7-5 通天回廊 突破せよ!
輝く魔玉石。
レイカが手に持ってかざすと、僕の身体が光りに包まれ、そのまばゆい光りに怪物も怯んでいる。
「なになに! どうしたの」
ミホロが目を見開いてレイカに聞くと
「モフモフは進化して猪八戒、ミノタウロス、さらにもう一段階進化できるみたいなの。やっとここにきて! 」
レイカが興奮しながら言うと、みんな注目している。
僕も、体に力が湧いてくる。
なんだ、これまでにない湧き上がる力
くるぞ! くるぞ! 今度はなんだ……
一瞬、意識が飛び、すぐに気がつくと、見上げていた怪物がほぼ目線と同じ、相手とほぼ同じ大きな体だ。みんなの姿が下にある。
僕自身では見えないが、召喚獣というより、もはや怪獣の部類だろう。
そのとき、ミホロの叫び声が聞こえた
「ドラゴンだ!! 」
興奮し、大声で叫んでいる。
首の長い体に、鋭い牙、二本の角、背中には巨大なコウモリのような翼がある。
マジか! ストレインワールド最強で伝説の神獣だぞ!
すぐに怪物が、あの巨大ハサミをぶつけてきた。
ゴンゾーが肉片も残らないと言った強烈な打撃も、今の僕には脇腹をこづかれた程度だ。
更に、火炎のブレスに見舞われたが、相手も弱っているせいか、一瞬強い風を受けた程度で、全く屁でもない。
これはすごいぞ!
僕の後ろに隠れているみんなは、期待と羨望の眼差しで見上げている。
ただ、戦法がわからない、どうすればいいんだ。
再びハサミをの打撃を喰ったが、今度はハサミの付いた腕を抱えて、とにかく投げ倒してみた。
怪物の巨体が横にひっくり返り、闘技場全体が大地震のように揺れる。自分でも驚く、ものすごい力。
起き上がってきた怪物に、今度はこちらから襲いかかり、あのサラマンダーの首を強引に引きちぎった。苦労して無効化したサラマンダーの首も一撃だ。
その後、取っ組み合いの戦いになり、もはや怪獣大戦争だ、闘技場も狭く感じる。
振り向くと、ミホロが拳を上げて「いけー! いけー! 」と飛び跳ねながら応援してくれている。ピンチの時に、突如現れたウルトラマンみたいな感じだ。
他の皆も、声援を送ってくれている。レイカも両手の拳を握り、満面の笑顔だ。
こうなったら、やるしかない!
すでにフラフラの怪物の本体の首根っこを掴み、宙吊りにする
(よくも、ここまでやってくれたなーーー)といった感じで、完全に形勢逆転だ。
さすがにドラゴンはすげーー。
そして、そのまま壁に投げつけると、もう、相手は瀕死だ。
このまま、タコ殴りにしてボコろうかとも思ったが、やはり最後はレイカだと思い、振り向くと。気づいたレイカが前に出てきた。
僕は一歩引くと、レイカが僕の背中から頭を飛び越え、止めの一撃を与え、相手は霧散する。
一瞬、沈黙のあと………
「ヤッター! 」
「勝ったーーー! 」
みんな、大喜びだ。
「ギャオーー」
僕も叫んだ。
ただ、ミホロは腕を組んで
「なんで、今頃ドラゴンになるのよ。もっと早く進化していれば、楽に倒せたのに。もう、つかえなーーい」
いつものようにプンスカ怒っているが、口元は笑っている。
(そう言われてもなーー)
◇
ふと、奥の壁を見ると、扉が開いている。
いよいよ本当に最後の部屋だ。
さすがに、ドラゴンの大きさでは入れないので、ここでやっと人間に戻してくれた。
「ふーー。やっと人間に戻れた」
ミホロが
「久しぶりだね」
まるで、いなかったように言う。
「もう、ずっといただろ」
「ごめんごめん、でも、大活躍だったよ。すごいじゃない、ドラゴンなんて、伝説の神獣だよ」めずらしくミホロが興奮しながら褒めてくれる。
「しかも、四種類に変幻できるなんて、変身ヒーローみたいじゃない」
確かにそうだけど、できればウルトラマンのほうがよかったなぁ。
チビッコに喜ばれるし、仮面ライダーやウルトラマンに変身するお兄さんてカッコイーし。現実はこんなものなのだぞ、チビッコとお母様。
そこに、レイカも寄ってきて
「ありがとう、なんとかホーリー・スラッシュを温存できたわ」
レイカのお褒めの言葉だが、ミホロがジト目で
「でも、あそこで、カズヤとゴンゾーがよそ見しなかったら、終わってたけどね」
少し皮肉って言うけど、そのことではミュールが
「いえ、あの時避けきれなかった私が悪いのです。レイカ姫の走攻守に渡る体術に比べ、私の動きはまだまだです」
すまなそう言うと、ゴンゾーも頭をかきながら。
「かつて、姫様が私達を相手に特訓されていた意味が、ここにきてわかりました」
多分スカートめくりのことだろう。ただ、わかっていないミュールが
「特訓とは? 」
「そっ……それは……」
さすがにゴンゾーは口ごもったが、レイカは
「複数の敵の攻撃を避ける体術を学ぶ、私の編み出した特訓です」
仰々しく言うが、そこだけを聞いたミュールは瞳を輝かせ。
「ぜひ! 私もその特訓を」
すると、レイカは
「もちろんです! でも、厳しいですよ、場合によってはノーパンでやってもらいますから」
「ノーパン???」
ミュールはわかっていないけど、そういえば、ゴンゾーが言っていた。
『ノーパンの時は、普段おとなしい主人公の、秘められた魔王の力が覚醒して人格が変わり、めちゃくちゃ強くなるパターンと同じように、内に秘められた野生の本能が暴発し、自分でも信じられない力が発揮できる』……そうだ。
むろん、レイカもギアがあがり、まさに真剣勝負、子供相手でも怪我人が続出する、壮絶な死闘となるみたいだ。それでも、子供達は誰一人一歩も引かず、勇敢に戦ったと、ゴンゾーは涙目で語ったことがある。
するとミュールが、みょうに納得して
「わかりました、ノーパンですね。望むところです! 」
力を込めて言うと、レイカは満面の笑顔で
「そうですか、それなら私も一緒にやりましょう」
僕は念の為、ミュールの耳元で
「ミュールさん、分かっているのですか」
あえてレイカに聞こえないように聞くと、ミュールも小声で
「拳を使わない、ノーパンチのことですよね。さすがレイカ姫、相手を気遣ってのおやさしい御心、奥が深い」
おおー! これは分かっていないぞ。
ぼくとゴンゾーはニンマリと笑うが、またもやミホロが怪訝な表情だ。
◇
この一戦で、僕たちは、ほとんどのアイテムを消費し、自身のHPも10%ほどしか回復できていない。
これまでの百八階層全てをあわせたような、チートなラスボスだった。
いや、まだ次があるのだ。
だが、なんとか、ホーリー・スラッシュだけは温存できた。
そして、僕も見たことのないラスボスとは。
レイカに聞くと
「部屋に入ると、ずらりと武士みたいな兵隊が並んでいたの。もう、萎えたよ。それで、私が切り込むと、囲まれて一撃でやられた。でも、一体はさほど強くなかったから、元気だったら負けはしないと思う」
確かに、そのときのレイカも瀕死の状態だったけど、かのレイカが一撃でやられるとは………
息を飲んだ。
ところで、僕はレイカの話に少し違和感を覚えていた。
どう考えても、先程の魔獣がラスボスとしか思えない、。
「その怪物は襲ってきたの」
「いえ、見るからに厳つい兵隊だったし、こっちも瀕死だから。先手必勝と思って」
「兵隊?」
ううむ………やっぱり、なにかおかしい。
とにかく、進むしかない。
さすがに、ドラゴンの大きさでは入れないので、まずは、僕もこのまま入ってみることにした。
お読みいただきありがとうございますm(_ _)m.
次回、通天回廊の最終決戦? です。




