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現世に転移している異世界の剣姫に、僕は召喚獣として呼びだされた〜  作者: 猫ノあすき
第六章 魔神復活(王都の惨劇)
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4 王宮の腐敗(ラムーア復活 前日)

ハヤセに話しを向けています。結末へのキーパーソンになっていくのですが、果たして敵か味方か?

 ラ・ムーア復活の前日、街や大聖堂は復活祭に沸いていた。

 一方、王宮は静かで、いつもと変わらない公務が惰性的に続いている。 

 

 ハヤセは、王室から依頼のあった、極上のワインと高級牛肉を納品するため、王宮に参代した。

 納品するまでには、幾人もの取次の役人にを通さなければならない、そのたびに賄賂(わいろ)をわたす。受付嬢にも、化粧品やアクセサリーを置いていく始末だ。


(まったく、のんきなものだ、役人は自分のことしか考えていない。兵隊達もやる気がない。このあと、何が起こるのかわかっているのか……レイカのためとはいえ、危険を(おか)して聖剣を守ろうとした自分が、バカバカしく思えてくる)

 ハヤセは、軽蔑の目で王宮内を見回しながら進むと、奥の広場で訓練の掛け声が聞こえる


「流星騎士団……」

 

 広場を覗くと、シンドボルグを前に、流星騎士団の騎士達が訓練をしている。のどかな公園のような王宮内で唯一、覇気のある一角だが


「隊員が少なくなったな……」


 ハヤセが来た頃は、この倍はいた。

 アイドルとも言えるミュールがいなくなり。聞けば、平和な治世で兵隊の必要性もなく、給料も下げられたらしい。そんな中、厳しい隊長の辛い訓練をしても面白くないだろう。

 そう思いながら、健気に訓練をする流星騎士団を憐れむように見ながら、荷車を奥に運んだ。


 ハヤセは納品を済ますと、先程の訓練場で一人休んでいるシンドボルグを見かけ、声をかけた。すでに訓練も終わり、兵隊はだれもいない。

 ベンチで俯いて座るシンドボルグは、隆々とした体だが、三十代にしては髪に少し白髪も混じり、どことなく覇気がない。


「お久しぶりです」

 シンドボルグは振り向くと

「ハヤセ商会の、御曹司か」

 どことなく、皮肉を込めた口ぶりだ。

 シンドボルグはここ数年、ハヤセを警戒している。というのも、最近ハヤセJrはガイア教にかなり取り入っているからだ。

 ハヤセはそのことも承知の上で

「明日は、復活祭ですね」


「ああ」

 そっけない返事に

「シンドボルグ様は、行かれないのですか」

「周辺の警備をまかされている」

「かの流星騎士団が警備ですか。となると、王宮には警備兵しかいない状況ですね」

 意味深に問いかけたハヤセに、シンドボルグは眉間をよせ


「その通りだが、何かあるのか。そう言えば、聖剣プレアデスを運び出したそうだな」

「ほおー、よくご存知で」

「オリフィス山に行った兵隊が言っていた。聖剣プレアデスはレイカ姫の剣だ。それをなぜ」


「法王様の命令ですよ」 


「法王が! ………なぜ」

 驚いたシンドボルグに、ハヤセはとぼけるように

「私は知りません。一商人の私は政治に口はだせません。万一知っていたとしても、守秘義務もありますので」

 シンドボルグは、イラついた表情で


「貴様も、なぜ請け負った」

「私も、法王様の命令には逆らえませんよ」

 冷めた口調で言うハヤセに、シンドボルグは語気を強め

「やはり、商人は信用ならない! きさまの父はレイカ姫に恩義があるのだぞ、それを忘れたのか」

 罵るシンドボルグに、ハヤセは冷めた口調で

「そんなことはありませよ、王宮は大事です。しかし、ガイア教も大切なお得意様です。民衆の大部分が信徒ですから」


 ハヤセの返答に、答える気も失せたシンドボルグはソッポを向いたが、ハヤセは構わず、不敵な笑みを浮かべ


「それより、シンドボルグ騎士団長。今の王宮をどう思われますか。レイカ姫が失踪されてから、やる気のない王と王妃。他に子供がいないこともあり、サグリンの言うがままアッシュルム殿下を養子にされようとしています。アシュルム殿下は、サグリンの操り人形。これでは、王宮も大変でしょう」


「……何が言いたい」

 王宮への批判的な言動にも関わらず、否定しないシンドボルグにハヤセは続ける

「今や、ガイア教の力は絶大です。そういえば、ポーも聖堂の地下に幽閉されました。あなたも、あまり下手な行動はとらないほうがよいかもしれません」 


「ポーが、聖堂に幽閉だと! やはりそうか、ポーが易々と聖剣を渡すはずはないと思っていた」

「おっと、これは口が滑りました」

 と言ったものの、わざとらしい。そして、鋭い目つきで。


「再度聞きますか、王宮をどう思われますか」


 どことなく、試すように、探るように、話をするハヤセ

「何を言わせたい」

「シンドボルグ様のような、聡明な方なら、おわかりになるかと」


「私は、王宮騎士団だ。身命を賭して王宮を守る。それに、レイカ姫は、必ず戻って来られる」

 シンドボルグはハヤセをにらみつけながら言うが、言葉に力は感じられない。

 もう、この愚直な騎士団長から、これ以上の答えは得られないだろう。


「この話はここまでということで。それより、復活祭は楽しみですね」

「楽しみとは」

「言葉通りですよ」

 そう言って、笑みを浮かべるハヤセに、シンドボルグは


「まさか、姫が戻って来られるのか! 」


 ハヤセは、笑みを残したまま、何も言わず立ち去った。


 シンドボルグはすぐにガイア教に掛け合い、ポーのところに来た。

 地下牢に閉じ込められているポーは、うつろな表情でシンドボルグを見つめ


「ボルグか……姫様の聖剣を奪われてしまった。もう、私は姫に合わせる顔がない」

 涙ながらに語るポーに、シンドボルグは静かに


「ハヤセが、強引に奪ったのだ。ポー殿のせいではない」

 ポーは俯いたまま

「カーズと、ハヤセJrは油断なりません。レイカがスワンヒルに行っていたことも知っていた。そして、このタイミングで剣を隠したということは、姫が戻っくるのかもしれません」

 

「私も、そう感じている。だとしたら、レイカ姫が戻ってくることを念頭に、罠をしかけるかもしれない」


「そのとおりです。おそらく、姫はプレアデスの剣のあったオルフェス山に来るでしょう。待ち伏せされる危険があります。オルフェス山に兵を配置てきませんか」

「そうしたいのだが、流星騎士団も復活祭の警備で手が回らない」

 どうしようもなく、悔しそうなシンドボルグに、話しは続かない。


 ポーは話題をかえ

「ラ・ムーアが何か、シンドボルグ団長はご存知ですか」

「ガイア教の、守り神だろ」

 ポーは、首を何度も横に振り


「誰も信じてくれませんが、ラムーアは魔神です。このままでは王都、いやこの世界が破滅します。恐らく、サグリンは王宮を破壊するつもりです」


「魔神だと! ガイア教はうさんくさいが、まさかラムーアが魔神とは……」

「私はレイカ姫と見たのです。魔神が復活すれば、街は大惨事になります」

 シンドボルグは、にわかに信じられなかった。


「なんとも言えないが、証拠でもあるのか」

「証拠とまで言われれば……とにかく、このままでは、王都だけでなく、エクアドルが滅びます」

 ポーは鉄格子を掴んで訴えるが、あまりに突拍子もなく妄想としか思えない。しかし、大賢者のポーが虚言を吐くこともないだろう。


「わかった、できるだけのことはしよう」

 半信半疑なシンドボルグは、曖昧な返事をして地下牢をあとにしたが。

「本当なのか……」

 そう思うと、胸騒ぎがする。


 シンドボルグが大聖堂を出ると、すでに夜の帳がおりていたが、街は前夜祭で賑わっている。


「おそすぎたのか……」


 復活祭は明日だ、今更なにもできない。

 流星騎士団も警備でバラバラになるが、緊急時に王宮に集合するよう、徹底するくらいしかない。


「あとは、ポーの言ったことが、荒唐無稽(こうとうむけい)なことを祈るだけだ」



お読みいただき、ありがとうございます。

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