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現世に転移している異世界の剣姫に、僕は召喚獣として呼びだされた〜  作者: 猫ノあすき
第五章 突破せよ通天回廊
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10 星空の帰還

5章のエンディングです。

 満点の夜空の中、水平線に浮かぶ十四の月の一つに向かって僕は飛んだ。


 振り向くと、一面の雲海の中にポツリと頂部が突き出た通天回廊が遠ざかる。

 苦労して制覇した、通天回廊。

 みんな、感慨深げに見つめていた。 


 頂きにあった白骨化した人の御遺体は、さすがに乗せることはできないので、遺品を幾つか持って帰ることにした。中には、涙なしでは読めない遺書もあった。


 この人達はみな、通天回廊を攻略するレベルだ、リアルに戻れば間違いなくチートレベルで比類なき強者だろう。そんな、勇者が血のにじむ思いで攻略して、あの結果とは………

 あまりに、ひどすぎる。


 一方、僕たちは幸運としか言いようがない。

 レイカは、遠ざかり小さくなる通天回廊を見ながら。

「頂きに居た人も、あの月のどれかに故郷があるのでしょうね」

 悲しそうに言う。


 この世界はいったい何なのだ、通天回廊は誰が何の目的で作ったのだ。

 知るすべのない僕たちは、ただ、やるせない……


 通天回廊は彼方に消え去り、どこまでも続く雲海の上をひたすら飛んでいると、ゴンゾーがおもむろに

「なあ、ドラゴンは火を吐くのだろ。カズヤ、一度はいてみないか」

 そういえば、ドラゴンと言えば火炎だ。

 でも、どうすればいいのか


 首をかしげている僕に、コルベットが

「簡単だ、息を吸い込んで、火炎をイメージして吐けばいいだけだ……たぶん」

 そんなものなのか。

 まあー、ものは試し、僕は思いっきり息を吸い込んで


「ブハーーー !」


 すると眼前が真っ赤に閃光し、周囲が一瞬昼間のように明るくなると、ブレスの炎が口から爆発的に噴出する。

「すごーーい !」

 叫び役のミホロが……さけぶ。

 ゴンゾーもさすがに驚いたようで。

「さすがドラゴン、コルベットのエクスプローションに匹敵する威力だ。しかも、炎の射程は遥か雲海の果てを貫いている」

 みんな、ビビった。

 僕もビビった。


 その後もドラゴンの僕は夜空の雲海の上空を飛んだ。

 僕の背中のたて髪の中で転がっているミホロは

「でも、このたてがみの中、モフモフの毛みたいで気持ちいいね。なんだか、軟らかいお布団の中にいるみたいで……温いし」

 うとうとして、寝落ちしそうだ。

 みんな国際線の夜間飛行のような状況でくつろいでいる。さらに夜も更けて(ずっと夜だけど)、他の皆んなも疲れもあって、半分寝ている。

 すると、レイカが僕の頭の後ろにきて。


「みんな眠そうだけど、モフモフ……ああ、ごめん、カズヤは大丈夫」

 実は全然眠くないし疲れない。

 ありあまる体力、ドラゴンはさすがにスゲー。それに、ほとんど翼を広げて滑空し、たまに翼を仰ぐだけなので、さほど疲れない。


「グホーー(大丈夫)」と答えると

「わるいけど、私も眠らせてもらうね」

 僕は、首を縦に大きくふった。


「ありがとう……カズヤ」

 そう言って、レイカも僕の背中に戻って、シートベルト代わりのたて髪を腰に巻き付けて眠ったようだ。首を曲げて背中を見ると、いつのまにか、簡易トイレと、シャワー室まであり。小さな魔光石を読書灯代わりにコルベットが本を読んでいる。きっと三平太が、用意したに違いない。


 まあ、みんな疲れただろ、ぼくは元気だ。

 ゆっくり、夜間飛行でくつろいでくれ。



 こうして、みんなが眠っている間も僕は飛び続けた。 

 数時間は飛んだだろうか、いつしか目指す月以外は消え去り、目標の月だけの夜空になる。すると、それまで水平線にあった目標の月が次第に天上に動き始めた。

 さらに飛び続けると、月は天上を通過し雲海の果てに沈むころ、夜空が白み始め水平線から太陽が昇ってくる。


 しばらくして、背中のメンバーも、ぼつぼつと目をさましてきた。

 ミホロが起きてくると

「カズヤ、一晩中飛んでくれていたんだ。大丈夫」


 僕は、首を後ろに向け

「グホグホ」と笑顔? でうなずく

「ありがとうカズヤ」そう言って周りを見ると、周囲の様子が違っているの気づいたミホロが。 


「海だ! 」


 そう、僕はしばらく前から海上を飛んでいる。

 雲が晴れ、一面の海原だ。

 レイカも起きてくると、涼やかな海風に黒髪をなびかせて、気持ちよさそうだ。すると、水平線を見つめながら

「方向はわかるの、海しか見えないけど」


 確かに夜が明けて月は消えたのだが、方角はなんとなくわかる。

 僕は、うなずくように首をふると、コルベットが

「渡り鳥みたいな野生の感だろう」

 まあ、そんなところでしょう。


 全員が起きると、ゴンゾーが僕の背中で料理を始め、朝食を作ってみんなで食べている。

 ほんと、海外旅行の国際線の機内だ。


 朝食の最中ミホロが

「姫様。実は聞きたいことがあったのですけど」

「なんですか、ミホロさん」


「エクアドルでは、アッシュルム殿下に恋い焦がれたレイカ姫は、叶わぬ恋に次元断層に見を投げた。といった話で書籍化され、お芝居にもなって大人気になのですけど。やはり、今もレイカ姫はアッシュルム様のことを」

「………! 」

 レイカは一瞬絶句したあと、顔が真っ赤になって、完全に怒りの形相。

 そのあと


「ゲホー! 」

 僕の背中に一撃を入れられ、エアースポットに落ちたように、二十メートルほど落下した。

 僕は関係ないですーー。


「ひ……姫様」

 切り出した、ミホロが真っ青になている。ここまで、怒りのレイカ姫みたことがない、レイカも我に返り

「オホホ……エクアドルに帰れるうれしさのあまり、つい力が入ってしまいましたわ。もし、会えば、()巻きにして、ラピス海に放り込んであげたいと思っておりますの」

 仰々しく言うレイカの口元は笑っているが、目は引きつっている。そんなレイカにだれも、何も言えない。



◇エクアドル大陸


 しばらくすると、水平線に小さな島が見えてきた。

「あの島は、南猫島じゃない!」


 近づくと、丸い島の両脇に2つの三角の大きな岩が突き出ている。まさに、猫の耳頭のような形の島だ。

「南猫島……ってことは。ここは、エクアドルの南のラピス海、この島はストレインワールド最南端の島。戻ってきたんだ! 」

 ミホロが泣きそうな声で叫ぶ。


 ほかにも、島がちらほらと見えてくる。立ち寄りたいが、先を急いだ。

 島の住人が僕たちを見て驚いている。

(そりゃあ、神獣の頂点の伝説のドラゴンだしな。僕だって、驚くわ)

 さらに飛び続けると、水平線に黒い線状の模様が……


「エクアドル大陸だ! 」


 今度は、みんなが叫んだように聞こえた。

 レイカは、先程から無言で瞳を見開き、涙目で震えている。

 二百年ぶりに戻ってきた故郷、万感胸に迫る、どころではないだろう。僕も胸が熱くなる。


 しかし、近づくと、大陸のあちこちに黒煙があがっている。

「なんなの、あの黒い煙……」

 ミホロが震える声で言う。

 異変が起きているのは間違いない。魔族が、町や村を襲撃しているのだろう。


 レイカはこぶしを握り締め、故郷を冒涜する(やから)に怒り心頭のようだ。

エクアドル出身のミュールやゴンゾーもだ。

 僕だって、同じだ。


 相手が、魔神ラ・ムーアであろうとも、絶対に一歩もひかない!

 僕たちはエクアドルを救う。

 そのために戻ってきたのだ。


 さあ、最後の大決戦が待っている!


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