思っていたのだが杞憂だったようだ。


「持ってみればわかるぞ」


恐らく俺と同じであろうスペックの妹だし軽々と持てるだろうなとは思っている。


腰が悲鳴をあげた事例もある事だし。


「多分片手でも持てるぞ、ほれ」


と俺は利き手ではない左手一本でで軽々と支えてみせる。


「ちょっと持ってみたいかも…」


そういうと俺には相変わらずくっついているが片手だけ伸ばしひょいっと持ちあげる。


「本当に軽い…特典のお陰かなぁ?」


振り向いて俺を見てくる妹に頷く。


「多分そうだと思うぞ」


「女神様、これはちょっとやりすぎだよ…」


「分からんでもない」


引き気味の妹に同意せざるおえない。


(そんなことないです)


おお、まだ居たのか女神様。


(ええ、居ますよ)


……


暇なのか?


まぁいいか…


「さて、それじゃさっさとこれを運ぶか」


「もう暗くなってきゃってるし、お腹も少し空いてきたかも」


「そうだな」


竹を片手で持ち再び妹にくっつかれながら帰路に着いた。


こんなに甘えてくる義妹が居たら世の中の兄妹はきっとみんなシスコン

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