7-2 通天回廊 突破せよ!
「ブヒブヒ! 」
僕は手をばたつかせて喚くと、ゴンゾーが
「なにか言いたいのではないか。レイカ姫、人間にしてやってもらえませんか」
レイカがうなずくと、ひさしぶりに人間に戻った。
「ふうーーー」
僕は、一息つくと
「なあ、ミホロ、流連浄火をまってくれないか」
「ええ……わかった」
さすがに、息も切れているようで、素直に応じてくれた。
その後、ミホロ以外で攻めると、意外とあっけなく倒せた。
「どうして!」
僕は、やっぱりと言った表情で
「流連浄火は死霊を成仏させるのは有効だけど、普通の生き物にはヒールの力がある。しかも強力だ。だから幾ら傷つけてもHPが回復し、防御力や、攻撃力も上がってしまうんだ」
「それじゃあ私相手を助けていたの」
「そうなるなーー」
ミホロはへたりこんで
「つかえなーーい」
がっくりしたように言うが。
「とんでもない、これはすごい武器だよ」
「どうして」
力の抜けた声で言う
「ミホロにヒールされた相手は、僕たちが束になっても勝てないんだよ。それほど、ミホロの回復魔法や、防御・攻撃の増強魔法はすごいってことさ。それを、僕たちに放ってくれれば、強力だよ」
みんなも、「ほほーー」とうなずいた。
「これはレベルの低い、僕やレイカには最適だ。特に、レイカ唯一の弱点、防御力やHPの低さを補えれば。本当に無敵だ」
レイカも頷きながら、微笑んでいる。
その後のダンジョンの攻略はかなり楽になった。
「おい、ミホロ流連浄火」
「はい」
「こっちも! 」
「はーーい」
なんだか、いやそうだけど、僕たちは重宝している。
「ううう、力が湧く、それになんだか気持ちいい」
そうなのだ、ミホロのヒールはHPの回復だけでなく、なんだかすっごく気持ちよくって、快感なのだ。
特に女性に放ったとき、わずかに聞こえる、なんとも言えないあえぎ声は……一瞬、戦闘状態を忘れさせてくれる効果もあるので。どしどし使ってほしい!
「どうして、敵に魔法攻撃をしたいのに、味方にうち込まなきゃならないの! 」
ミホロは、いつものようにほっぺをフグのようにして、ふてくされて流連浄火を放つ。
◇五十三階層
「以前はここでリタイアした……」
コルベットがしみじみと語ると、レイカも。
「私も覚えています。あのときは悔しかったし、コルベットがいなくって、本当に寂しかった。でも、こうして強くなって戻ってきてくれました」
その言葉に、コルベットは感激して、涙目になり
「姫様あぁー 」
あのコルベットが、レイカの前では子供のようだ。
「今回は、必ず通天回廊を攻略してみせます」
コルベットが力強く言うと、
「ええ、一緒に頑張りましょう」
レイカの言葉に発奮して、五十三階層の敵を、得意のエクスプローションの一撃で葬った。
ただ、この五十三階層からは、結構手こずるようになる。
みんなで協力しているけど、こちらも徐々に反撃をくらい、これまでの余裕がなくなってきた。でもまだレイカの力は温存している。
できるだけ、レイカなしで上まで行くのだ。
◇八十階層
ここまで来ると、ラスボスも近く、かなり敵のレベルが上った。
皆も疲弊し、自分よりレベルの高いモンスターを相手にして苦戦しているが、さらに強敵が出現する。
目の前にいるのは、熱水大墓にいたサラマンダーのさらに進化系、キング・サラマンダーで、熱水大墓にいた奴の倍はある。しかも、それが十体、全員でかかっても、勝てるかわからない。
さすがのコルベットも、息を飲んでいる。
それを察したのだろうか、初めてレイカが前に出た。
「みなさん、ここまでありがとう。ここから、私も手伝います」
レイカは皆を制して、一人、前に出てロングソードを抜いた。
いよいよ、久しぶりのレイカの剣技だ。
輝くブレードをかざし、波打つ黒髪、ひらめくスカート、全身からみなぎるオーラに圧倒され、あのキングサラマンダー十体が一歩後退りする。
闘技場を支配下に置いたような圧倒的な気迫で、小さいレイカが、キング・サラマンダーより大きく見える。僕は興奮し、皆も息を呑み括目する。コルベットも魔法杖を持つ手が震えている。
一瞬躊躇したキング・サラマンダーだが、雄叫びをあげて迫ってきた。
レイカはゆっくりと迎え撃つ、その姿は余裕すらある。
十体のサラマンダーが一斉に火を吐く、エクスプローション並の火炎に、周囲が炎に包まれる、と同時にレイカの姿が消えた。
熱風が僕たちにふきつけ後ずさりした。
ミュールは蒼白な表情で
「これは、凄まじい。こんなので、生きてはいられない︙︙」
炎が消え、サラマンダーの姿が露わになったとき、光り輝く剣の残光がその刀身を数倍にして輝き、サラマンダーを次々に切り裂いていく。
むれているサラマンダーの真っ只中に飛び込み、刺突し、首を落とし、一撃で屠っていく。
腕や尻尾の打撃は、アスレチックスをしているように、くぐり、飛び越え、その表情は、笑みを浮かべる余裕さえある。
みな、唖然としている。
「桁違いだ………」
ミュールは剣をだらりと下げたまま、震えがとまらない。
最後の一体に止めをさすと、擦り傷さえなく涼しい顔で、剣を鞘におさめた。
コルベットはまたも涙目で
「姫様! すごいです! さすがです! 」
ミュールやゴンゾーは言葉がなく、羨望の瞳で見つめている。
レイカは涼しげな笑顔で
「みなさんが、ここまで私を温存していたおかげです」
そうなのだ、前回はこのあたりでも苦戦していたが、今回は余裕だ。備品も豊富で、ポーションも有り余っている、というかミホロのヒールのおかげで、ほぼHPの減少はない。
レイカも参戦した僕たちは、かなり、めちゃくちゃ強い。僕も召喚獣となって、今回は頑張っている。
だけど、できればかっこよく人間の姿で戦いたいなぁー、まあ贅沢は言ってられないけど。
こうして、僕達は百八階、通天回廊の最上階の扉の前に来た。
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