3 みんなの想い
突然目の前が真っ暗になった。
「……ここは」
平衡感覚がそがれるような闇の空間、そこに、突然スポットライトのような光が差し込んだ下に、人影が……
「だれ」
人影はゆっくりと振り向く。
小柄で冒険者風の衣装、腰にはレイピアを下げている。しかも、そのレイピアの柄には碧玉が……
「まさか! 」
そいつは、ニヤリと笑う
「僕……なのか」
しかし、病的な灰色の顔、上目遣いでこっちを睨み、口元は不気味に微笑み、無言でレイピアを抜く
「何をする! 」
幻術にしては、質が悪い。レイカやミュールのフィギュアを作って、楽しもうと思ったバチなのかも。そいつは、いきなり駆け込んでレイピアを突いてくる。僕はとっさに避けたものの、服が切り裂かれた。
「やる気か! 」
しかし、動きはさほど早くなく、僕と同じ位の腕のようで、僕もレイピアを抜いて対峙した。
さすがに自分を突き刺したくないけど、相手は容赦なく撃ち込んでくる。
「なんのつもりだ!」
僕は防戦一方で、相手の剣を受けながら叫ぶと
『どうした、さっきは自分に刃を向けただろ』
先ほど咥えられた時の、僕のことを言っている。
「それは……みんなのため」
『みんなのためだって! ならば、仲間の中に不要な人間、足手まといの者がいると容赦なく切り捨てるのか』
「それは……」
難癖をつけてくる、いったい何なんだ。しかも、相手の口は動いていなく、頭の中に直接声が聞こえる、というか自問自答している感じもする。
『この世界に本当に必要な人間なんていない。しかも、それを自分から認めたのだろ。だったら、さっさと死ねよ』
そいつは、再び剣を刺突しながら、さらに
『そもそも、苦労して天界に行く必要があるのか。ストレイン・ワールドなど、どうなってもいいだろう』
「そうかもしれない……けど」
『だったら、なぜ自分に刃を向ける。それが、カッコいいと思っているのか、ボッチは強いと思っているのか、自己犠牲が唯一の解決と思っているのか! 』
「そりゃあ……女の子にもてたい、本当はボッチはいやだ。ここでも僕は勇者じゃない単なるザコキャラで、皆に迷惑かけて、かっこよく姫様を助けることもできない」
『だったらなぜ、ここまで仲間と戦ってきた。お前は何がしたい』
「………仲間との冒険は楽しい、ミホロやゴンゾー達と冒険を続けたい。レイカやみんなとこの世界で一緒に冒険したい。幻想の世界は、僕を最高の気分にしてくれる」
『だったら、どうすればいい』
それだけ言って、僕の幻影はニタリと笑って背を向け、闇の彼方へ消え去った。
「そうさ、そうだよ……わかったよ」
そのあと、寝落ちするように力が抜け、再び意識を失った。
………目が覚めた。
僕は相変わらずベヒーモスに咥えられたままだが、碧玉の輝きが僕を包んでいる。
そして多分、今まで僕が言ったことのない言葉を叫んだ。
「たすけてーー!」
すると、一瞬みんなが笑ったようにみえた。
次の瞬間、頭上を矢がかすめ魔獣の額を突き刺す、さらにコルベットのフリージング魔法、ゴンゾーとミュール、さらに傀儡の一斉攻撃が炸裂する。
当然ぼくもこれらの攻撃に巻き込まれるのだが、ミホロが僕にヒーリングと防御魔法をかけ続けてくれた。
しかし、ものすごい破壊力だ。
その衝撃に僕は吹き飛ばされ、再び気を失った。
◇
気がつくと、みんなが僕を覗いている。
「カズヤ! 」
ミホロが、涙をながして抱きついてきた。
ゴンゾーが、いつものように無粋な表情で
「もう、馬鹿な真似はするな。突然のことで、下手に攻撃するとカズヤが殺られるので、示し合わせて、すぐに助けられなかっただけだ」
横のミュールも、なぜか涙声で怒ったように
「私を、そして仲間を甘く見るな。仲間を助けられないほど、未熟ではない」
こんな、ミュールを見たことがない、いったいどうしたんだ。
とにかく、皆んなの想いに、うるうるしてしまう。
「ごめん」
素直に謝ると、皆んな微笑んでいる。
すると、ミホロが立ち上がり。
「さあ、いこうよ、七人で」
僕達は、笑顔でうなずいた
◇
闘技場には、先程までなかった装飾のある扉が現れている。
「この先が、いよいよスワン・ヒルだ」
胸が高鳴る、皆んなも緊張した様子だ。
みんなに促され、僕がその扉をゆっくりと押す。
扉を開けると、目の前に広がる緑の水郷、花が咲き、色とりどりの蝶が舞う木漏れ陽の森。
とうとう、来たんだ!
永遠の楽園
―スワン・ヒル! ―
やっと、スワンヒルにたどり着きました。物語は佳境に入っていきます。
お読みいただきありがとうごさいますm(_ _)m




