7-6 通天回廊 突破せよ! (END)
中に入ると薄暗い、テニスコートほどの狭い部屋。
その部屋の中にある一段高い四角のフィールドの端に、ずらりと並ぶ等身大の武士達……の人形。
これまでの階層と違い、かび臭く、歩くと埃の舞う、不気味な宝物庫のような部屋だ。
フィールドの正面奥には、大王のような武将、その左右に金の鎧を着た二人の武将、さらにその両隣に銀の鎧を着た武将、さらに横には騎兵、さらに横には、槍を持った歩兵………そして、床を見ると格子の線が描かれている。
よく考えれば、ここはゲームの世界なのだ!
僕は横のレイカに
「レイカ、この状況で突っ込んでいったの」
「だって。いつ攻めてくるかわからないし、先手必勝と思って」
僕は腕を組んで
「どうみたって、これ将棋だよ。多分リアル将棋だ」
「将棋! 」
レイカは、そういえば、といった表情で「だって、私、将棋したことないし」
少し、赤くなって言い訳する。
横からゴンゾーが
「飛車角と歩がないな」
「こちらは八人、人数を合わせてくれているのだろうか。とにかく、配置についてみないか」
「おもしろい」
ゴンゾーがニヤリと笑う。
女性達とルークは全くわからないようだ。
そこで、僕とゴンゾーで相談した配置についてもらった。
玉、ミホロ
金、コルベット
金、三平太
銀、ゴンゾー
銀、ミュール
桂馬、ミノタウロス(僕)
桂馬、レイカ
香車、ルーク
動きが早く左右の移動もある桂馬を切り込みとして、ミノタウロスとなった僕とレイカを配置し、後方をミホロたちにして前面に出ないようにした。
相手も配置につく。
ご丁寧に、香車の一人は消えた。
さあ、戦闘開始だ!
歩や飛車角もない変則将棋なので、先手でレイカが3七桂馬、そのあとミノタウロスの僕が7七桂馬と、とにかく飛び出す。相手は守りを固めている。
そのあと、わけのわからないレイカが、6五桂馬と、盤面中央に突出した、
そのとき相手の桂馬の騎兵も上がっていて、そこにいるレイカに突っ込んで同桂馬!
つまり殺られる。
(あわわ! レイカだめだ! )
レイカはルールを全くわかっていない。
騎馬がレイカに襲いかかる………が
突っ込んできた騎兵をレイカは叩き切ってしまった。
(ええ! そんなのあり! )
レイカは、剣を振り。
「あたり前です、強いほうが勝つのです」
レイカは涼しい表情で「でも、1体だけでは、たいしたことないな。次は私の番だ」
そう言って、いきなりレイカは突っ込む。
結局動いているのは、僕とレイカだけだ。
レイカは、勝手に5三に上がって、そこにいた銀を袈裟がけに切り裂くと、真正面に王の前に守る金の武者が睨んでいる。
そのとき、レイカの体が光り、体に金の鎧が着込まれた。
「カズヤ、どうしたの」
レイカは、自分の体を見て驚いている。
ミノタウロスの僕はしゃべれないので、後ろにいるゴンゾーが
「成金です。相手の陣地に入ったので金になったのです」
「そうか! なんか強くなった気がする」レイカは、剣を素振りして意気揚々で
「よし! 次も私でいくぞ! 」
なんだか、うれし楽しそうだ。
そして、目の前の金を倒して
「王手! 」
王の真正面に対峙した、頭金なので相手の王は逃げられない。レイカは不敵な笑みを浮かべて大将を睨み、今にも切り掛かりそうだ。
そこに、王の横に守っている金が、レイカに挑むが、一刀両断!
これで敵は万事休す「詰!」だ。
なんか、めちゃくちゃだ。
レイカが最後に王将に襲いかかろうとすると。
「まいりました! 」
王将が頭を下げて降参した。レイカは振り上げた剣を収めるしかない。
「どうしたの」
出番のない、退屈そうなゴンゾーが後ろから
「投了です。相手が負けをみとめたのです」
「ええーー、そうなの。もう終わり」
あっけない幕切れ、他のみんなは暇そうに座り込んで、ミホロは半分寝ている。
意気揚々のレイカは不服そうで、もっとやりたい、って感じだ。
ミュールも拍子抜けと言った感じで、ホーリー・スラッシュが見られず、少しがっかりしているようだ。
◇
その後、降参した王将が頭をあげると。
「どうぞ、こちらへ」
そう言って、盤面を下がり、部屋の奥の扉の前に立つ。
僕たちも揃って付いていくと、レイカが少し緊張して。
「このさきがもしかして」
「さよう、勝者の聖座である。コンプリートであーる」
「コンプリート……」
レイカの目に涙が浮かび上がる。
この二百年、この時を目指して耐えてきたのだ。
レイカが振り向くとみんな笑顔だ、コルベットも涙ぐんでいる。
僕はミノタウロスのままなので「ウッホ、ウッホ」と斧をかざして喜んだ。
レイカは僕を人間に戻すのを忘れているのだが、気づいて人間に戻してくれた。
さらに、ここで、みんなのステータスが、かなり上がった。
それは、桁違いの上がり方で、ボーナスゲームだったのかも知れない。
みんな、思い思いにレベルやスキルを上げる、ミュール、ゴンゾー、ルークはレベル90、コルベットは数種類の大魔法を習得し、ミホロは不服ながらも聖母なみの白魔導士となり、三平太は数百体の傀儡を操れる死軍のスキルを会得した。どれも、チートレベルだ。
レイカは相変わらずレベルを上げず、ゴールドに替えている。
ちなみに、ミノタウロスだった僕はレベルマックスなので何も起こらない。召喚獣だからなようで、ちょっと残念だけど、ドラゴンになれたし、まあいいか。
◇
その後、レイカは皆に促されて開いた扉に向かうと、奥に階段があり、僕たちはその階段をあがる。
振り返ると、さきほどの王将が、深く頭をさげ、静かに扉を閉めた。
淡いろうそくの灯に照らされた、螺旋階段を登りつめ、最後の扉を開ける。
いよいよ、感動の通天回廊の制覇。
僕たちは扉の外に出て、通天回廊の頂点に立った…………が!
全員、思わぬ状況に蒼白な表情で
「そんな、うそでしょ」
「マシですか……」
「何かの間違いだろう」
それが、僕達がやっとの思いで、たどり着いた頂点での第一声だった。
お読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m




