6 スワンヒルをあとに、
翌朝、準備を整え聖堂の前に整列した。
魔神ラ・ムーアの復活でエクアドルが危機なので、とにかく急がないといけない。
ここで、皆のステータスを確認しておくと。
・カズヤ:剣士 Lv15 ※召喚獣 Lv60
・ミホロ:魔道士 Lv60
・ゴンゾー:剣士 Lv70
・ミュール:剣士 Lv90
・三平太:技工士 Lv80 ※傀儡 Lv60
・ルーク:アーチャー Lv90
・コルベット:魔道士 Lv100以上
・レイカ:剣士 Lv 15
(敬称略、パーティー加入順)
といった状況だけど、Lvは主に体力、魔力、俊敏性などの基礎指標で、基本的にこれが強さと言っていいけど、まれにレイカのように、Lvを上げなくても強い場合がある。
こうした場合、剣の破壊力が低く防具なしで戦うようなもので、それを補うには相当の熟練度が必要だ。
もって生まれた才能に、二百年技を磨き上げた剣技のたまものだろう。もし、これでレイカがLvを上げたら……ほんと、恐ろしい。
◇
聖堂の前で集まった僕たちの前で、レイカはあらためて。
「それではみなさんのパティーに入れていただきます。よろしくお願いします」
深く頭を下げるレイカは、昨夜のことは何もなかったように普段どおりだ。
いい機会なので僕は
「それじゃあ、これからはレイカがリーダーということで」
これまで、いろいろパーティーに入っては辞めてきたが、リーダーは精悍な奴らばかりだった。ここはどうみてもレイカのリーダ―が妥当だし、僕も気が楽だ。
すると、レイカは腰に手をあて
「何を言ってるの、ここに来た七人は、カズヤの仲間でしょ。そして、カズヤをリーダーでここまで来た。ここで私がリーダーの座を乗っとるわけにいかないでしょ」
「ええ! 僕はリーダーというより添乗員的なもので、皆はレイカを助けるために来たのです。レイカがリーダに決まってるよな」
そう言って、みんなに振り向くと、皆はなぜか、唖然としている。
「ど……どうしたの」
僕が皆を見渡すと、ミホロが
「カズヤ……なんでレイカ姫を呼び捨てに。それに、昨日まであんなにガチガチだったのに」
どうも、リーダー云々より、僕とレイカが、敬称略で親しげに話しているのに、皆は唖然としていたのだ。
僕はレイカを見て、真っ赤になり
「ああ、僕たちは同級生だし、召喚獣でもあるし」
と言ったものの、レイカは歯に噛むように笑っているだけで、知らんフリ。
コルベットとミュールは納得いかないようで憮然とし。ミホロとゴンゾーは、昨夜なにがあったと言いたげだが、さすがにレイカの手前で、突っ込むことができないようだ。
あとの二人(ルークと三平太)は相変わらず呆けているだけ。
でも………何もない。
そんなこと議論している暇もなく、うやむやのうちに、これまで通り僕がリーダーというか、代表者ということになった。
こんな、最強チームのリーダーが僕だなんて場違いだけど、まあ窓口みたいなものだろう。
そこに、妖精が羽の生えた馬をつれてきた。
ミホロが目を丸くして
「ペガサス! 本物だ」
他の連中も感激している。
「剣姫のペガサスをモンスターカプセルに封じてお持ちください」
妖精がペガサスを封じ込め、レイカにカプセルを渡した。
レイカは、口元を震せながら。
「これまでありがとう」
「こちらこそ、姫様のおかげで、スワンヒルの妖精も増えてきて、次第にもとの楽園に戻りつつあります」
妖精は涙目だ。二百年連れ添ってきたのだ。僕も妖精さんには、お世話になった。
「姫様、お元気で」
レイカも涙を浮かべ、言葉が出ないようでうなずくだけだった。
そして、妖精に見送られ、僕らは聖堂をあとにする。
レイカ、そして僕もそうだが、なんども振り返り、慣れ親しんだ聖堂と妖精に別れを告げ、通天回廊に向かった。
ただ、最後に妖精がさりげなく言った「もとの楽園に戻りつつ……」とは、どういうことだろう。スワンヒルになにかあったのだろうか。少し気になるけど、今は、そのことは置いておくしかないようだ。
◇
スワンヒルの緑の森の果てに、半透明の壁のようなものがあり、その向こうは真っ白な雪原だ。
「なに、このすりガラスのような壁は」
僕も初めてみた。すると、レイカが
「たぶん、マップの端境だと思う。ストレイン・ワールドのマップはここまでで、ここより外はマップの外といってもいいのかも」
僕たちは、なんとも言えない。
壁はそのまま抜けられるので、レイカに続いて、その壁を抜けて雪原地帯に入った。
通天回廊はこの氷雪地帯にある。
雪原に魔物は出ないが、吹雪に見舞われながらの厳しい道程だけど、天啓山脈を越えた装備もあるので、なんとか進み、目指す通天回廊が見えてきた。
こうしてたどり着いた雪原に突如出現するそびえ立つ塔、上空は灰色の雲がかかって頂上は見えない。
「これが、通天回廊……」
ミホロが、唸るように言う。
他のみんなも、口をポカンとあけて見上げている。
ミュールは剣を握り締め緊張した表情で、コルベットも魔法杖を持つ手に力が入っている。
「しかし、レイカ姫はここをカズヤと二人で攻め込んだのか」
ゴンゾーが独り言のようにつぶやくと、ミホロが思い出したように。
「そういえば、レイカ姫がいるとカズヤは召喚獣になれるのだよね。今のカズヤだと戦力にならないから召喚獣になってよ! 」
なんか、気にしていることをぐさりと言う、それに興味津々の表情だ。
レイカは笑って
「カズヤ、いい」
「まあ……確かに、召喚獣のほうが強いし」
納得いかないけど、しかたない。
「サーヴァント、召喚! 」
と、レイカが唱えた。そういえば、初めて僕を召喚する方法を目の当たりにした。僕はミノタウロスに変化する。
「オオーー」
みんなの歓声があがる。
するとレイカは
「こっちのほうが、私は好きなんだ。スマール! 」
すると、僕はモフモフに変化する。
「うわー! 可愛い」
「私にもだかせて……ほんと気持ちいい」
完全におもちゃにされている。
ミホロやミュールがうれしそうに、僕を抱きしめていると。
「でも、こいつはカズヤだぜ」
ゴンゾーがポツリと言う(いらんことを言うな︙︙)
すると、召喚獣仲間のコルベットが
「大丈夫だ、今のモフモフはカズヤではないと思っていい。意識はあっても、男性的な性欲はない」
さらにレイカは小声で
「ミノタウロスのとき、雌牛に発情して、交尾しようとするんだよ」
コルベットは大笑いし、ミホロは軽蔑の目だ。ぼくは、紐のような手をばたつかせるだけで、抗議も反論もできない………でも、事実だけど。
「本当は、さらに進化するみたいだけど、今はここまでなの」
レイカが言うが、コルベットは
「いや、これで十分だ。あとは成長した私の魔法を姫に早くご覧頂きたい。さあ姫、行きましょう」
力を込めて言う、レイカの前でいいところ見せたそうで、やる気満々だ。
気を取り直して、というか僕は、人間に近い形態の猪八戒モードにされて後についていく。
(カズヤにもどせよー! だいたい、僕がリーダーではないのか!)と言いたいが、ブヒブヒとしか言えないし。そのことは、すっかり忘れているようだ。
◇
レイカが回廊の扉の横の台座の前に立つ。
さすがに緊張している。
大きく深呼吸して水晶を置くと、通天回廊の扉が開く。
いよいよ、最後のダンジョンの攻略の始まりだ。
皆も、緊張している。
しかし、今度はレイカの他、頼りになる仲間が七人もいる。以前二人で挑んだときとは、桁違いの戦力だ。
さあ、戦闘開始だ!
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