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現世に転移している異世界の剣姫に、僕は召喚獣として呼びだされた〜  作者: 猫ノあすき
第六章 魔神復活(王都の惨劇)
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6 南からのドラゴン

 ラ・ムーアの復活後、王都周辺の町や村にも魔獣が出現し、南の港では国外に脱出しようとする難民が殺到していた。


「王都は悲惨な状況らしい。巨神が王宮に迫り、町には魔獣が出現し、民衆を虐殺している」

「ここにも魔獣が迫っている。早く逃げないと」

 逃げて来た民衆は口々に噂をし、港は騒然として人々が溢れている。

 一方、脱出の船はほとんどなく、船が入港すると、人々が我先に殺到してくるため出航もできず、強引に出港して海に落ちる人もいる。


 そんな中、魔獣の大群が港に迫り、残ったわずかの兵隊が申し訳程度の防護を作るが、すぐに破られて、次第に魔獣が中に入ってくる。


 親とはぐれて泣き叫ぶ子供、老人は足蹴にされ街路端にたおれても、だれも助けようとしない。

 船がなくなり港にあぶれた人は、背後から迫ってくる魔獣に何もできず、足の遅い者や、女性、子供など弱い者から容赦なく餌食になる。


 そのとき、南の水平線の彼方から黒い物体が飛来してきた。


「怪物が飛んでくる! 」 

 港がさらに騒然とした。


 陸からだけでなく、海からも魔獣が迫ってきたのだ、それは次第に形をなしてくる。

 翼を広げた大型の魔獣


「あれはドラゴン! 」

 民衆は血の気が引いた。

 ここにきて、海からも強力な魔獣が飛来してきたのだ。

 伝説の魔獣、実際だれも見たことのない最強の魔獣ドラゴン、出航した船も逃げ場がなく港に戻ってくるしかない。


 ドラゴンは次第に近づき、怪物の容姿がハッキリ見えると民衆は震えあがった。その口はブレスを吐くため、牙を()いて大きく開いているのだ。

 この距離で火炎のブレスを吐かれたら、港など全滅だ。


 民衆は恐怖と、あきらめの表情で、子供を抱えて震える母親、神に祈る老人。男は石や棒を持ってわずかの抵抗を試みようと震えている。

 誰もが、もう駄目だと思った。


 次の瞬間、ドラゴンの口から強烈な火炎が噴射され、周囲を熱風が覆う。


 ………しかし


 火炎放射は民衆の頭上を通過し、港の人々は、呆然としている。その炎は、港に迫る魔獣の大群を一撃で灰にした。


「ええ! 」

 民衆は、思わぬ事態に、驚きと戸惑いでざわついている。

 その巨大なドラゴンは港には目もくれず頭上を通過し、人々は茫然とその行方を追っていた。

 そのとき民衆は見た。


「ドラゴンの背中に人が乗っているぞ! 」

「赤い髪の剣士、ミュールだ! 」

 若者が、目ざとくミュールを見定めた。

 

 さらに、ミュールの前に立つ、黒髪をなびかせ、赤いマントに、鮮やかな装飾の剣を腰に履く颯爽とした戦乙女

「あの黒髪の剣姫は二十年前に行方不明になったレイカ姫ではないのか! 」 

 壮年の民が声高に叫ぶ。


「レイカ姫がドラゴンをつれて戻ってきたんだ! 」

「我々を、救いに戻られた!」 

 大歓声があがった。


「姫様―――! 」

 民衆は、みな声をからし、涙声でドラゴンに声援を送った。


 そして、ドラゴンは王都を目指す。


◇シンドボルグの決意


 王宮の城では、疲弊した兵士と民衆が、あきらめの表情だった。

 兵士や民衆に逃げ場はなく、魔道士が維持していた防御結界も次第に突破され、入り込んでくる魔獣の餌食になる。


 兵隊が上空から襲いかかるガーゴイルや、骸骨コウモリを相手に剣を抜くが虚しい抵抗で、剣士も次々と餌をついばむように、一人二人と悲鳴を上げて連れ去られていく。

 もはや王宮は、人間を餌とした狩場となっていた。

 しかも、ラ・ムーアがもう間近に迫っている。


 そこに、絶望的な報告が、王宮を守るシンドボルグにもたらされた

「外壁が破られました。もう王宮はおしまいです」

 とうとう、来る時がきた。

 指揮を取るシンドボルグは、苦悶の表情で無言のままだ。


 最後の魔導士の魔力も尽きると結界が消え、ラ・ムーアは外壁を破壊し、地響きとともに王宮内に足を踏み入れた。と同時に、王宮の上空にガーゴイルや骸骨コウモリの群れが集結する。

 一気に(とど)めをさすつもりだ。


 風前の灯火の王宮、シンドボルグは兵を集め

「もはや、これまで……みんなよく戦ってくれた」

 拳を握りしめ、苦渋の覚悟で


「これより、我は最後の突貫を行う。これは王宮のため、我が剣士としての誇りのため、皆への命令ではない」

 そう言って、踏み潰される蟻のようになるであろう、ラ・ムーアへの最後の特攻を行うことにしたが、血だらけの兵士、怪我をした兵も足を引きずり追随するつもりだ。

 普段ならこんな無謀な突撃を許すはずはない。しかし、このまま残って無残に殺されることを思うと何も言えない。

 悲壮な決意でシンドボルグが抜刀し、死の突撃を敢行しようとしたとき。


 頭上に一線の閃光が空を突き抜ける!


 凄まじい火炎の帯、それは王都の空を放射状に照査され、魔獣の群れが次々と焼き落ちていく。

「なんだ! 」

 シンドボルグを始め、王宮騎士団や民衆も驚いて空を仰ぐ。


 その一撃で、王都上空のコウモリの大群をほぼ焼き尽くした。

「何が起こったのだ! 」

 シンドボルグが外壁の上に立つと、王都の外から一体の魔獣が飛翔してくる。


「ドラゴン!! 」


 体が身震いする。

「もしかして………もしかして……」

 シンドボルグは、双眸(そうぼう)を見開いて刮目し、震えがとまらない。


 ドラゴンは王宮内に入ろうとするラ・ムーアにブレスを放つと、不意を討たれたラ・ムーアは外壁の外に押し返されて倒れた。

 そのまま、ドラゴンが城壁の横を通過したとき、神獣の背中に乗って手を振る黒髪の少女


 少年の頃に憧れた剣姫、見惑う事があろうか! 


「レイカ姫………! 」


 幻のような光景、胸に熱いものがこみ上げる

「うおおお――――!」


 叫ばずにはいられない、空を仰ぎ、涙がとめどもなくあふれ出てくる。

 シンドボルグは、騎士団に振り返り


「反撃だ! 」



・第6章〈了〉


次話から最終章に突入します!

来週はオリンピックで、お休みしますm(_ _)m




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