再会の時
「……お目覚めかね、グレイス。」
「お前は……誰だ?」
冷たい牢獄の中で目を覚ましたグレイス。
残念ながら自分が牢獄に閉じ込められている側だということに気づく。
「……そうか、俺はあのあと気絶して……。」
「私はサミュエル。
君が中将殿に刃向かったおかげで休日出勤だ。
やれやれ……世間様が羨ましいな……。
我々が必死に国を守っている間にも……平和に暮らしている。
闇の世界など知りもしない……実に羨ましいよ……。」
「俺を牢獄に閉じ込めたのは愚痴を聞かせるためか?」
「いいや違う……君は彼の怒りを買った……。
それ以外には何もない……良いな?
私だって旧友をこんな目に遭わせたくはないさ。」
「冗談じゃないぞサミュエル。
俺が人体実験を受けると決まって……無視を決め込んだのを忘れたか?
お前らの信条は『友を見捨てること』か、ええ?」
「違う、落ち着け……。」
「落ち着けるか、こんなことになると知ってれば軍になんぞ入らなかったよ。
聞いたぞ、少年少女をそのスジの連中に売り飛ばしてるそうじゃないか。
何でもありか、このクソッタレ。」
「人間は誰かを不幸にしなければ幸せになれんのだ、分かってくれ。」
「教会で女を抱くくらい罪深いことだ……サミュエル、お前こそ分かれよ。」
「ブラウン中将殿を見ただろう。
あれが人間の本質なのだよグレイス。
所詮は恥の概念を持ったサルだ。」
「俺はどうなる。
ブラウンがくたばるまでこの中にいるのか?」
サミュエルは誰もいないことを確認すると、
「……安心しろ、お前にもちゃんと見せてやるさ。
ヤツが目玉ひん剥いて女の名前を叫びながら死ぬ様子を……。」
そう囁いた。