3. ハイランダー
巨大魔獣ラ・ムーアに対し、聖剣プレアデスのない僕たちは、正直かなり厳しい。
そんな時は、孫子の兵法だ!
今やビジネス、子育て、恋愛、スポーツにも応用される万能兵法だ。でも、みんなが知ったら効果が薄くならないかなぁー。
御託は置いといて、劣勢の部隊が取る戦法としては「実を避けて虚を撃つ! 」。強大な相手には、まともにあたっても勝ち目はない、劣勢の部隊が講じるのは相手の弱点を突く、と言うのだ。
相手の弱点となれば、ラ・ムーアを操っているサグリンたちを攻撃するのが効果的だ、そこで僕は大聖堂に向けてフレアーを放とうとした。
すると、レイカが
「だめ! そこにはポーがいる」
そうだった……
さらに、ゴンゾーが
「やつら、聖堂を攻撃できないよう、オルフェス山で人質のポーを見せつけたのかもしれない」
多分そうだろう。
どうやら、サグリン達は自分の弱点を知っていて手を打っていたのだ。有名な「敵を知り、己れを知れば百戦あやうからず」相手も孫氏の兵法を知っているのかなぁ……だとしたら、勝ち目はない。
ただ、それだけではないような気もする、特にハヤセの動きが不可解だ。レイカに嫌われるのがわかっているのに、なぜ、わざわざオルフェス山に来たのか。
とにかく、気をつけなくてはいけない。
やむなく僕は口を閉じた。
◇
そこに、さきほどから町の様子を見ていたミュールが
「姫! 街が」
下を見ると、街の中でゴブリンなどの魔獣が、人々を襲っている。ルークが塔から矢を討って倒しているが、一体ずつではとても追いつかず建物などで死角も多い。
レイカはミュールたちに
「私と、カズヤでラムーアを攻撃するから、他のみんなは、町の人を守って」
やむを得ない決断だ。強敵を相手に戦力の分散は避けたいが、民衆が虐殺されるのを見過ごせない。厳しい戦いになるだろうけど、僕とレイカでラムーアを倒すしかない。
ミュールもやむを得ないと、苦渋の表情で頷く。しかし王都は広く、広範囲にうじゃうじゃいる魔獣をミュール、ゴンゾー達数人ではどうしようもない。
すると、ミュールが
「レイカ姫、その前に一度王宮の南の塔に行ってください」
「どうして」
「南の塔の地下には、古のエクアドルの名だたる武将の兵馬俑が数百体あります」
兵馬俑は等身大の兵隊の人形………ってことは、三平太の傀儡スキルの出番だ!
しかも、名だたる武将ってことは、絶対強いぞ!
ミュールさんナイス・アイデア!
レイカは三平太に振り向くと
「三平太くん、お願い」
「あ……わかった」
レイカに見つめられ、三平太は少し赤くなっている。
おい、まさか三平太もレイカのことを……ここで三平太がいいところを見せると……嫉妬心って、彼女の飼ってる犬猫まで恋敵に見えてしまうのか。ああー、そんなこと考えている場合でないだろ!
僕は南の塔に向かって旋回して三平太をおろすと、ミュールに場所を聞いた三平太はすぐに地下に向かった。一人、無心に駆け込む三平太を見て、つまらない嫉妬心を抱く自分が、本当に小さい人間に思えてくる。
その間も、街の中ではゴブリンが民衆を追いかけている、急がなくてはいけない。
ミュールは
「姫、ペガサスを貸してください! 」
「わかりました! 」
レイカがペガサスを召喚すると、ミュールとゴンゾーが騎乗した。
「怪我人もいます、私も行きます」
さらにミホロも乗って、街に向かって急降下していく。
向かう先で、民衆にゴブリンが迫っている。
逃げ遅れている人々に、今にも魔獣が襲いかかろうとしたとき、天空からペガサスが舞い降りた。
そして、魔獣の正面に立ふさがる紅髪の戦乙女ミュール―と大斧のゴンゾー。
後ろにミホロが降りて、怪我をしている人にヒール魔法を施す。
王宮に入れず逃げ惑い、次々と餌食になる絶望的な状況の中、幻の神獣ペガサスで舞い降りて魔獣の前に立ちはだかる反撃の救世主。
見ていた群衆は唖然とし、手を合わせている。
ミュールとゴンゾーは、向かってくる群れに躊躇なく突撃した。
レベル90のハイランダーに、魔獣など敵ではない。
なんて、頼もしい仲間たちなんだろう。
◇
その後、ミュールとゴンゾーは休む間もなく魔獣を倒していくが、広い街の中、至るところで魔獣が暴れて、全く手が回らない。さすがに、疲れも出て。
「数が多すぎる……」
ゴンゾーとミュールが肩で息をしながらも、次の魔獣に向かっていくが、背後で魔獣が出没した。
「くっそー間に合わない!」
目の前の魔獣を相手にしているので手が回らない。
その時……
道の脇から数人の兵隊が割って入って、魔獣を相手にした。
思わぬ援軍に驚いたが、なんだか変な兵士だ
「あれは、兵馬俑。三平太だ」
三平太に操られる傀儡の兵が魔獣を倒していく、しかも強い!
さらに、地下から次々と物言わず湧き出る兵馬俑の兵士、古のエクアドルの兵士の人形だが、皆大きく屈強だ。しかも人形、手が取れようが、体を傷つけられようが全く動ぜず命も惜しまず、動かなくなるまで戦い続け、絶対に逃げることはない。
それが、街中に溢れ出て次々と魔獣を倒していく。
敵にすれば、これほど恐ろしい軍はないだろう。
三平太はそれらを動かし、街を蹂躙する魔獣を一掃していく(無論、あのレイカもどきと、美少女アニメのフィギアもいる)。
◇
「みんなやるじゃない! 」
空から様子を見ていた、僕の背中のレイカが、嬉しそうに叫んでいる。
「私達も行くよ」
「ぐほーーー! 」
僕も、気合を入れる。
舞台は整った。
さあ、ラ・ムーア相手の僕とレイカの最終決戦だ!
お読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m




