4-2 王都決戦
考えろ、やつは何を言おうとしている……
振り返れば、オルフェス山でのハヤセとカーズの行動には、違和感がある。
「聖剣プレアデスは聖堂の宝物庫に隠した、絶対見つからない」など、言わなくてもいい手の内を敵に明かす「冥土の土産」を口にしたハヤセ。
僕たちが立ち寄ることを知っているのなら、ポーを人質にしていることを見せるだけでなく、待ち伏せして攻撃するか、トラップなどを仕掛けるべきだ。なのにハヤセは、それをしないように進言している。
何かある。
僕たちに、その場で言えない何か。
あいつの言葉を、思い出せ。
そう言えば……聖剣は見つからない、と言った時、その意味は二つある。
一つは、みつからない場所に隠した、そしてもう一つは……
もしかして………
もしかして………そうか!
「プレアデスは、大聖堂にないんだ! 」
となると、どこに。
それは、今のレイカに一番近い場所のはず……
だとすれば、この王宮だ。
確信はないけど、このままではジリ貧で確実に負ける。ならば、ダメ元でもそこに探しに行くしかない。
さらに、あのときハヤセは大聖堂の地下の宝物庫と言った。大聖堂の「宝物庫
」とまで、くどいように言った。いい間違えはない、それを王宮に置き換えれば、王宮の宝物庫……
(もし、これが本当ならハヤセの功績はめちゃくちゃ高い。聖剣をガイア教から守っただけでなく、絶好の場所に移動させたのだ。なんか悔しいぞ、あいつも、レイカ(麗華)狙いだし)
と……またまた、しょぼいことを考えているときではないのだ。
となれば、もう一つ問題がある。
僕はいま召喚獣、どうやってレイカに伝えるか……
こうなったら、強引にするしかない。
僕は王都の上空を旋回し、王宮に突っ込んだ。
「カズヤ! 何するの! 」
周りのみんなも気が触れたかと思ったようだ。
僕は、かまわず宮殿に突撃した………だけどコルベットの結界にぶつかった。
それは想定内、コルベットは「僕の言うことは聞く」と言ってくれたのだ。
コルベットは僕が突っ込んで来るのを見て、最初は何をしているのかといった表情だが、僕の必死の形相に何かあると気づいたようで、一瞬結界を解いてなんとか王宮の中に入れた。
そのまま、王宮の庭に降りようとしたけど、人が一杯で、着陸できずに壁にへばりついてズリ落ちる。何とか人を巻き込まずに済んだけど、みっともない着地だった。
そのあとも、人を踏み潰さないよう壁にへばりついているのだけど。
「カズヤーー、おろしてーー! 」
レイカの悲鳴が聞こえ、振り向くと。
ドラゴンのたて髪に体を括っていたレイカは、たて髪が絡まった状態で宙吊りになっている。
しかも両足が開いてちょっとエロい、写メにとりたーーい。
近くの民衆も手伝って、レイカは宙吊りからなんとか降りると召喚を解いてくれた。周りの人はドラゴンが人間だったことに驚いているが、かまわずレイカは僕に詰め寄り。
「いったい、どうしたの! 」
少しお怒りのようだけど、そんなことより。
「聖剣プレアデスは多分王宮の中だ。宝物庫を見てきて」
驚いたレイカは
「どうして! 大聖堂ではないの」
「話はあと、僕がラムーアを食い止めるから、その間に宝物庫に聖剣を取りに行って。場所はレイカならわかるでしょ」
レイカは半信半疑な感じだが、うなずいて王宮の地下に向かおうとした。
すると、正面に黒のフードをかぶった魔導師が立ちはだかった。
「まさか…… 」
魔導師がフードをあげると、キツネ目の気持ち悪い目がこちらを睨み。
「やはり、そうでしたか」
忘れもしない、人をバカにしたような慇懃な声……
「カーズ! 」
僕たちは剣に手をかけ身構える。
おそらく一瞬結界を解いたとき、鳥に変怪して入り込んだのだろう。カーズは手を後ろに組み、敵地にも関わらず余裕の表情で
「おかしいと思っていたのですよ。ハヤセの行動も不自然でしたしのでね」
すると、カーズに気がついたコルベットが城壁の上から魔法杖に乗って飛んできた。修道女を裸にして火炙りにした鬼畜にも劣る敵で、コルベットは怒りに震えながら
「きさま、いったいどういうつもりだ。敵の真っ只中に来るとは勝ったつもりか! 」
「とんでもない、私など、まともに戦ってコルベット様に勝てるとは思っていませんよ。こちらも命懸けです」
しかし、あのカーズがなぜ、わざわざ敵の真っ只中に身を晒すのか……絶対なにかある。
カーズは続けて
「以前も申しましたように、私やコルベット様の命などカスのようなものです。コルベット様と差し違えてでもレイカ姫を倒し、サグリン様の野望が達成出来れば本望なのです」
しかも、ここでコルベットがカーズと戦えば相応の激戦になり、巻き添えで多数の死傷者がでる。カーズはそれを見越して、敵中に入り込んだのだろう。コルベットは派手な攻撃も出来ず、なんとかこらえている。
「ほほー、おわかりのようで」
相変わらず、勝ち誇ったような慇懃な口調に虫唾がはしる。
次にカーズはレイカに向かい
「今のレイカ姫はかなり疲れておられる。姫の剣の届かない範囲に近づかなければ、魔弾の一発で当たれば即死でしょう」
そのとおりだ、奴はレイカの弱点を知っている。
これはやばい!
「それではいきますよ」
ご丁寧に前置きし、片手を上げて魔弾を放とうとする。ここでレイカが殺られれば全て終わる。
こうなったらやむを得ない!
僕は腰のレイピアを抜きカーズに無謀にも突っ込んだ………が
「そのくらいのこと、予想していないとでも思っていたのですか。雑魚は死んでください」
カーズはもう片方の手で小さい魔弾を放ち、僕はそれを食らって吹っ飛んだ。
「うぎゃー! 」
さすがに、レベルの違いがありすぎる。一撃で壁に吹き飛ばされた。
「カズヤ!」
レイカが叫ぶが、まあ僕は雑魚だし、カーズを倒せるわけがない……だけど二秒相手の動きを止めた。
その一瞬の隙にレイカはカーズの間合いに一気に詰め寄った。僕とレイカの阿吽の呼吸だ。
そう、レイカの剣技の前で、二秒もの隙を作るのは致命傷になる。
レイカは居合斬りのように剣を抜いてカーズに斬りつけた。
「うぎゃあーー」
今度はカーズの悲鳴がする。
しかし、レイカの剣はわずかに浅かった。三秒あれば完全に仕留めただろう。
魔弾も消えたカーズは後ろに飛び下がり、傷を押さえ
「さすが……レイカ姫。一瞬の隙も許してくださいませんね」
そう言いながら睨みつつも、不気味な笑みを浮かべる。壁に倒れている僕は、カーズの手が魔石を握っているのに気づいた。
しかも奴は、さっき命がけと言った……ということは!
「自爆するつもりだ! 」
ここで、魔石を爆発させると、レイカや僕たちだけでなく、この王宮の庭の大勢の人が巻き添えになる。まさに自爆テロだ。
「もろとも死ね! 」
カーズの悲壮な表情での勝ち誇った叫び。これは詰んだ、自爆まで考えていたとは……終わりだ。
そのとき、魔法杖に乗ったコルベットが、地面スレスレに猛スピードでカーズに突っ込んでいく。
「コルベット!」
カーズの驚きの表情。コルベットは魔法杖の先にカーズの体を突き刺すように引っ掛け、そのまま急上昇する。
「コルベット! 何をする! お前も死ぬぞ」
喚くように叫ぶカーズに、コルベットは不敵な笑みを浮かべ、そのままラ・ムーアに向かっていく。
「貴様や、私の命などカスのようなものだ。そうお前が言ったろ」
カーズは鬼のような表情で
「きっさまーー! 」
次の瞬間、カーズはラムーアに直撃する寸前で、魔石を爆破させ王宮の上空で大爆発が起こった。
もし、宮殿の中で爆発したら王宮の半分は粉砕され、数万人規模の死者がでたのは間違いない。
「コルベットー! 」
レイカが泣き叫ぶ。僕も唖然として
「まさか。死なないよな……」
今は大聖堂がないので、死んだら生き返らない。
そもそも、コルベットはこの世界のキャラだ、本当に死んでしまう。でも、コルベットなら爆発の寸前に防御魔法もかけられるだろが、かなり疲れている。この爆風に耐えられるか。
爆炎の中から、黒い塊が落ちて来る。
「もしかして、コルベット! 」
ほとんど消し炭の状態だ。
それは、王宮の庭の端にある天幕に墜落した。
民衆をわけてレイカが近づくと、瀕死のコルベットがいる。
あの、爆風を耐えるとは、さすが大魔法使いだ。
………いや、本当に耐えたのか。
「コルベット! 」
レイカがコルベットを抱き抱えると、コルベットは虚ろな瞳で
「ひめ……はやく聖剣を……もう、宮殿に結界はありません……」
そう言うと、ぐったりした
「死んでないよな! 死ぬな! 」
さすがの僕も焦った、狼狽し呆然としてしまう。仲間の窮地がこんなに衝撃的なものなのか。
するとレイカは立ち上がり
「まっていて、すぐに助けるから」
今一番辛いのはレイカなはずだ。でも毅然とした態度は、一国の首長としての表情だ。
その気迫に圧倒される。
僕とは、やはり格が違う………そばにいるのも、憚られる気がした。
そのとき、地震のような揺れがする。
見るとラムーアの顔が崩れた城壁から覗いた。結界が切れたので、もうすぐ侵入してくる。
「急がないと」
僕は腹を押さえ、ふらつきながら立ち上った。実は、僕もさっきの無謀な攻撃で腹をやられている。
「レイカ、どのくらいもたせたらいい」
「そんな、大怪我しているじゃない」
僕は引きつった笑顔で
「大丈夫さ、どうせここで死んでも本当に死なない。だから、カッコつけられるのさ。本当に死ぬなら、真っ先に逃げ出しているよ」
レイカは、不安そうな表情で
「大聖堂が機能していない今は、死んだ場合アカウントが取り消され、ここには戻ってこられない」
「レイカにはリアルで会えるさ」
「でも、ゴンゾーや、ミホロさんとはもう会えないんだよ」
泣きそうな声で言うが
「四の五の言っているときではないよ、どのくらい踏ん張ればいい」
レイカは拳を握り、震えながら
「2時間……いや一時間半でいい」
「わかった。僕をドラゴンに」
「ごめんなさい……」
レイカは一瞬、躊躇したが、剣をぬいて
「サーヴァント! ドラゴン!」、
僕は、満身創痍のドラゴンに変身した。
レイカはそんな僕を辛そうに見ている。
体は大きいけど、傷ついて情け無い姿のドラゴンに、周りの人は手を合わせ、声援を送ってくれる。
こんな、僕に………
でも、今はもう僕しかいないのだ!
お読みいいただき、ありがとうございますm(_ _)m




