7-3 通天回廊 突破せよ!
最上階の荘厳な門の前。
あの、サラマンダー、バハムートなどの、神獣の混成合体形のチート魔獣がいるのだ。
全員最後の準備を行う。
ポーションなどの回復アイテムは余裕だったが、さすがに八十階層からの強敵に、ほとんど使ってしまった。
最後のアイテムで、HP、MPを全回復し、傷ついた武具を修繕し、ルークは矢を矢筒だけでなく、リュックや腰紐にも挟み、満載にしている。しかし、これでアイテムは、ほぼ無くなった。
準備が整い全員が立ち並ぶと、レイカが
「それでは、行きましょう」
以前は僕に、来るなと言ったけど、今回は力強く僕たちを誘ってくれる。
そして、扉が開く。
あのときと同じように、押し返すような熱風が吹付け、その先の霞む部屋の中で、凶々しい巨大な怪物の影が蠢いている。
本体の巨大恐竜のような体は、太く短い数十本の足の上に乗り、動く巨大なクレーンのようで、体の両脇に幾つもの触手がゆらぎ、数本の巨大なハサミを振り回している。
龍のような大きな顔の口から火炎を噴き出し、体の周りにはサラマンダーの顔を持つ長い首が生えて、うごめき、そいつらからも火炎や雷が絶え間なく地面に落ちて、近づくこともできない。
「なんだ、これは! 」
ゴンゾーが真っ青な表情だ。
「まじですか……」
ミホロも震えて言葉にならず、ミノタウロスになった僕の尻尾を掴んでいる。ミホロは、敵が強敵になってからというもの、部屋に入るときは僕の尻尾をつかんで後ろに隠れているのだ。
そのミホロの服の裾をルークが掴んでいる。
そんな、ミホロとルークは部屋に入った扉の横に待機して遠距離からの攻撃、あるいは回復など援護体制をとる。三平太も傀儡の美少女フィギア剣士を出して配置させる。
最前列に召喚獣の僕、ゴンゾー、ミュールが立ち並ぶ布陣に、今回は、レイカも加わっている。その前衛と後衛の間に、コルベットが魔法杖を掲げて準備した。
皆んな、誰の指図もなく配置に着く。
そういえば、僕は確かリーダーだけど、ずっと召喚獣の状態で一言も話していない、なんかうまく乗せられただけじゃねぇー。
なんて思ったが、今はうだうだ考えている暇はない。
さあ、戦闘開始だ!
まずは、皆んなが配置につく前から詠唱を始めている、コルベットのバスター・ブリザードで開幕だ。
闘技場全体に、爆発的に氷の弾丸が炸裂する。雷、火炎属性の魔獣に効果的な氷魔法だが、凄まじい威力で、敵が火炎系でなければ、一瞬にしてこの部屋全てを冷凍庫にしてしまうだろう。
コルベットが、次の詠唱をしている間に、剣などで攻撃する前衛のアタッカーが総攻撃する。
とりあえず、周囲にある雷撃を放つ触手と、炎を吐く首だけのサラマンダーを、ダメージ覚悟で切り裂きに行った。
レイカとミュールが右、ゴンゾーとミノタウロスの僕、さらに傀儡のフィギュアが、左の首だけサランマンダーに襲いかかる。
コルベットのバスター・ブリザードで、中央の怪物本体が怯んだ間だけ攻撃が可能で、ほぼ一撃離脱だった。
その後すぐに、コルベットが第二波のバスター・ブリザードを放つ。
しかし、離脱の際に、どうしても相手の攻撃を受けてしまう。しかも、部屋に入った瞬間から、その余波を受けて、直接攻撃を受けなくても全員のHPが下がっていく。
早く、掃討しなければならない。
後衛のルークは壁際を走り、射撃地点を探すと、隙ができた数センチのわずかな隙間を射抜いている。しかも、動き、変化する的を一瞬に、狙い、討つ、まさに神業だ。
ダメージは、アタッカーほどでないものの、地味に相手のHPをそいで、敵の回復をかなり遅らせている。弓を持ち、戦闘状態のルークは勇敢に戦い、普段とは違って、むちゃくちゃ頼もしい。
こうして、十回ほどコルベットのバスター・ブリザードと、剣などのアタッカーによる、交互のルーチン攻撃を続け。やっとのことで、周りのサラマンダーを沈めて、怪物を裸にできた。
すでに、半時間ほど戦っている。
◇
いよいよ、本体に取り掛かる。
再び、コルベットが突破口として一点集中の雷撃を放ち、同じようにアタッカーで攻め込む。
単調な攻撃パターンだが、氷系にやや耐性が低い以外、これと言った弱点がないので、正攻法の真っ向勝負しかない。
戦闘は、さらに二時間に及んだ。
その間、絶え間なく攻撃を続けたが、こちらも攻撃を受けてしまう消耗戦の様相を呈している。どちらが先に、力尽きるかだ。
ゴンゾーの斧の歯は欠け、ミュールは肩で息をしている。コルベットもその間、魔法攻撃を絶やさず撃ち込んでいるので、さすがに疲れた様子だ。
すでに、ポーションなどのアイテムは底をつき、ミホロの流連浄火でなんとか持ちこたえている。ミホロがいなければ、今頃半数は死んでいるだろう。
そんな、ミホロもMPはもうわずかしかない。
ただ、気を緩めると、容赦なくブレスや雷撃をくらってしまう。
僕たちはジリ貧になってきた。
そんな中、レイカだけは、まだ多少は余裕があるようで僕たちの攻撃より数倍のダメージを与えている。もはや、レイカ一人で戦っていると言ってもいい。
しかし、以前のようにホーリー・スラッシュの大技を温存して使えないので、手こずっている。
「さすがに、これはきついな」
ゴンゾーが息を切らしてつぶやく。
「こんなの、絶対勝てないよ……」
ミホロは真っ青になって、半分あきらめの表情が出てきた。他の皆んなも似たような表情だ。
これは、早く倒さないと、間違いなく犠牲者が出る………
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