第一話
始まりがいきなりかなりハードです。
だけど大丈夫!
何故なら俺が異世界での暮らしで幸せに書いてみせるから!
残酷な描写が好きでない方はこの話は見なくても大丈夫です!
転生前の話なので!
「やばいな、帰りが遅くなっちまった…鏡華怒るだろうな…」
全く、今日に限ってなんでバイトの延長させられなければならないのか。
今日は鏡華の誕生日だから早く帰って準備したかったのだが…もう帰ってきてるだろうな。
「とりあえずケーキは買ったけど…機嫌直してくれるといいんだが…」
急ぎたい気持ちは山々だが、それをしてケーキが崩れでもしたらそれこそ妹がお冠になるに違いない。
俺と妹は両親が死んでから五年…初めの数カ月は妹が寂しがってなかなか遅くまで家を空けることがなかったが、もう流石に大丈夫だろうとバイトを増やしたのがまずかったか。
妹はもう高校一年だし流石に寂しすぎて泣いてるなんて事はないと思うが…
「…早く帰らねえと」
とは言っても俺は今電車に揺られているから急ぎようがないのだが…
自転車は駅の駐輪場に停めっぱなしだ。
自転車で帰った方が近道などすれば多少早く帰れるが近道がどう見てもけもの道という感じなので絶対にケーキが終わる。
なので今日は仕方なしに電車に揺られて帰っている。
特急や急行があればいいのだが、残念なことに俺が降りる駅はどちらにも被らないなんとも辺鄙な場所なため普通電車だ。
「こういう時に田舎町は恨めしいな…」
駅を降り、スマホで時刻を確認すると21時を少し過ぎたあたり、半までに帰れば何とかなる。
「結構ギリギリだな」
人通りは少ない為早歩きで急いでも人とぶつかることはない。
焦っているせいか時間が経つのが妙に早く感じて、一分過ぎるのが十秒の出来事のように感じる。
しかし、ある程度急いだお陰で割と早く自宅に到着する。
早歩きしたせいで上がった息を整えつつスマホで時刻を確認する。
「危ねぇ…二十五分じゃねぇか」
息を整え終えた俺は自宅に入ろうとするが…
「なんで電気が着いてないんだ?」
玄関の鍵はかかっていない。
「もしかして不貞寝しちまったか?」
どう謝ったものかと考えながら家の中に入る。
すると目の前の廊下には色の濃い液体が床に大きな水たまりを作り、壁のあちこちには点々とまだら模様のように付着している。
どう考えても異常事態、そしてこの噎せ返るような臭い。
「なんで…こんなに血が…」
嫌な予感がする。
「鏡華、いるか?!」
ケーキの事など忘れ荷物を放り投げ、靴も脱がずに血の痕跡を追う。
急ぎたいのに身体が嘘であってくれと拒絶する。
どうやら跡は二階に続いているらしい。
二階は俺と妹の個室があるだけだ。
恐る恐る足元にある血の跡を目で追いながら階段を登る。
血はまだ乾ききっておらず靴底にベッタリと着いて不快感に襲われる。
嗅覚も少しやられて来ているかもしれない。
階段を登り終えると、血の跡は何故か俺の部屋に繋がっていた。
一度止めた足を叱責するように叩き再び少しずつ歩き出す。
静かな廊下がより一層不気味な雰囲気を醸し出している。
帰りとは違い寧ろ時の流れがゆっくりであるように感じつつドアの前に着く。
真相を確かめなければならないという気持ちと逃げ出してしまいたいという気持ちがせめぎあう。
この先の光景がもし自分が考えているようなものだったらと思うと恐怖で身がすくむ。
「……」
下を向くと震える手はノブにかけたまま、小刻みに震えているのがよく分かる。
意を決してノブを回し中を確認すると…
「……鏡華?」
ベットの上で横たわり身体のあちこちに刺し傷や切り傷があり首には紐のような物が巻き付けられ目を開けたまま動かぬ妹の姿。
銀色に輝いていたはずの髪も血に塗れており、かつてのような明るい笑顔も今はもう恐怖に染めた表情を浮かべていた。
確認するまでもなく明らかに死んでいる。
肌の色は血の気を含まない青白い…
「鏡華…」
全身が震えてまともに動かないが、それを無視してフラフラとしながら急いで妹の容態を確認する。
血ではない生臭い匂いがする。
肌はまだ微かにまだ暖かい。
突然、後ろから床を踏む音を聞き振り返る。
「ぐっ…!?」
しかし、気づくのが遅かった。
胸の部分に激痛が走る。
痛む場所を見ると俺の心臓付近に包丁が深々と刺さっている。
上を見上げると、そこには目出し帽を被った俺より少し大柄な体格的に男だと思われる人物が俺を見下ろしていた。
「お前…」
その男は俺を見ながら告げる。
「お前の妹は、最後までお前に助けを待ってたぜ?『お兄ちゃん!お兄ちゃん!』ってなぁ!」
下卑た笑い声と狂気じみた笑顔をうかべる男。
怒りが全身から沸き起こる。
だが…
「クソ…野郎……」
悪態しか着くことが出来ない、血がドクドクと胸元から流れ出す。
身体の力が抜け、体温が下がっていくのを感じる。
「どうした、もう動けないか?残念だったな目の前に仇がいるのに何も出来ないよなぁ?」
愉快げに笑う男を倒れた身体で首だけを何とか動かし睨みつけた。
男は「おお怖い怖い」なんて言いながら首を振っている。
巫山戯たやつだ…許す事など決してできない。
だが今はそれ以上に…
「すまない…鏡華、俺は…」
自分に対する苛立ちが涙になって止めどなく溢れていく。
「ちっ、つまらねえな…まあいいか、じゃあなお兄ちゃん?」
そういうと男は踵を返して立ち去る。
「待…て…くそ…や…ろ……う」
声を絞り出すも男は振り向かない。
己の無力差に唇から血が流れるを程噛み付ける。
「……鏡華」
ベットの上で息絶えた妹を見る、呼んでも動かず振り向かずただそこにあるだけ。
しかし、それでも俺は残る力全てを使い妹の所まで這いずっていく。
側まで寄るともうほとんど力の入らない手で妹の手を握る、もう僅かな暖かみも感じないその手を。
二度と離さないように、二度とこんな出来事が起こらないように、二度と…
「もう…離れ…な゛…い…から゛…な゛」
掠れる涙声…意識が遠のいていく、無念だ…無念すぎる。
なんでこんな…なんで俺達がこんな目に合わなければならなかったのか。
人形のように動かない妹を見つめながら俺は意識を手放した。
生まれ変われるのなら、俺は守れるだけの力が欲しい。
「力が欲しいのですか?」
ああ、欲しい。
人を殺すのではなく、大切なものを助ける為に守れるように。
「復讐はしなくていいのですか?」
そんなことしても、妹は帰ってこないしきっとそれを望まない。
「そうですね、貴方の妹は確かにそれを望んでいません」
そうだろ?もう何年も一緒に暮らしていたんだ、そんなことは分かっている。
というか…
俺は目を見開く。
「……なんだここは」
そこは真っ白な世界、何処までも続いていそうな錯覚に陥りそうになるほど何も無くただ真っ白。
そして目の前にははっきりとは見えないがうっすらと口元だけが見える恐らく人間が佇んでいる。
さっきの声的に女だな。
「あんた誰だ、そしてここは何処だ」
当然の疑問俺は死んだ確実に、助かる余地なんてこれっぽっちもない。
それは分かっている。
「貴方、まずは妹がどうなったか聞かないのですか?」
わざわざそんなことを聞いてくるんじゃねぇ。
目の前の人物を睨めつけながら俺は言う。
「……妹は死んださ、俺が目の前で確認したからな」
するとその女は驚いたような感心したような表情を浮かべる。
「…随分と冷静なんですね」
「仕方がないだろ、もう起きた出来事だ…今更何も出来はしない…」
冷静というよりこれは諦めと言った方が正しい。
「そうですか…質問に答えましょう。ここは人間が言うところの神々の世界、そして私は創造神です」
そんなことを目の前の創造神は言ってきた。
女の子をザックザクにするとかこの犯人頭おかしいでしょ…いや書いたの俺だけど